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  • 昭和51年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 所管別の事項|
  • 第5 農林省|
  • 不当事項|
  • 補助金

公共事業関係補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの


(11)−(26) 公共事業関係補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林本省 (項)土地改良事業費 (項)農用地開発事業費 (項)農林漁業用揮発油税財源身替農道整備事業費 (項)農業施設災害復旧事業費
(組織)林野庁 (項)造林事業費
(組織)水産庁 (項)漁港施設費
部局等の名称 林野庁、東北ほか4農政局等(注)
補助の根拠 土地改良法(昭和24年法律第195号)、農林水産業施設災害復旧事業費
国庫補助の暫定措置に関する法律(昭和25年法律第169号)等
事業主体 県5、市町6、その他5計16事業主体
補助事業 岩手県水沢市大久保ため池51年災害復旧等16事業
上記に対する国庫補助金交付額の合計 471,809,388円

 上記の16補助事業において、補助の対象とは認められないものを含めていたり、工事の設計が過大となっていたり、工事の施工が設計と相違していたり、補助の目的を達していなかったりなどしていて、国庫補助金109,454,623円が不当と認められる。これを県別に掲げると、別表 のとおりである。

 これは、北海道ほか35県で全国の事業箇所131,811のうち3.3%に当たる4,378(事業費138,934,381,288円、国庫補助金77,341,774,136円)について検査した結果である。

 (注)  東北ほか4農政局等 東北、関東、北陸、中国四国、九州各農政局及び高知県

(説明)

 前記の16事業主体においては、土地改良、災害復旧、造林及び漁港修築等の公共事業16事業を施行するに当たって、造林が当該年度に全く行われていなかったり、舗装工事の設計に際し、調査、検討が適切でなかったため、舗装厚を過大に設計していたり、監督及び検査が適切でなかったためコンクリートブロック擁壁が設計どおり施工されず不安定となっているのに、設計どおり施工されたこととしていたり、事業の計画が適切でなかったため事業を中止し又は設置した施設が遊休していて、補助の目的を達していなかったりなどしていた。

 いま、上記の16事業について不当の態様別に示すと次のとおりである。

補助の対象とは認められないもの

1事業 不当と認めた国庫補助金 1,401,216円

工事の設計が過大となっているもの

2事業 不当と認めた国庫補助金 2,095,603円

工事の施工が設計と相違しているもの

8事業 不当と認めた国庫補助金 11,454,045円

補助の目的を達していないもの

4事業 不当と認めた国庫補助金 93,234,999円

補助金が過大に交付されているもの

1事業 不当と認めた国庫補助金 1,268,760円

(別表)

県名 事業 事業主体 事業費 左に対する国庫補助金 不当と認めた事業費 不当と認めた国庫補助金 摘要

(11)

