新幹線総局及び大阪、門司両電気工事局が、昭和50年度中に社団法人鉄道通信協会(以下「協会」という。)に委託して施行している新幹線沿線地域のテレビジョン受信障害対策工事(383工事、工事費総額29億3218万余円)について検査したところ、次のとおり、労務費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
上記の各工事は、東海道及び山陽新幹線の建設に伴い設置された施設又は列車の走行に起因する沿線地域のテレビジョン受信障害の対策として、共同受信施設の設置等を施工するものであるが、これらの工事の委託について、日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)では、協会と取り交わした基本協定書により、協会が要した工事費を委託費として支払うこととしており、その工事費については、協会が労務歩掛かりを作成して国鉄の承認を受け、これを基として算定することとしている。
しかして、国鉄においては上記歩掛かりの承認に当たって、国鉄本社が制定した「電気関係工事予定価格積算標準」のうち、電気通信設備工事における通信用ケーブル及び機器類等設置の場合の標準歩掛かりを基にして審査した結果これを適切であるとしているが、本院において本件工事の実態を調査したところ、工事に使用している同軸ケーブル及び機器類等は上記の電気通信設備機器類と異なり軽量で簡単な構造のもので、その取付けが容易であるため、労務歩掛かりは国鉄が承認した歩掛かりを相当程度下回ると認められた。したがって、施工の実態に適合した労務歩掛かりを作成させていたとすれば、本件委託費の支払額を約8000万円程度低減できたと認められた。
上記について当局の見解をただしたところ、国鉄では、実態について調査し適正な労務歩掛かりを協会に作成させ、51年10月にこれを承認する処置を講じた。