ページトップ
  • 昭和50年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 所管別の事項|
  • 第8 郵政省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

簡易生命保険契約の適正化等について処置を要求したもの


(2) 簡易生命保険契約の適正化等について処置を要求したもの

(昭和51年11月16日付け51検第437号 郵政大臣あて)

 簡易生命保険法(昭和24年法律第68号)及び簡易生命保険約款(昭和24年郵政省告示第5号)の定めるところによれば、簡易生命保険では、被保険者の身体を診査しないが、保険契約の申込者が被保険者を郵便局の職員(以下「職員」という。)に面接させなければならないことになっており、また、保険契約者及び被保険者(以下「被保険者等」という。)は保険契約申込書裏面の質問表に掲げる被保険者の健康状態について答えることを要すること(以下「告知義務」という。)になっている。そして、被保険者に面接して観査した結果は職員が、また、被保険者の健康状態についての回答は被保険者等が、それぞれ保険契約申込書裏面の面接観査欄及び質問表に記入するのが原則となっており、職員が代書した場合には余白に代書であることを明示するとともに被保険者等にこれを閲覧させ又は読み聞かせた上、承認印を押させる取扱いとしている。

 そして、地方簡易保険局では、この面接観査欄と質問表により医的審査を行い、被保険者として適格と認められる場合は保険契約を締結することになっているが、被保険者等が上記の質問事項について悪意又は重大な過失により事実を告げず、又は真実でないことを告げたとき(以下「告知義務違反」という。)は、国がその事実を知り、又は過失によってこれを知らなかったときを除き、国は保険契約を解除することができることになっている。

 しかして、東京、関東、近畿、北海道各郵政局管内の郵便局で募集し、東京、京都、札幌各地方簡易保険局で締結した簡易生命保険契約について調査したところ、保険契約がその効力発生後2年以上継続しないうちに、死亡又は入院の保険事故が発生し、死亡保険金又は入院保険金の請求があったもののうち、上記の3地方簡易保険局が保険金支払請求の際提出される医師の診断書等により審査した結果被保険者等に告知義務違反があったとして、保険契約解除の通知を発したものが3,438件ある。しかし、このうち599件保険金額8億1315万円については、不適格な者を被保険者として保険契約を締結していたことが判明したのに、職員が保険契約申込書を受理する際に被保険者に対する面接観査を怠ったり、代書した質問表の内容を被保険者等に確認させなかったり、告知があったのにこれを質問表に記入しなかったりしたなど、面接観査や質問表の処理が適切でなかったことが明らかとなったため、告知義務違反を事由として解除権を行使することができなくなり、前記の保険契約の解除を取り消している。そして、被保険者の死亡にかかわる371件についてはその保険金2億8892万円を支払っている。同種の事例は、他の地方簡易保険局が締結した保険契約についても相当数見受けられる状況であり、また、このような不適切な募集行為に対しても貯蓄奨励手当が支払われたままとなっている。

 このような事態を生じたのは、職員が関係法令を遵守する意欲に欠けていることにもよるが、主として質問表の記載内容の正否について被保険者等に確認を求める処置が十分でないことなどによると認められる。

 ついては、今後、不適正な保険契約を防止し、併せて事後に質問表の記載内容の不実が判明した場合に適切な対応措置を執り得るよう、職員が保険契約申込書を受理するに当たり、質問表の記載内容を被保険者等に確認させるための書類を交付するなどして、告知義務の履行について責任の所在を明らかにし、郵便局にもこれを存置して募集事務に対する審査体制を整備するほか、関係職員に対し、適切な研修、指導を行い、また、不適切な募集行為にかかわる支給済みの貯蓄奨励手当についてはこれを返納させることとするなどの処置を講じ、もつて保険契約の適正を期する要があると認められる。