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  • 昭和50年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 所管別の事項|
  • 第5 農林省|
  • 不当事項|
  • 補助金

公共事業関係補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの


(20)−(37) 公共事業関係補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林本省 (項)土地改良事業費 (項)農用地開発事業費 (項)農業施設災害復旧事業費 (項)離島振興事業費
(組織)林野庁 (項)林道事業費
(組織)水産庁 (項)漁港施設費 (項)沖縄開発事業費 (項)離島振興事業費
部局等の名称 林野庁、東北ほか4農政局等(注)
補助の根拠 土地改良法(昭和24年法律第195号)、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律(昭和25年法律第169号)等
事業主体 府県4,市町村13,その他1計18事業主体
補助事業 秋田県男鹿市椿(双六)漁港局部改良等18工事
上記に対する国庫補助金交付額の合計 238,427,017円

 上記の18補助事業において、工事の設計又は工事費の積算が過大となっていたり、工事の施工が設計と相違していたり、補助の目的を達していなかったりしていて、国庫補助金34,435,817円が不当と認められる。

 これは、北海道ほか36府県で全国の工事箇所96,512のうち3.8%に当たる3,728(工事費102,682,986,357円、国庫補助金59,813,891,910円)について検査した結果である。

 これを府県別に掲げると、別表のとおりである。

(注)  東北、北陸、近畿、中国四国、九州各農政局及び秋田、長崎、沖縄各県

(説明)

 前記の18事業主体においては、土地改良、林道開設、災害復旧及び漁港修築等の公共事業18工事を施行するに当たって、積算が適切でなかったため工事費が過大となっていたり、監督及び検査が適切でなかったためコンクリートの強度等が設計に比べて不足していたのに設計どおり施工されたとして処理したり、設置した施設の一部が補助の目的を達していなかったりなどしていた。

 いま、上記の18工事について不当の態様別に示すと次のとおりである。

工事の設計又は工事費の積算が過大となっているもの
2工事 不当と認めた国庫補助金 1,934,550円
工事の施工が設計と相違しているもの
15工事 不当と認めた国庫補助金 31,005,267円
補助の目的を達していないもの
1工事 不当と認めた国庫補助金 1,496,000円

(別表)

府県名 工事 事業主体 工事費 左に対する国庫補助金 不当と認めた工事費 不当と認めた国庫補助金 摘要

(20)

