(昭和52年11月22日付け52検第435号 農林大臣あて)
農林省で、農政局等(注1) を通じ都道府県が行う市町村等への補助の財源として栃木県ほか14府県(注2) に交付している被害農家営農資金利子補給補助金ほか79費目の国庫補助金は、昭和50年度で718億8648万余円に上っている。これら国庫補助金のうち、71費目485億0767万余円について、府県がこれを財源として行う市町村等への補助金(以下「間接補助金」という。)の交付状況を調査したところ、次のとおり、府県における国庫補助金の受入れ又は間接補助金の市町村等への交付が適期に行われず国庫補助金が府県に滞留している結果となっている事態が見受けられた。
同省が市町村等に対する補助について都道府県を補助事業者とする間接補助の方法を採っているのは、都道府県は、市町村等が行う事業の内容、進ちょく状況等を容易には握できる立場にあるので、適期、適切な事業遂行の指導と補助金交付をすることができることから、所期の効果を確保することが期待できることが大きな理由となっていると認められ、また、国庫補助金を概算払することとしているのは、適期に適切な額を交付することによって事業の円滑かつ効率的な実施に寄与しようとの意図に基づくものと認められる。
しかして、上記間接補助金については、同省は府県を通じ当該間接補助事業の採択に当たり、年度当初等に事前に市町村等ごとに事業内容について事業実施計画等を審査し、その後府県は、市町村等からの交付申請を受け、審査のうえ国に対し国庫補助金の交付申請をし、国の交付決定を受けて市町村等に対し交付決定を行っているもので、その後は、当該事業の進ちょく状況に応じて国に対し補助金請求を行い、国から補助金を受け入れた後は、市町村等から提出された概算払請求書、出来高調書等の審査を行って間接補助金の交付を行っている。
したがって、補助事業者としての府県は、国に補助金を請求するに当たっては、事業の進ちょく状況を十分は握検討することが必要であると認められ、また、国から補助金を受け入れた後行う事務は、請求書等の審査だけであるから、その期間は通例30日程度で足りると認められる。
しかるに、前記府県において、事業実績の見込を十分には握しないで過大な概算払額を請求して受け入れていたり、また、国から概算払により補助金を受け入れながら、これを財源とする間接補助金を事業完了後又は年度末などに一括交付していたり、市町村等からの請求に対する審査等の事務が遅延していたりしているものがあり、これらの理由から国庫補助金がその受け入れ後前記の30日を大きく上回る60日以上にわたって滞留する結果となっていて、国の補助金支出の効果を減殺していると認められるものが、前記の被害農家営農資金利子補給補助金ほか58費目139億5032万余円に上っている状況である。これらの費目のうち滞留が特に多額かつ長期間のものをあげると次のとおりである。
費目名 | 滞留した額 | 最高滞留日数 | 該当府県数 |
(同上のうち100 日以上のもの) |
|||
第2次農業構造改善事業費補助金 |
円 1,303,872,000 (543,590,000) |
日 177 |
10 |
団体営圃場整備事業費補助 | 1,435,684,600 (841,424,000) |
291 | 10 |
一般土地改良事業費補助 | 559,127,000 (362,132,500) |
223 | 13 |
一般農道整備事業費補助 | 1,544,271,000 (1,139,351,250) |
291 | 13 |
農道舗装事業費補助 | 499,453,450 (314,757,200) |
290 | 15 |
なお、上記の事態と同様な傾向は、51年度においても引き続き顕著に認められている。
このような事態を生じたのは、府県において間接補助金交付事務の重要性についての認識が十分でないことにもよるが、一方、同省において、事業の着手時期、進ちょく状況等のは握が十分でないうえ、適期に適切な額の間接補助金が交付されることを確保する措置が十分でなかったことにもよると認められる。
ついては、同省において、補助金交付額及び交付時期の適正化を図るための具体的な指針を明確にし、間接補助金に係る補助金の概算払に当たって、間接補助事業の進ちょく状況等のは握に努め、また、都道府県に対する国庫補助金の交付決定の際に、市町村等への早期交付を条件とするとともに、都道府県の補助金交付に関する手続を定めたもののうちには、補助金の適期交付の支障となるようなものもあるので、その改善方を指導するなどの処置を講じ、もって都道府県における国庫補助金滞留の解消に努め、国庫補助事業の円滑かつ適正な遂行を図る要があると認められる。
(注1) | 農政局等 農林本省、林野庁、関東、北陸、近畿、中国四国、九州各農政局、沖縄総合事務局、石川、静岡、京都、香川、愛媛、高知、熊本、鹿児島、沖縄各府県 上記の部局が、(注2) に掲げる各府県に対して国の支出官の立場で国庫補助金を交付している。国の支出官所在部局として府県があるのは、府県の出納長に、水産庁に係る国庫補助金の一部について、その交付事務を取り扱わせているからである。 |
(注2) | 栃木県ほか14府県 栃木、群馬、石川、山梨、静岡、京都、奈良、鳥取、香川、愛媛、高知、熊本、大分、鹿児島、沖縄各府県 上記府県は国から国庫補助金の交付を受け、補助事業者として更に間接補助事業者である市町村等へ間接補助金を交付する。(注1) に掲げる府県が(注2) にあるのは、国の支出官である府県の出納長から補助事業者である府県に国庫補助金が交付されることを意味する。 |