岩手県

水沢市大久保ため池51年災害復旧

水沢市
千円
1,930
千円
1,827
千円
1,930
千円
1,827

工事の施工不良
この工事は、ため池の堤体を復旧したもので、設計によると、堤体下流側崩壊箇所の盛土285m3 は既設盛土と一体となるよう入念に締め固め施工することになっていた。しかし、工期が冬期間であるにもかかわらず、これに対する配慮を欠いたまま施工し、盛土の締め固めも十分でなかったため、工事のしゅん功後施工箇所の大部分は既に崩壊している状況である。
(12) 宮城県 登米郡米山町田畑西地区水路50年災害復旧 米山町 6,524 6,263 2,058 1,975 工事の施工不良
この工事は、水路延長56mの護岸を復旧したもので、設計によると、コンクリートブロック練り積み延長56m184m2 は法(のり)勾配4分に、また、基礎地盤は十分に水替えして入念につき固め、裏込めぐり石は均一に施工することになっていた。しかるに、このうち延長20m77m2 は基礎処理の際水替えが十分でなかったり、不良土の混入した裏込めぐり石を使用しその施工厚が不均一であったりしたため、背後からの土圧により前方に傾斜し勾配が3.2分から3.9分(平均3.5分)となっていて、不安定なものとなっている。
(13) 秋田県 南秋田郡天王町天王地区農林漁業用揮発油税財源身替農道整備 秋田県 40,491 26,994 2,128 1,418 工事の設計過大
この工事は、農道延長2,080mを拡幅改良したもので、設計によると、このうち延長1,848mは、下層路盤の下部の路盤材料として粒径40mm以下の切り込み砕石を使用することとし、この路盤材料の修正CBR(注) を20%から30%として厚さを20cmと決定し、総量3,062m3 を施工することとしていた。しかし、この地方で路盤材料として生産されている粒径40mm以下の切り込み砕石は極めて良質なもので、その修正CBRは最低でも50%程度あるのであるからこの数値を基礎として設計すべきであったと認められる。いま、これによって修正計算すると下層路盤の下部は厚さ16cm、2,450m3 で足り、612m3 が過大となっている。
(注)  修正CBR 路盤材料の強さを表すもので、舗装の厚さの決定等に使われる指標
(14) 山形県 飽海郡遊佐町遊佐長坂地区畜産経営環境整備事業施設用地等造成 遊佐町農業協同組合 95,992 42,712 5,482 2,467 工事の施工不良及び設計過大
この工事は、草地5.3ha及び畜産施設用地4.8haの造成等を施行したもので、設計によると、草地造成は刈り払い、抜根、排根、除れき及び不陸整正を施工することになっていた。しかし、実際は、除れき及び不陸整正を行っていないばかりでなく、畜産施設用地内の石れきを草地内に捨てているため 草地として利用できない状況である。また、畜産施設用地造成のうち畜舎敷地部分28,234m2 は刈り払い、抜根、排根、除れきを行った後、ブルドーザで掘削押土して盛土部分の敷きならし締め固めを行い、更に、整地工としてモータグレーダで平たんにならしたうえタイヤローラで締め固めを施工することになっていた。しかし、畜舎敷地部分のほとんどは切土部分であり、盛土部分についてもブルドーザで敷きならし締め固めを施工することとしているのであるから、不陸整正程度の施工で足り、整地工は施工する要がないと認められ、現にこれを施工していない。
(15) 山形県 東田川郡立川町肝煎地内51年度一般造林 木ノ沢・中村・鉢子部分林組合 4,670 1,401 4,670 1,401 補助の対象外
この事業は、国有林7.47haにスギ22,500本を植栽するもので、事業主体はその事業の実施を立川町森林組合に委託し、同森林組合は事業費4,670,720円で完了したこととして、昭和51年11月に補助金の交付申請を行い、補助金の交付を受けている。しかし、実際は、51年度には全く造林をしておらず、補助の対象とは認められない。
(16)  同 東村山郡山辺町山辺相模地区畜産経営環境整備事業家畜排せつ物浄化処理施設設置 山辺町農業協同組合 37,283 12,427 37,283 12,427 補助目的の不達成
この事業は、畜産経営に係る環境汚染を防止するため養豚4,800頭規模の家畜排せつ物浄化処理施設を設置したもので、契約によると、家畜ふん尿汚水をBOD(生物化学的酸素要求量)50ppm、SS(浮遊物質量)50ppmを超えないように浄化することになっていた。しかし、上記施設からの排水は本院及び事業主体で水質を測定したところ、BOD及びSSは契約に定められている濃度を著しく超えているばかりでなく、山形県公害防止条例で定めている排水基準BOD100ppm、SS90ppm をも超える高濃度のものとなっており、これを公共用水域に排水していて、環境汚染の防止施設とて設置した目的を達していない。
山形県 137,945 56,540 47,436 16,295
(17) 福島県 郡山市ほか35市町村地内51年度復旧造林 福島県 55,820 16,746 4,229 1,268 補助金の過大交付
この事業は、福島県林業公社及び高玉某ほか245名が復旧造林事業として165.3haにスギ等を植栽したものに対し補助金を交付したもので、県では、事業費の算定に当たって1ha当たりの標準的な造林費(標準単価)に事業量などを乗じその額を55,820,700円としていた。しかして、事業費の算定に当たっては、造林補助事業実施要領によれば造林地の遠近、事業の難易などの実情に合わせて標準単価に増減の調整を加えることとなっているのに、県では、誤ってこれを行わなかったため、事業費4,338,900円が過大、109,700円が過少となり差引き4,229,200円が過大となっていた。
(18) 栃木県 那須郡黒羽町八溝黒羽地区団体営草地開発 財団法人栃木県農業公社 103,732 46,477

