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  • 昭和51年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 所管別の事項|
  • 第5 農林省|
  • 特に掲記を要すると認めた事項

国営干拓事業の施行について


国営干拓事業の施行について

 農林省で施行している国営干拓事業は、農業生産の基盤の整備及び開発等を目的とし、土地改良法(昭和24年法律第195号)に基づき施行するもので、昭和32年度以降は事業の早期完了及び資金調達の円滑化を図ることを目的として設置された特定土地改良工事特別会計によって経理が行われており、事業に要する資金には一般会計からの繰入金及び資金運用部資金からの借入金等が充てられている。

 すなわち、本事業は、築堤によって広大な面積の水面を干陸して農地を造成するという事業の規模及び性質上多額の事業費と相当年月の工期とを要するものであるが、山口県下で22年度から39年度までの間に施行した阿知須地区(造成面積238ha、事業費支出額10億4361万余円)及び32年度から43年度までの間に施行した王喜地区(埴生工区)(造成面積53ha、事業費支出額5億6030万余円)は、既に工事が完了しているのに造成地が配分されないで全く利用されないまま長期間にわたり遊休の状態となっており、また、茨城県下で42年度から施行している高浜入地区(造成予定面積1,272ha、51年度までの事業費支出額23億6997万余円)及び熊本県下で44年度から施行している羊角湾地区(造成予定面積149ha、51年度までの事業費支出額12億4065万余円)は、事業の中途で長期間にわたり工事を休止し、再開の目途も立たない状態となったまま地元との交渉などに必要な施行体制を維持する経費を要している。

 このような状態となっているのは、次のようなことが原因と認められる。阿知須、王喜両地区については、工事完了後生じた社会情勢の変化もあって、新規開田抑制政策により稲作を畑作に転換することや、他の目的に利用することについての対策を立ててこれに対応しようとしたが、地元関係者との意見の調整ができなかったなどのためであり、また、高浜入、羊角湾両地区については、工事途中に発生した水質汚濁の問題等について地元関係者との意見の調整ができないためである。

 このような事態は、社会情勢の変化や地元との関係などから、関係当事者の努力にもかかわらず問題の解決をみるに至らず今日に及んでいるのであるが、このような状態のまま推移すると、投下した多額の事業費(4地区分の合計52億1453万余円)が全く効用を発揮することなく休眠の状態を続けることとなるばかりでなく、事業に充てるために借り入れた資金の利息支払額が経年により累増することとなる。