(昭和52年11月28日付け52検第438号 関東地方建設局長あて)
関東地方建設局が昭和50、51両年度中に施行している練馬共同溝(その8)工事ほか4工事(工事費総額39億9770万円)こついて検査したところ、次のとおり、掘削費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記の5工事は、いずれも一般国道254号の路面下に、水管、電線及びガス管の公益物件を収容する共同溝(こう)を設置するものであるが、この工事においては、掘削に当たって土留め仮設工はH形鋼を親ぐいとし、これに横矢板をそう入する親ぐい横矢板工法によることとし、まず、土留めぐいとしてH形鋼を打ち込んだ後に路面のすき取りを行い、深さ1.2m又は2.5mまではバックホウで掘削し、それ以下の基礎まで(6.7mから17.3m)はすべて人力により掘削(交差点及び横断歩道橋部を除く。)することとしている。そして、この人力による掘削費の積算については同地方建設局制定の「積算基準及び標準歩掛」により、掘削総土量87,196m3 分計2億3352万余円と算定している。
しかして、上記土量の掘削を人力によることとしたのは、作業現場が狭あいであり、また、工事施工の安全性を考慮して、掘削の進行に伴い切りばりを直ちに取り付けることとしているので、これが機械か働の支障となるためであるとしている。
しかし、本件各工事の作業現場はほとんどの掘削断面が幅10m以上、深さ7m以上と大きく、土留めぐいと中間ぐいの間隔が5m程度、切りばりの垂直間隔が3m程度あるので、まず中央部分を機械か働の支障とならない程度に掘り下げ、掘削後切りばりを設置し、順次この方法により施工することとすれば、機械施工が可能であり、しかも、本件各工事箇所の掘削土量は1万m3 以上と大量であるから、経済的な機械施工によるべきであったと認められる。いま、上記の方法によれば、掘削土量のうち75%程度は機械施工によることができたと認められ、くい及び切りばりの間隔が本件工事と類似していて同様の作業条件にあると認められる他地方建設局の工事例をみても、上記同様の施工方法により掘削することとしている状況である。
いま、仮に本件各工事の予定価格の積算に当たって、土質、作業条件、安全性を考慮して同地方建設局が採用可能とする掘削方法(小型掘削機械が導入できる範囲及びくい周辺部等を人力で掘削するほかは機械により掘削する方法)によったとしても、前記掘削土量の約2分の1程度は機械施工することができ、積算額を約7200万円程度低減できたと認められる。
このような事態を生じたのは、機械施工に対する配慮に欠け、工事施工の実態、現場作業条件等の調査検討が十分でなかったことによると認められる。
ついては、共同溝(こう)工事は、今後も引き続き多数施行するのであるから、掘削費の積算に当たり施工の実態等を調査検討のうえ、工事施工の安全を考慮した適切な機械施工法の基準を設定するなどして工事費の積算に反映させ、もって予定価格積算の適正を期する要があると認められる。