103,732

46,477 補助目的の不達成
この事業は、5戸の入植者による乳牛等300頭規模の畜産経営を行う農業公社牧場を建設することを目的として、昭和48年度から50年度までの間に草地造成面積40ha、道路延長2,554m等を総事業費499,516,000円(うち国庫補助金209,326,000円)で施行することとしたもので、このうち、計画の一部である幹線道路延長1,298m草地造成面積4ha等を事業費103,732,000円(うち国庫補助金46,477,000円)で施行したが、土じょうが砂土で耐水性が極めて悪く草地に適さないことなどにより事業を廃止せざるを得ない事態となっている。
 しかして、この農業公社牧場の建設に当たって、この地区は急しゅんな起伏の多い複雑な地形で、草地の造成は丘陵部を切土し、この土砂で谷間を埋め立てて施工するため、ほとんどの表層土が切り取られ下層土が耕土になるものであるから、下層の土じょうが草地に適するかどうかの調査をする必要があったものであり、また、この地区に隣接する山砂採取場の露出土じょうが砂土であることから草地として適合性があるかどうかについて十分調査すべきであったのに、土じょう等の調査は造成面積40haについてわずか3箇所深さ90cm 程度の試坑を行っただけで事業計画を立て、これに基づき実施したため著しい見込み違いを生じ、多額の事業費を投下した後工事途中で事業を廃止せざるを得ない事態を生じたもので、事業の投資効果が発現されず、補助の目的を達していない。
(19) 埼玉県 久喜市除堀地区かんがい排水 久喜市 9,618 4,328 2,364 1,063 工事の施工不良
この工事は、排水路延長115mの土水路をコンクリート製のさく板で組み立てた柵(さつ)きょにより改修したもので、設計によると、床掘りは仮り締め切りを行い十分に水替えして不良土を取り除いた後さく板を組み立て、その背後の盛土には山砂1,295m3 を使用し人力により十分につき固め施工することになっていた。 しかるに、このうち延長54mの床掘りは水替えが十分でなかったり、盛土515m3 は不良土を混入したままつき固めも十分に行わなかったりしたため、さく板及びその支柱は背後かの土圧等により施工位置からずれたり傾斜したりしていて、不安定なものとなっている。
(20) 千葉県 市原市大桶地区団体営畜産経営環境整備事業家畜排せつ物処理施設設置 市原市養老農業協同組合 52,504 15,751 52,504 15,751 補助目的の不達成
この事業は、既設の斜面乾燥施設で自然に乾燥した養豚のふん尿を更に火力で乾燥して肥料とするため、火力乾燥施設2台を設置したものである。しかし、生産された肥料の販路など地域の実態をは握しないまま設置したため全く利用されていない状況で、補助の目的を達していない。
(21) 石川県 鳳至郡門前町清水頭首工49年災害復旧 門前町 3,300 2,979 733 662 工事の施工不良
この工事は、頭首工1箇所を復旧したもので、このうち、法(のり)面被覆の鉄線じゃかご64本の詰め石総量36m3 は、堅硬でき裂のない良質なものを使用し施工することになっていた。しかるに、実際は、層状に多くの節理があって板状にはく離し、容易に破砕される粗悪なものを使用している。
(22) 山梨県 東山梨郡三富村三富地区道路等補修事業道路補修 山梨県 19,890 13,260 1,045 697 工事の施工不良
この工事は、道路延長613m 2, 567m2 をコンクリート舗装したもので、設計によると、路盤は切り込み砕石を敷きならして十分に転圧し、コンクリートは十分養生するなどして施工することになっていた。しかるに、このうち446m2 は、路盤の転圧やコンクリートの養生が十分でなかったなどのためコンクリート舗装に多数のき裂を生じている状況である。
(23) 山梨県 南巨摩郡南部町本郷地区農林漁業用揮発油税財源身替農道整備 南部町 14,100 9,400 1,520 1,013 工事の施工不良等
この工事は、農道延長212mを拡幅改良したもので、設計によると、このうち道路附帯暗きょ排水路工直径1.2mの円形コルゲートパイプ延長42mの布設に当たっては、裏込めとして洗砂を使用し、パイプを中心に幅1.8m、高さ1.8mの範囲に施工することとし、裏込め及び盛土の転圧に当たっては、パイプに偏圧を与えないよう左右均等に締め固めることになっていた、しかるに、裏込め及び盛土の施工に当たって締め固めが不均等、不十分であったばかりでなく、通常このような場合の裏込めはパイプの左右にそれぞれ直径に相当する範囲まで施工することとされているのに、本件工事の場合著しく狭い範囲に施工することとして設計していたこともあって、パイプは全延長にわたり変形し沈下していて、一部は漏水している状況である。
山梨県 33,990 22,660 2,565 1,710
(24) 島根県 大田市二子水路50年災害復旧 大田市 11,005 10,850 1,772 1,747 工事の施工不良
この工事は、水路延長194 mを三面張りコンクリートで復旧したもので、設計によると、側壁は天端(ば)厚20cm、下部厚48cm、高さ1.4m、内面の法(のり)勾配を2分とし、コンクリートの打ち継ぎは、上、下層のコンクリートが一体となるよう入念に施工することになっていた。しかるに、右岸56m、左岸66mは、丁張りの確認を十分しないまま施工したため設計と相違し、その勾配が1.3分から1.9分と急になっていて下部厚が7cm程度不足していたり、コンクリートの打ち継ぎに当たって締め固めが十分でなかったため、上、下層のコンクリートが一体となっていなかったりしているなど、施工が著しく粗雑となっている。
(25) 高知県 幡多郡佐賀町佐賀漁港改修 高知県 7,411 3,705 1,353 676 工事の設計過大
この工事は、道路延長276mを舗装したもので、設計によると、1日一方向当たり交通量を250台から1,000台未満として、舗装厚を路盤30cm、アスファルト表層及び基層10cm計40cmとしていた。しかし、当漁港区域の 現在の交通量は1日一方向当たり10台未満であって、仮に漁港整備完了後の交通量を推計しても50台程度であって、いま、これにより修正計算すると舗装厚は路盤30cm、アスファルト表層5cm計35cmで足り、アスファルト基層分5cmが過大となっている。
(26) 熊本県 熊本市高砂地区水田転換特別対策 熊本県 394,900 256,685 28,583 18,579 補助目的の不達成
この事業は、稲作から野菜等の畑作物へ作付け転換を図る目的で水田69.2haのうち52haを畑に転換するため、畑かん施設、用排水路等の工事を施工したものである。しかし、転換した畑のうち4.11haについては水稲が作付けされ、0.14haについては養まん池に転用されている状況で、補助の目的を達していない。
合計 859,171 471,809 251,389 109,454