横須賀ほか4地方総監部(注1)
が昭和50年度中に契約した自衛艦延べ137隻の年次検査等工事134件について検査したところ、次のとおり、船底塗装及び足場の工事費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記の各工事は、船舶の造修等に関する訓令(昭和32年防衛庁訓令第43号)に基づき、艦船の船体、機関、電気等の検査及び修理を実施するものであるが、予定価格の積算に当たって、水上艦の船底塗装の工事費及び塗装その他の施工に必要な足場の工事費については、海上幕僚監部が48年7月に制定した「船体部標準工数」により、また、潜水艦の船底塗装の工事費については、呉地方総監部が定めた工数によりそれぞれ算定していた(積算額合計1億5204万余円)。
しかして、本院が上記の積算の根拠となった工数について調査したところ、船底塗装についてははけ、ローラー等を使用して行う場合のものと同程度の工数となっており、また、足場については工事の都度、組立て、撤去を行う場合の工数となっていた。しかし、近年、各造船所においては、塗装作業については作業能率の優れているエアレススプレー(注2) を使用し、また、足場についてもそのまま移動ができるローリングタワー(注3) 等を使用するのが施工の実態となっていて、いずれの場合もその所要工数は上記の積算工数を大幅に下回っている。したがって、本件各工事について、施工の実態に適合した工数によつて積算したとすれば、船底塗装等の積算額を約7300万円程度低減できたと認められた。
上記について当局の見解をただしたところ、海上幕僚監部では、51年10月に「船体部標準工数」等を改め、工数を施工の実態に適合したものとし、11月以降実施する工事について、これを適用することとする処置を講じた。
(注1) 横須賀、呉、佐世保、舞鶴、大湊各地方総監部
(注2) エアレススプレー 圧縮空気で加圧した塗料をノズルの先端部から高速噴射させて霧状にし、これを塗装面に吹き付ける塗装機
(注3) ローリングタワー 鉄パイプ等で組み立てられた足場で、その基部に車輪を取り付けて容易に移動できるようにしたもの