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  • 昭和49年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 政府関係機関その他の団体別の事項|
  • 第17 日本道路公団|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

高速道路等の照明及び通信設備等工事の設計及び積算について処置を要求したもの


高速道路等の照明及び通信設備等工事の設計及び積算について処置を要求したもの

(昭和50年11月28日付け50検第412号 日本道路公団総裁あて)

 日本道路公団が昭和49年度に施行している高速道路等の工事のうち、札樽自動車道若竹トンネル照明設備工事ほか90工事(工事費総額1004億7001万余円)について検査したところ、下記のとおり、道路の照明及び通信設備等工事の設計及び予定価格の積算が適切でないと認められる事例が見受けられた。
 このような事態を生じたのは、同公団が定めている設計要領等が次のように整備されていないことなどによると認められる。

(ア) 電力ケーブル等を収容する保護用管路の設計については、同一管路内に収容するケーブル条数等に関する「道路照明設計指針」等の規定が工事施工の実情及び経済性を考慮した具体的なものとなっていないこと

(イ) 電力ケーブルの導体公称断面積(以下「断面積」という。)の設計については、「道路照明設計指針」で規定している断面積決定の要因である電圧降下の許容値が小に過ぎること

(ウ) 道路の中央分離帯に埋設する通信ケーブル等の保護用管路の布設費については、「通信土木工事積算要領」で規定している管路の布設歩掛かりが工事施工の実態に適合していないこと

 ついては、同公団においては、高速道路等の建設に伴いこの種照明設備等の工事を今後も多数施行するのであるから、施工の実態等を十分調査検討して設計要領等を整備するなどの処置を講じ、もって工事施行の適正を期する要があると認められる。

1 電力ケーブル等の保護用管路の設計について

 札樽自動車道金山パーキングエリア照明設備工事ほか70工事における道路照明用電力ケーブル等の保護用管路の設計についてみると、ケーブル1条を1管路に収容するものとして、ジュート巻鋼管を使用して施工する道路横断箇所には規格65A(内径67mm)又は80A(内径80mm)の管路を選定し、また、塩化ビニル管等を使用して施工する建物周辺等には施工箇所ごとに同一管径の管路を使用することとして規格28VE(内径28mm)から82VE(内径77mm)等を選定し、それぞれ布設している(延べ延長235,150m、積算額525,221,501円)。

 このように特定の管径の管路を選定したことについては、上記の布設箇所が1箇所に規格の異なる多条数のケーブルを布設するので、それぞれのケーブル外径に合わせて管路を選定するとケーブル引き入れ作業時に誤りが起り易いこと、及び上記の規格、寸法の管が最も市場性があることなどによるとしている。

 一方、同公団では、道路照明用電力ケーブルの管路について「道路照明設計指針」及び「トンネル照明設計要領」において管路の内径に関する規定を設け、管路の内径は収容するケーブル外径(複数ケーブルを収容する場合はその外接円の直径)の1.5倍以上とすることを定めている。これを管路の内空断面積に対するケーブル断面積合計の比率(以下「占積率」という。)に換算すると44%程度以下ということになる。 しかして、上記の各工事では、「道路照明設計指針」等の規定に同一管路内に収容するケーブルの条数、占積率及び管路の布設距離等の関連についての具体的な定めがないため、一部の例外を除きすべて通信ケーブル等布設の際に採用しているケーブル1条につき1管路の方法によって施工している。そして、その占積率をみると8%から26%となっていて著しく余裕があるものになっていた。

 しかし、本件管路は前記のように道路を横断するなど1箇所当たりの布設延長が短く、直線的に施工することができ、ケーブルの引き入れ作業等を行うための施工条件も良好であるから、同一管路に収容しても支障がないケーブルについては占積率の許容する範囲内で複数条数のケーブルを1管路に収容すべきであると認められ、また、設計の際特定している前記の規格、寸法のもののほかにも各種寸法の規格品が市販されているのであるから、ケーブルの外径に最も適合した規格品を採用することも考慮して、管路内径とケーブル外径の比率を適切なものとし、経済的施工を図る要があると認められる。

 いま、本件各工事の施行に当たって上記の点を考慮して設計したとすれば、約1億7400万円程度を節減できたと認められる。

2 電力ケーブルの断面積の設計について 

 札樽自動車道若竹トンネル照明設備工事ほか16工事における道路照明設備用電力ケーブルの設計についてみると、ケーブルの断面積5.5mm2 から22mm2 までのCVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)及びVVケーブル(ビニル絶縁ビニルシースケーブル)等の電力ケーブルを使用することとしている(延長354,936m、積算額369,985,189円)。

 しかして、電力ケーブルの断面積の決定については、電圧降下の許容値が主たる要因とされているが、同公団が定めている「道路照明設計指針」においては、ケーブルこう長200メートル以上の場合の電圧降下率(標準電圧に対する降下電圧の比率)を負荷最終端末で5%以下とし、また、「トンネル照明設計要領」においてはこれを6%以下としており、その取扱いが区々になっている。

 そして、上記の各工事においては、すべて電圧降下率を5%以下として電力ケーブルの導体断面積を計算して、使用する電力ケーブルの規格を決定している。

 しかし、電圧降下率については、「電気設備に関する技術基準を定める省令」(昭和40年通商産業省令第61号を補足するため社団法人日本電気協会が定めている「内線規程」で7%以下とする旨を明示しているところから、他機関においては6%以下とするとしているのが通例となっており、同公団においても上記以外の同種照明設備工事の設計をみるとこれを6%として電力ケーブルの断面積を決定している状況であり、更に電圧降下率を6%として電力ケーブルの導体断面積を計算すると5%として計算した場合の16%減と相当に減少するものであるところからみて、本件各工事のようにこれを5%としてケーブル導体断面積を計算しているのは適切とは認められない。

 いま、本件各工事の施行に当たって電圧降下率を6%として計算して設計したとすれば、約3400万円程度を節減できたと認められる。

3 通信ケーブル等の保護用管路の布設費の積算について

 東北高速道路二本松舗装工事ほか40工事における道路の中央分離帯に布設する通信ケーブル等の保護用管路の布設労務費の積算についてみると、ビニル管(管径34mmから76mmのもの)延べ延長439,474m及び鋼管(管径34mmから114mmのもの)延べ延長235,337mの布設については、41年10月に定めた「通信土木工事積算要領」の土工部管路布設の歩掛かりを適用して、計521,068,617円と積算している。

 しかし、上記の布設歩掛かりは、管路の布設延長が短く、曲げ、切断、継ぎ手等の加工を多く必要とする一般の管路布設工事の場合に適合するものであるのに対し、本件管路は道路の直線区間に布設するものであるため、大部分は定尺ものの管(ビニル管4m、鋼管5.5m)をそのまま接続するだけで、曲げ、切断等の加工を必要とせず、一般の管路布設に比べて作業が著しく容易なものであるから、上記の歩掛かりは施工の実態に適合しないものとなっている。現に、他機関における同種の作業を行う場合の管路の布設歩掛かりは、同公団のそれを著しく下回っており、また、作業の実態を調査した結果をみても上記の歩掛かりは過大となっている。

 いま、本件各工事の施行に当たって施工の実態に適合した歩掛かりで積算したとすれば、積算額を約2億3900万円程度低減できたと認められる。