(昭和50年11月27日付け50検第409号 日本電信電話公社総裁あて)
東京、関東両電気通信局が昭和49年度に請負により実施したマンホール展開図(写真付き)作成作業(契約額総額9399万余円)について検査したところ、次のとおり適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記の展開図は、地下線路施設の新設、増設等の工事の設計や事後の保全のために作成するものであり、日本電信電話公社では、46年11月に「電気通信施設記録標準実施方法」(以下「標準実施方法」という。)を改定して新たな標準的実施方法を示し、同時期以降、既設の地下線路用マンホールについて、従来平面図等とともに1枚の図面に図化されていた展開図をその利活用を図るために単独の図面とした上、これにマンホール内の写真を貼付することとし、更に、その後地下線路施設の新設、増設等の工事が行われた場合には、それぞれの時点で、新たな展開図を作成し、又は既に単独の図面として作成されている展開図を補正することとしている。
この展開図は、従来の展開図又は地下線路施設工事の完成図面等を基にして作成できるもので、図面作成に当たっては特段にマンホール内の調査を要しないものであるが、上記の契約においては、図面に貼付する写真を撮影するためにマンホール内の有害ガスの排出、清掃等の事前作業を行う必要があること、また、マンホール内の有害ガスの状態や止水工の有無を展開図に付記するためにこれらを確認する必要があることを理由に、マンホール内において写真撮影のほかこれらの作業を行うこととしており、これらの作業に要する経費は請負額中約70%を占める6,700万円に上っている。
しかし、マンホール内の有害ガスの状況は時日の経過とともに変化するのであるから、その状況を展開図に付記しておいても将来施行する工事等の際の参考とはならないものであり、止水工の有無はマンホール内に立ち入るまでもなく工事の完成図面で容易には握できるものである。また、展開図に貼付する写真については、マンホール内の状況がは握できればよいのであるから、地下線路施設工事の際写真撮影を行うこととすれば、マンホール内の有害ガスの排出、清掃等の事前作業が既に工事の一部として行われているので、写真撮影のための経費としてことさらにこの経費を必要としなくなり経済的になるものである。
しかして、展開図については、標準実施方法により、展開図作成の際に写真を貼付することが標準として示されていたのであるが、上記のことからみて、工事契約の際写真の撮影をさせることとしておき、展開図にはその写真を貼付することとする処置を講ずれば、改めて写真撮影のためマンホール内に立ち入る必要がなくなり、上記のマンホール内作業経費相当額を節減できたと認められる。
ついては、今後、新様式による展開図の整備は全国の電気通信局において引き続き多数実施することが見込まれているのであるから、作業実施部局に対して経済的な写真撮影の方法について適切な指示、指導を行い、もって経費の節減を図る要があると認められる。
検査の結果、本院の注意により、当局において処置を講じたものが次のとおりある。
東京ほか4電気通信局(注)
が昭和49年度中に契約した昭和49年度田端尾久〜吉原局間ケーブル方式工事(土木)ほか15工事について検査したところ、次のとおり、裏込め注入費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記の各工事は、いずれもシールド工法によりとう道を築造する工事であるが、予定価格の積算に当たって、シールド機械で掘進する際に、地山とセグメント外側との間に生じた空げきにセメントモルタル等を充てんする裏込め注入費(積算額合計7億1886万余円)については、日本電信電話公社が47年当時の作業の実態を調査して定めた積算要領に示されている労務工数(とう道1m当たり2.58人から6.58人)を基にして算定していた。しかし、本院がその施工の実態を調査したところ、裏込め注入の労務工数は、積算の基礎とした工数を相当程度下回っており、施工の実情に適合した積算をしたとすれば積算額を約1億2000万円程度低減できたと認められた。
上記について当局の見解をただしたところ、日本電信電話公社では、50年9月に積算要領を改め、裏込め注入工の労務工数等を施工の実情に適合したものとし、10月以降実施する工事についてこれを適用することとする処置を講じた。
(注) 東京、東海、北陸、近畿、四国各電気通信局