(昭和52年11月30日付け52検第444号 農林大臣あて)
農業改良資金は、農業改良資金助成法(昭和31年法律第102号)に基づき、都道府県(以下「府県等」という。)が国庫補助金と自己の一般会計からの繰入金により特別会計を設け、この特別会計資金を財源として農業経営又は農家生活の改善及び農業後継者の育成を図るため農業者又はその組織する団体に技術導入資金、農家生活改善資金又は農業後継者育成資金として無利子で貸し付けるものであり、国は、これに対して昭和31年度以降51年度までに農業改良資金助成補助金として433億7733万余円(うち51年度分28億0113万余円)を交付し、府県等においては、この補助金と自己の一般会計からの繰入金等227借4035万余円を合わせ51年度末までに661億1769万余円の資金を造成し、累計1967億0347万余円の貸付けを行っている。
このうち、貸付累計額の過半を占める技術導入資金は、農業経営の改善を促進するために普及を図る必要があると認められる能率的な農業技術の導入に必要な資金に充てられるもので、累計1097億5262万余円(うち51年度分118億6977万余円)の貸付けが行われている。
この技術導入資金の貸付けについては、従来から本院においてその適否及び借受け者の貸付金の使用状況を調査してきたところであり、その結果、貸付けが不当と認められ、ひいて国庫補助金相当額が補助の目的に添わない結果になっていると認められた事例については、昭和40年度から50年度までの決算検査報告に掲記し、その是正につき注意を喚起してきたところであるが、本年中に724件の貸付けについて調査した結果をみても、貸付けが不当と認められるものがなお70件9392万余円に上っている状況であって、いまだに改善の跡がうかがえないのは、はなはだ遺憾である。
しかして、40年度以降本院が指摘した不当貸付け事例を態様別に示すと、次のとおりである。
(1) 本資金は、新たに技術を導入する場合に貸し付けるものであるのに、既に農業近代化資金により同種の技術が導入されているものに貸し付けているなど、貸付けの対象にならないものに貸し付けているもの
(2) 借受け者が、自己の都合により事業の実施を取りやめているのにそのまま貸し付けているもの
(3) 借受け者が、貸付対象事業費より低額で事業を実施しているのに、自己負担金の全部又は一部を免れるため虚偽の書類を作成しているものなどに当初申請どおりに貸し付けているもの
ついては、府県等に対し、(1)借受け申請者に対して説明会を開くなど、本資金の趣旨、内容についての理解を徹底させ、(2)貸付けの際の審査においては、他の制度資金との重複貸付けを防止するため、制度資金貸付台帳を設けるなどして、審査体制の充実を図り、(3)実際に要した事業費を適時、適確には握するため、事業完了後、事業費の確認を速やかに行うとともに、その責任体制を明確にするなどの措置を講じさせ、貸付けの適正を期する要があると認められる。
また、現在は、借受け者が弁済期限に償還金を支払わなかった場合又は一時償還すべき金額を府県等が指定する期日までに支払わなかった場合だけ違約金を徴収することとなっているが、本資金の融資が無利子となっていることにかんがみ、借受け者が故意に事実と異なる報告をした場合にも違約金を徴収することができるよう措置を講ずる要があると認められる。