ページトップ
  • 昭和50年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 所管別の事項|
  • 第5 農林省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

漁港公害防止対策として実施する廃油処理施設整備事業の実施について処置を要求したもの


 漁港公害防止対策として実施する廃油処理施設整備事業の実施について処置を要求したもの

(昭和51年11月5日付け51検第435号 水産庁長官あて)

 北海道ほか8県が昭和48年度から50年度までの間に施行した廃油処理施設整備事業は厚岸ほか11漁港の12施設、事業費総額2億3716万余円で、水産庁ではこれに対し国庫補助金総額1億1858万余円を交付している。

 上記の廃油処理施設は、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律(昭和45年法律第136号)の制定により船舶から海洋への油の排出が規制されたことに対応して、漁船等の船内で生じた不要な油や船底にたまった油性混合物(以下これらを「廃油」という。)を従前のような海洋投棄の方法を改めて陸上で処理するためのもので、一部の漁港の分を除き、同法の規制対象外とされている総トン数300t未満の漁船等から発生する油性混合物も処理の対象に含められている。

 しかして、本院において、51年中、八戸漁港ほか5漁港に設置された廃油処理施設(事業費1億2206万余円、国庫補助金6103万余円)について調査したところ、これらは廃油の貯留、油水の分離、焼却の機能を主として持ったものであるが、完成後相当期間経過しているのにか働率が極めて低くなっていて、なかには施設の一部が全く使用されていないまま遊休しているものもある状況で、補助の効果が発現されているとは認められない。
 このような事態を生じたのは次のような理由によると認められる。

(ア) 水産庁において事業を適正に実施するための要領が整備されていないこともあって、補助金の交付に当たって施設の運営、管理体制の整備、施設利用状況のは握など事業実施の適正を期するための諸条件が十分示されておらず、事業主体に対する指導も的確でないことなどのため、事業主体において施設の活用についての配慮が十分でないまま処理施設を設置したこと

(イ) 廃油は、従来安易に海洋投棄されていたものであり、しかも本件廃油処理施設は法律による規制対象外のものをも処理することとしているものが多いのであるから、漁業者の意識の喚起が特に必要であると認められるのに、このことについての対策がほとんど講ぜられていないこと

(ウ) 漁港内に在泊する多数の漁船から廃油を収集するには対象漁船数に応じた容器、機具の配備など収集し易い体制の整備が必要であると認められるのに、この点についての配慮が十分でないこと

 ついては、前記の遊休している各施設が有効に利用されるよう速やかに適切な処置を講ずるとともに、今後も本件廃油処理施設整備事業は引き続き施行されることが見込まれているのであるから、本事業を実施するための要領等を整備するなど適切な処置を講ずる要があると認められる。