(昭和52年12月5日付け52検第449号 関東農政局長あて)
関東農政局が昭和21年度に一般会計で着工した国営印旛沼干拓事業は、32年度以降特定土地改良工事特別会計に切り替えて施行し、44年3月に総事業費108億7821万余円で工事を完了したが、いまだに事業完了の処理をしていないため、本事業に係る負担金を徴収するに至っていない。
すなわち、本事業は、44年3月に工事が完了し、干拓造成地の大部分である848haについて44年7月から50年5月までの間に土地配分を行っていて、その配分を受けた者は土地改良法(昭和24年法律第195号)第94条の8の規定に基づき一時使用の許可を受け45年以降毎年無償で耕作し相当の収穫を得ている状況であるのに、同農政局では、造成地のうちに37年ごろから無断で占有され係争中のため土地配分ができないもの8.8haがあること、また、計画変更によって不要となった工事用地の未処分地約17haがあることなどから、工事の完了後、土地配分などすべての処理を了しなければ事業完了とすることができないとして、公有水面埋立法(大正10年法律第57号)第42条第2項の規定によるしゅん功通知の手続を執って事業を完了させるに至らないまま現在まで推移していて、土地改良法に基づき事業の完了後徴収すべき負担金の徴収が開始されていない。
しかして、上記の負担金は、本事業の場合には、総事業費に所定の負担率を乗じて計算した額を10a当たりに換算した額が農林大臣の定めた負担金の上限額10a当たり25万円を超えるので、この上限額に配分面積を乗じた総額21億4207万余円を3年すえ置き22年の年賦で徴収することとなるものである。
しかし、同農政局が事業完了の手続を執っていないのは、前記の未配分地及び未処分地があることを理由としているが、未配分地を分離して処理するとしても格別の問題はなく、また、工事用地の未処分地の面積は17ha程度であり、その処分収入があったとしても上記10a当たり換算額が上限額を相当程度上回っているので、負担金の額に影響を及ぼすものではないと認められる。
なお、本事業は32年度以降資金運用部資金からの借入金をその財源の一部としているもので、工事が完了した43年度の翌年度から51年度までの借入金の利息は約7億円に累積していて、これは国が全額を負担することとなり、このまま事業完了が遅延すれば更に利息が増加する結果となる。
ついては、上記事業は、工事が完了し、大部分が45年以降耕作が行われていることなどを勘案して、未配分地を分離するなどして速やかに事業完了の手続を執り、負担金の徴収を行い、借入金の償還を開始する要があると認められる。