秋田県

男鹿市椿(双六)
漁港局部改良

秋田県
千円
13,800
千円
6,900
千円
11,311
千円
5,655

防波堤の堤体コンクリート工事の施工不良
 この工事は、防波堤延長15mを新設したもので、設計によると、堤体工366m3 のプレパックドコンクリートは、細粒や泥などを洗浄して取り除いた粗骨材を使用し、セメント使用量270kg/m3 のモルタルを注入することとして圧縮強度150kg/cm2 を基準としていた。しかるに、施工に当たって粗骨材の洗浄が十分でなかったため、注入モルタルと粗骨材とが十分一体となっておらず、採取した試料10個のうち7個の圧縮強度が62kg/cm2 から100kg/cm2 (平均80kg/cm2 )となっていて、強度が著しく低いものとなっている。
(21)  同 本荘市松ケ崎漁港改修 本荘市 16,920 8,460 5,610 2,805 防砂堤の堤体コンクリート工事の施工不良
 この工事は、防砂堤63mを新設したもので、設計によると、堤休工614m3 の水中コンクリートは、その打設に当たって型もくを緊密性を保つようすえ付け、海水の波動の影響を受けないようにして施工することになっていた。しかるに、型わくの施工が不良であったなどのため、延長47mの堤体コンクリートの下部302m3 はモルタルが流失して粗骨材だけとなったり、モルタルと粗骨材とが分離したりしていて、コンクリートの内部は既に通水している状況である。
秋田県計 30,720 15,360 16,921 8,460
(22) 山形県 新庄市二枚橋水路49年災害復旧 新庄市 4,442 4,317 988 960 底張りコンクリート工事の施工不良
(23) 福島県 南会津郡田島町上原水路49、50年災害復旧 田島町 6,091 5,216 1,069 906 水路の土留め法(のり)面工事の施工不良
(24) 新潟県 佐渡郡真野町水路49年災害復旧 真野町 5,603 5,390 1,862 1,791 水路の土留めふとんかご工事の施工不良
 この工事は、水路延長47mを復旧したもので、このうち土留めふとんかご66枚の詰め石総量95m3 は、堅硬で風化その他の影響を受けにくい良質のものを使用して施工することになっていた。しかるに、実際は、風化が進んでいて容易に破砕される粗悪なものを使用している。
(25) 長野県 飯田市林道千遠線開設 長野県 64,000 41,600 1,255 815 土石切り取り工事の出来高不足
(26)  同 南安曇郡豊科町林道上の山線開設 豊科町 20,762 8,304 2,315 926 コルゲートパイプ暗きょ工事の施工不良
長野県計 84,762 49,904 3,570 1,741
(27) 大阪府 高槻市高槻地区かんがい排水 大阪府 10,054 3,921 1,850 721 コンクリート水路工事の設計過大
(28)  同 豊能郡東能勢村釜ケ谷水路47年災害復旧 東能勢村 3,331 3,231 1,382 1,340 水路の側壁及び底張りのコンクリート工事の施工不良
 この工事は、排水路延長132mを復旧したもので、設計によると、側壁及び底張りのコンクリート70m3 は、セメント使用量240kg/m3 で圧縮強度160kg/cm2 を基準としていた。しかるに、そのうち30m3 は、水を多量に使用した粗悪なコンクリートを打設し、しかも締め固めが十分でなかったため、採取した試料の圧縮強度が45kg/cm2 から102kg/cm2 (平均75kg/cm2 )となっていて、強度が著しく低いものとなっている。
大阪府計 13,385 7,152 3,232 2,062
(29) 兵庫県 多紀郡篠山町風深城西地区ほ場整備 篠山町 72,203 48,135 11,041 7,361 L型鉄筋コンクリートブロック水路工事の施工不良
 この工事は、排水路延長1,971m等を新設したもので、設計によると、うち排水路延長382mは、側壁として設置したL型ブロックの主鉄筋と床版コンクリートの主鉄筋にいずれも径10mmの異形丸鋼を使用し、両者を強固に結束して側壁及び床版が一体として土圧に耐えるよう施工することになっていた。しかるに、実際は、床版コンクリートの主鉄筋として径6mmの普通丸鋼を使用したばかりでなく、L型ブロックの鉄筋との結束も十分でなかったため、L型ブロックは土圧によって床版コンクリートとの打ち継ぎ箇所にき裂を生じたり傾斜したりしている状況である。
(30) 島根県 浜田市山本水路47年災害復旧 浜田市 5,500 5,263 995 952 土留め練り積み石垣工事の施工不良
(31) 岡山県 真庭郡落合町本谷ため池47年災害復旧 落合町 5,438 5,209 908 869 放水路の側壁及び底張りのコンクリート工事の施工不良
