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  • 昭和51年度|
  • 第2章 国の会計|
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  • 第5 農林省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

農地保有合理化促進特別事業費補助金の経理について処置を要求したもの


(4) 農地保有合理化促進特別事業費補助金の経理について処置を要求したもの

(昭和52年11月28日付け52検第439号 農林大臣あて)

 農林省では、農地保有合理化促進特別事業(以下「特別事業」という。)として行われる農用地等の買入れ又は借入れに要する資金(以下「特別事業資金」という。)を農地法施行令(昭和27年政令第445号)第1条の2第2号の規定による法人(以下「県公社」という。)に無利子で貸し付ける事業を行っている社団法人全国農地保有合理化協会(以下「協会」という。)に対して、昭和51年度に国庫補助金として29億9821万余円を交付している。

 しかして、上記の国庫補助金は、特別事業資金の貸付けに必要な財源20億円、協会が農林中央金庫(以下「農林中金」という。)から同資金の財源として借り入れている借入金(49年度以降50年度までの累積額78億円及び51年度借入予定額82億8380万円)利息の支払金に充てるものとして9億9821万余円を交付しているものである。このうち、利息の支払金に係る国庫補助金の経理について検査したところ、協会における特別事業資金の農林中金からの借入れが適期に行われなかったため、特別事業資金が協会に滞留していて、この間における支払利息分についても国庫補助金を交付する結果となっている事態が見受けられた。

 上記特別事業資金の貸付けは、同省で制定した「農地保有合理化促進特別事業資金の貸付けについて(47農地B第1146号、47年7月19日、構造改善局長通達)」によると、年度当初各県公社に通知した四半期ごとに区分した年間貸付計画により、四半期ごとに貸付けを決定し、各県公社から借用証書を提出させて、この時点から貸付金として取り扱うことになっている。

 そして、協会では、四半期ごとの貸付額のうち、借入金を財源とした金額については貸付決定を行うまでに一括して農林中金から借り入れているので、この時点から利息支払の債務が発生することとなる。一方、各県公社に対する貸付金の払出しは、協会の農地保有合理化促進特別事業資金貸付業務規程(47年8月17日制定)及び同細則によると、各県公社が農用地等の買入れ又は借入れ契約を締結して関係書類を添付し、払出請求書を協会から支払事務の委託を受けた農林中金に提出した時点で行われ、それまでの間貸付金は貸付未払金として協会が全額留保(農林中金に預金していて、これに対応する51年度分の受取利息相当額が4917万余円となっている。)することになっているため、51年度途中において9億円から39億円程度の貸付金の払出し未済があり、これに対応する協会の借入金利息(年利率9%)相当額は1億6094万余円に上っており、これについても国庫補助金を交付する結果となっている。

 しかして、協会と農林中金との借入契約によると、年度当初に借入総額を決定し、その借入金は、協会から請求の都度分割して受け取ることになっているから、協会は貸付資金を必要の都度借り入れることができるものであり、協会は上記借入金による貸付金を各県公社に払い出すまでの間、事前に借り入れて留保しておく格別の理由は認められず、各県公社が上記特別事業資金の払出請求書を農林中金に提出した時点で借り入れることとすべきであったと認められ、これによったとすれば、国庫補助金1億6094万余円は交付する要はなかったと認められる。

 このような事態を生じたのは、特別事業に係る各県公社の契約締結等が当初計画より遅れがちとなり、これに伴い特別事業資金の払出請求も遅れることになるのに、四半期ごとの貸付額を一括して貸付決定するまでに借り入れていることによると認められる。

 しかして、上記のような経理の現状について本院が注意したところ、同省では、取りあえず52年6月以降協会に対し、借入資金の調達は毎月における各県公社の資金需要量をは握し、これに基づいて行うよう指導し、資金の滞留を減少させることとはしているが特別事業資金の貸付け及びこのための協会の農林中金からの借入れは今後も引き続き行われるものであるから、各県公社が上記払出請求書を農林中金に提出し特別事業資金の払出しを受けた時点で農林中金から借り入れることとするよう現行通達を改正整備するとともに、協会の貸付業務規程等を改めさせるなどして、なお一層の国庫補助金の節減を図る要があると認められる。