(昭和51年11月9日付け51検第436号 近畿地方建設局長あて)
近畿地方建設局が昭和50年度に施行した43号遮音壁設置工事ほか36工事(工事費総額20億4216万余円)について検査したところ、次のとおり、しゃ音壁の支柱の工場製作費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記の37工事は、いずれも国道の交通騒音対策として橋りょう及び高架橋にしゃ音壁を設置する工事で、橋りょう等の地覆部分にH形鋼の支柱を等間隔で建て込み、支柱の間にしゃ音板をそう入するものであるが、工事費の予定価格の内訳についてみると、支柱は工場で製作するものとし、その製作費については、しゃ音壁の形態が橋りょうの高欄と類似しているとして、同地方建設局が定めた「鋼道路橋積算基準」に記載されている高欄製作工数の「鋼管及びH形鋼を主体としたもの」を基として、製作鋼材重量計1,160t分で計4億2139万余円と算定している。
しかし、高欄は、縦、横の部材(束(つか)柱、笠木、貫(ぬき))を組み合わせて取り付けられるため製作工程が複雑で、しかも、前記工数は「H形鋼を主体としたもの」と表示されているが、その基礎とされた工事の内容をみると、既製のH形鋼を材料として使用することなく鋼板をH形に溶接加工する工程を含んだものが大部分であるのに対し、本件しゃ音壁の支柱は単独で建て込まれる単純な構造で、しかも、既製のH形鋼を材料として使用するものであって、高欄より相当少ない工数で製作できるものであるから、前記の製作工数によって積算していたのは適切とは認められない。
いま、仮に本件各工事の予定価格の積算に当たって、支柱の製作については、その工数をこれと類似している作業である既製の鉄骨を加工する場合の加工業者の実績工数として公表されている資料を基にして算定すると前記の工数の2分の1程度となるので、これにより工場製作費を積算したとすると積算額を約1億4000万円程度低減できたと認められる。
このような事態を生じたのは、本件しゃ音壁の支柱と橋りょうの高欄の製作の実態が相当異なっているのに、その点を十分検討しないまま「鋼道路橋積算基準」記載の高欄製作工数を基にして本件工事の工数を定めたことによると認められる。
しかして、上記のような積算の現状について本院が見解をただしたところ、同地方建設局では取りあえず工数をある程度低減し、併せて製作の実態調査を行うこととし、その旨局企画部技術管理課長名をもって局及び管内工事事務所の関係課長に指示してはいるが、この種工事は今後も引き続き多数施行することが見込まれるので、速やかに調査検討を進めて積算の基準を適切なものに改定し、もって予定価格積算の適正を期する要があると認められる。