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  • 昭和49年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 政府関係機関その他の団体別の事項

日本住宅公団


第16 日本住宅公団

 昭和49事業年度に実施した事業のうち、住宅等建設事業では、賃貸住宅33,506戸、分譲住宅27,489戸計60,995戸を発注したほか、住宅等建設用地465万余m2 を取得している。住宅等建設費の債務負担済み額は、予算現額7945億6100万余円に対し6601億1941万余円で、前事業年度に比べて2132億6624万余円増加しており、1344億4158万余円を翌事業年度に繰り越している。しかして、事業の実施状況についてみると、49事業年度の当初の住宅建設計画70,000戸を50,000戸に変更し、これに対し同事業年度に発注した戸数は44,788戸で、5,211戸を翌事業年度に繰り下げている。49事業年度の発注戸数60,995戸(48事業年度計画分16,206戸を含む。)のうちには、発注後直ちに着工できないためあらかじめ着工可能日を定めているものが、40,881戸ある。工事の施行状況についてみると、長期間工事を中止したもの、既往事業年度において発注した工事でなお着工に至らなかったり、契約を解除したりしたものが相当件数ある。また、住宅完成後も長期間住宅の用に供することができなかったものが車返ほか11団地で9,578戸ある。これらは、関係地方公共団体等との調整がつかなかったことなどによるものである。住宅等建設用地の保有状況についてみると、49事業年度末において翌事業年度以降に使用する用地として保有しているものが1375万余m2 2860億3437万余円あり、このうちには関係地方公共団体との調整がつかないなどのため長期間使用できないと見込まれるものなどがある。

 住宅等管理事業では、49事業年度末の管理戸数は賃貸住宅495,287戸、分譲住宅245,903戸で、同事業年度の住宅管理及び譲渡収入は1783億4738万余円(家賃収入798億5458万余円、分譲住宅収入682億0846万余円等)となっている。しかして、住宅管理の状況についてみると、同事業年度において賃貸住宅40,699戸、分譲住宅20,165戸計60,864戸の管理を開始する計画に対し、実績は賃貸住宅30,707戸、分譲住宅13,825戸計44,532戸となっている。

 宅地造成事業では、560億1197万余円で造成工事等を施行し、造成用地327万余m2 を369億8519万余円で購入している。宅地造成費の債務負担済み額は予算現額2465億9125万余円に対し896億9824万余円で、前事業年度に比べて256億2608万余円減少しており、1568億9301万余円を翌事業年度に繰り越している。これは用地購入のための支払資金が不足したなどのため、用地購入費等の債務負担予算を執行することができなかったことによるものである。しかして、事業の施行状況についてみると、49事業年度までに購入した用地で事業に着手していないものが2202万余m2 1499億4951万余円あり、このうちには関係地方公共団体との調整がつかないなどのため長期間着手できないと見込まれるものがある。

 検査の結果、本院の注意により、当局において処置を講じたものが次のとおりある。

 (PC工法による住宅建築工事におけるPC版のコンクリート数量の算定について)

 日本住宅公団が昭和48,49両事業年度に施行しているPC工法(注) による住宅建築工事のうち、平塚西部団地(仮称)第3住宅建築工事ほか59工事について検査したところ、次のとおり、PC版製作費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
 すなわち、上記の各工事に使用するPC版の製作費(積算額合計101億4379万余円)の積算に当たって、コンクリート量については、同公団が定めた「建築工事積算要領」により、PC版1枚当たりの全容積から建具の内法(のり)寸法で算定した開口部(窓、出入口等)の容積相当分を控除する計算方法によって、総コンクリート量を203,966m3 と算定していた。しかし、PC版はすべて工場で製作されるもので、その製作の実態を調査したところ、コンクリートは、型わく及び先付け建具類の外わくの寸法に合わせて打設されていて、開口部の外わく部分及びジョイント部のくぼみ部分には打設されておらず、このような製作の実態に適合した算出方法でコンクリート量を算定したとすれば、コンクリート量は198,890m3 で足り、PC版製作費積算額を約9,400万円程度低減できたと認められた。

 上記について当局の見解をただしたところ、日本住宅公団では、取りあえず50年9月にPC版のコンクリート数量を版の形状どおりの寸法で算定するよう通達を発するとともに、積算基準の内容を整備することとする処置を講じた。

(注)  PC工法 鉄筋コンクリート製の壁版、床版等の部材をあらかじめ工場で製作し、現場で建て込む工法。このような部材をPC版という

(注)PC工法鉄筋コンクリート製の壁版、床版等の部材をあらかじめ工場で製作し、現場で建て込む工法。このような部材をPC版という

 (建築工事における溶接費の積算について)

 東京支社が昭和49事業年度に契約した塩浜四丁目団地C3棟建築工事ほか6工事について検査したところ、次のとおり、溶接費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
 すなわち、上記の7工事においては、鉄骨はりを構成する主材の形鋼と斜材の丸鋼との溶接をフレアーK型溶接で施工しているが、この溶接費(積算額合計3386万余円)の積算に当たっては、溶接の長さを日本住宅公団が定めた「建築工事積算要領」では脚長6mmのすみ肉溶接の場合の長さに換算した上で計算することとなっているので、溶接延べ長換算表(脚長6mmすみ肉溶接の断面積を1.0とする。)に示されている丸鋼の径ごとの換算率3.2(径13mm)から7.4(径22mm)を適用して、溶接長さを62,898mと算出し、これに6mmすみ肉溶接の場合の単価を乗じて溶接費を計算していた。しかし、本件工事の設計図について溶接箇所の溶接断面積を調査して脚長6mmのすみ肉溶接の場合の断面積との比率を求めてみると、各径の場合とも上記の換算率を大幅に下回っているので、上記の換算率を適用して換算した上記の溶接長さは本件工事の場合の適正な溶接長さを著しく上回っていることとなり、本件積算は適切とは認められない。いま、前記の各工事について適正な換算率により換算して溶接長さを算出したとすれば積算額を約1700万円程度低減できたと認められた。

 上記について当局の見解をただしたところ、日本住宅公団では、50年10月に通達を発し、フレア−K型溶接の溶接換算規準式を追加するなど施工の実態に適合した換算率を算定することができるよう処置を講じた。

(参考図)

(参考図)