検査の結果、本院の注意により、当局において処置を講じたものが次のとおりある。
地域振興整備公団が昭和49事業年度に施行している宮田(有木地区)団地4、5工区土地造成工事(福岡県宮田町)ほか4工事について検査したところ、次のとおり、準硬岩切り取り費等の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記の各工事のうち宮田(有木地区)団地4.5工区土地造成工事ほか3工事は、予定価格の積算に当たって、準硬岩(1工事当たり7,800m3 から75,000m3 )の切り取り費(積算額総額1億7569万余円)については、同公団の積算基準にこの種大規模な岩石切り取りの場合の歩掛かりが示されていなかったことなどから、地方公共団体が作成している「小型ドリフター(注1) でせん孔しダイナマイトで発破する場合」の歩掛かりを適用して算定していた。しかして、この地方公共団体の歩掛かりは、災害復旧工事等比較的小規模な切り取りを施工する場合のものとして定められたものであるが、切り取り量や切り取り箇所の地形、岩質によっては、「クローラドリル(注2) によるせん孔、廉価な硝安油剤爆薬(注3) とダイナマイトの併用」によるベンチカット工法(注4) 、又は発破によらないでリッパー付きブルドーザ(注5) により切り取る工法によると著しく経済的な場合があり、本件各工事は、いずれもこれらの場合に該当すると認められ、これにより積算したとすれば、積算額を約9600万円程度低減できたと認められた。
また、栗沢(北海道栗沢町)団地造成工事(2期)は、予定価格の積算に当たって、排水管埋設の際土留めのため施工する鋼矢板(延長750m)の打ち込み引き抜き費(積算額1753万余円)については、小規模な工事の場合に使用される二本子(注6) の場合の歩掛かりを適用して算定していた。しかし、本件のように大規模な工事の場合には、能率の高いクローラ式くい打ち機を使用して施工するのが通例でありかつ経済的であると認められ、これにより積算したとすれば、積算額を約600万円程度低減できたと認められた。
上記について当局の見解をただしたところ、地域振興整備公団では、積算関係事務の審査体制の充実を図るとともに、積算基準の改定についての検討を行うこととし、取りあえず、50年10月に各支部等に通達を発して、クローラドリル、リッパー付きブルドーザ、クローラ式くい打ち(注7) 機等の大型機械や硝安油剤爆薬の使用が可能な場合には、これを採用して積算することとする処置を講じた。
(注1) ドリフター せん孔機械の一種。先端部を回転させてせん孔する。長孔、硬質岩のせん孔に適する。
(注2) クローラドリル キャタピラで走行する台車に大型ドリフターを取り付けた自走式せん孔機
(注3) 硝安油剤爆薬 硝酸アンモニウム94%と軽油6%を混合した爆薬(AN−FOともいう。)
(注4) ベンチカット工法 岩盤の斜面を階段状に掘削する工法
(注5) リッパー付きブルドーザ 岩盤を破壊して掘り起こすつめを車体後部に取り付けたブルドーザ
(注6) 二本子 2本の柱を立て、その間に取り付けたおもりを柱に沿つて上げ下げしてくい等を打ち込む装置
(注7) クローラ式くい打ち機 キャタピラで走行するクレーン車に、振動くい打ち機等を取り付けた自走式くい打ち機