(32) 長崎県 南松浦郡有川町七目地区農道整備 有川町 50,573 27,815 2,831 1,557 土留めコンクリートブロック積み工事の施工不良
 この工事は、農道延長1,002mを新設したもので、設計によると、土留めコンクリートブロック積み延長561m1,217m2 のうち延長38m200m2 は法(のり)勾配5分、また、延長29m101m2 は法(のり)勾配4分で施工することになっていた。しかるに、丁張りの確認を十分しないまま施工したため、勾配が設計と相違しそれぞれ4分又は3分となっているばかりでなく、積み方も粗雑であったため、著しく不安定なものとなっていて、一部は既にはらみを生じている状況である。
(33)  同 南松浦郡新魚目町似首漁港改修 新魚目町 16,673 12,137 1,614 1,213 堤体工裏込めぐり石工事費の積算過大
 この工事は、物揚げ場堤体工延長20m、取付け堤体工延長18m等を施工したもので、工事費の積算についてみると、堤体工の裏込めぐり石445m3 については、ぐり石の価格のほか目つぶし材の価格及び敷きならし、つき固め等の費用を見込んで1m3 当たり5,182円としていた。しかし、このように敷きならし、つき固め等を要するのは岸壁背後の水たたきの基礎ぐり石を施工する場合であって、堤体工の裏込めぐり石の工事費としてはぐり石の価格とその投入費用を見込めば足りると認められ、その単価は長崎県が示している資料によっても1m3 当たり2,200円にすぎない。
 いま、この単価によって工事費を修正計算すると15,059,000円となり、本件工事費はこれに比べて約1,614,000円割高となっている。
長崎県計 67,246 39,952 4,445 2,770
(34) 大分県 大分市昭和井路地区かんがい排水 大分県 15,218 7,609 3,492 1,746 ずい道アーチ部の覆工コンクリート工事の施工不良
 この工事は、ずい道延長200mを改修したもので、設計によると、アーチ部の覆工コンクリートは、設計巻き厚を20cmとして施工することになっており、また、余掘りのためその背後に生じた空げきについては、コンクリート又は良質の岩石で充てんすることになっていた。しかるに、このうち延長153mは、アーチ中央部の32箇所について破壊又はせん孔して検測したところ、設計巻き厚より厚さが不足している箇所が24箇所(このうち厚さが10cmにも満たない箇所が9箇所)あるばかりでなく、覆工コンクリートと地山との間に生じている多くの空げきが全く充てんされておらず、施工が著しく粗雑となっている。
(35)  同 速見郡山香町鹿鳴越地区農業公社牧場設置事業家畜保護施設設置 社団法人大分県農地開発公社 77,990 31,196 3,740 1,496 補助の目的を達していないもの
 この工事は、増反により農業者の畜産経営規模を拡大するため、鉄骨造2階建て家畜避難舎1棟延べ1,412m2 の建築等を施工したもので、1階1,217m2 は畜舎等に、2階194m2 は給飼室等に使用することになっていた。しかるに、2階部分のうち事務室及び休憩室56m2 は、補助の対象外である個人用の住居として使用されており、補助の目的を達していない。
大分県計 93,208 38,805 7,232 3,242
(36) 鹿児島県 大口市平原中水路47年災害復旧 大口市 5,280 5,089 1,096 1,057 水路の側壁及び底張りのコンクリート工事の施工不良
 この工事は、災害を受けた水路延長409mを復旧するため側壁及び底張りのコンクリート208m3 等を施工したものである。しかして、うち延長70mのコンクリート36m3 は施工箇所の湧水の処理が十分でないままコンクリートを打設したためモルタルが流出して下部に砂利だけの層を生じ、側壁の打設の際の締め固め及び打ち継ぎ目の処理が粗雑なため内部まで豆板状となっている箇所があるなど施工が著しく粗雑となっている。このため、側壁、底張りの数箇所にわたってき裂を生じ、また、各所で漏水している状況である。
(37) 沖縄県 島尻郡具志川村鳥島漁港海岸保全施設整備 具志川村 8,630 8,630 2,258 2,258 護岸擁壁コンクリート工事の施工不良
 この工事は、護岸延長58mを改良したもので、設計によると、護岸擁壁のコンクリート215m3 は、セメント使用量260kg/m3 で圧縮強度180kg/cm2 を基準としていた。しかるに、このうち84m3 は、水を多量に使用したり、打設に当たって高所からコンクリートを投入し材料が分離した際練り直しをしないでそのまま打設したりしたなどのため、採取した試料の圧縮強度が71kg/cm2 から125kg/cm2 (平均91kg/cm2 )となっていて、強度が著しく低いものとなっている。
合計 402,508 238,427 55,622 34,435