ページトップ
  • 昭和50年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 所管別の事項|
  • 第5 農林省|
  • 特に掲記を要すると認めた事項

国有林野事業特別会計の損益について


(3) 国有林野事業特別会計の損益について

 国有林野事業特別会計は、国有林野事業及び治山の両勘定に区分して経理されているが、国有林野事業の経営成績を示す国有林野事業勘定について昭和50年度の損益をみると、収益は2466億1548万余円、費用は2600億8169万余円で、差引き134億6621万余円の損失を生じている。

 これを前年度に比べると、収益は前年度の2455億8215万余円に対して10億3332万余円の伸びにとどまったのに、費用は前年度の2241億9808万余円に対して358億8360万余円の増加となり、前年度は213億8406万余円の利益であったものが、上記のように損失に転じている。

 しかして、収益及び費用の主なものについてみると、次のとおりとなっている。

 収益では、国有林野事業の主要な収入である林産物の売払い収入は、製品446万余m3 の売上げ1357億8707万余円、立木931万余m3 の売上げ784億8991万余円、官行造林に係る分収収入等45億8506万余円計2188億6205万余円となっており、収益の88.7%を占めている。林産物の売上数量及び販売価格をみると、売上数量は前年度とほぼ同水準で推移したものの景気の動向を反映して木材市況が低迷しており、このため林産物の売払い収入は前年度に比べて47億9143万余円減少した。一方、林野売払収入等の雑収入が168億0266万余円と前年度に比べて42億5130万余円増加し、結局、収益が前年度に比べてわずかな伸びを示している。

 これに対して、費用では、経営費が1463億8370万余円、一般管理費及販売費が646億2668万余円、治山事業費が81億9452万余円で、これら国有林野事業の運営費(以下「事業運営費」という。)計2192億0490万余円のほか減価償却費271億5029万余円がその主なものである。事業運営費は、物価の上昇、給与の改定等により年々増加していて、50年度は前年度に比べて280億3406万余円(14.6%)の増加を示しており、また、減価償却費は林道投資額等の償却資産の増加等に伴い52億3077万余円(23.8%)増加している。

 事業運営費のうちの給与・賃金についてみると、その額は1457億8482万余円で、事業運営費の66.5%(前年度66.6%)を占めており、前年度に比べて183億4986万余円(14.3%)増加している。これに、資産に計上されている分を合わせて給与・賃金の支払総額をみると1997億2801万余円で、これは現金収入2736億9485万余円の72.9%(前々年度56.4%、前年度67.2%)となっており、年々大幅な伸びを示してきている。

 このように国有林野事業の財務状況は、過去における過伐、近時における自然環境保護の要請等に起因して収穫量が減少してきたのに加え、景気が停滞していることなどにより、収入が伸び悩んでいるのに、一方、人件費は年々増加しており、また、造林保育費、林道工事費等が上昇し、これら事業に投資した資金が資産として長期間固定化されることとなるなどのため著しい資金不足の状態となっている。