九州農政局が昭和50年度に施行した南薩農業水利事業西部送水路青戸(2工区)工事ほか11工事(工事費合計10億3170万円)について検査したところ、次のとおり、管水路工事の設計が適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記の各工事は、かんがい用水路として管水路を布設する工事で、いずれも施工現場の土質、管内にかかる水圧等の設計条件から鋼管水路とすることとし、内面にタールエポキシ塗料を塗装した鋼管(以下「エポキシ鋼管」という。)を使用することとして設計している。そして、鋼管水路の径の決定に当たっては、農林省が定めた「土地改良事業計画設計基準」に記載されている公式(計画流量、動水勾配、流速係数等の要素から管径が算出される。)により計算することになっているが、上記の基準にはエポキシ鋼管の流速係数が示されていないことから、本件については、同基準に示されている塗装をしていない鋼管の流速係数100をそのまま準用して計算していた。この計算に当たって準用した流速係数は、塗装をしていない鋼管が経年によるさびの発生などによって管内の流水に対する抵抗が増大するものであることを勘案して定められたものであるが、エポキシ鋼管は塗膜の表面が平滑で耐久性が優れているタールエポキシ塗料を塗布したものであって、流水に対する抵抗が塗装をしていない鋼管より小さいと認められるのに、塗装をしていない鋼管の流速係数をそのまま準用したのは適切とは認められず、現に、他省における管水路設計基準をみると、前記の公式により計算する際エポキシ鋼管に適用する流速係数を130と定めている。このようなことから、上記の各工事について流速係数を130として管径を設計したとすれば、当局の設計より小口径の管で足りたことになり、工事費を相当程度節減できたと認められた。
上記について当局の見解をただしたところ、農林省では、51年6月に各地方農政局等に対してエポキシ鋼管の流速係数を130に定める旨の通達を発し適正な設計をするよう処置を講じた。
なお、上記の12工事のほか、東北、関東、近畿各農政局が上記の工事と同種のエポキシ鋼管を使用して施行した母畑開拓建設事業北幹線用水路第1工区(その3)工事ほか4工事(工事費合計3億4145万円)について検査した結果も、いずれも上記と同様の事態となっていた。いま、これら17工事について適切と認められる設計をしたとすれば、工事費を約1億1000万円程度節減できたと認められた。