建設省所管国有財産のうち、道路法(昭和27年法律第180号)、河川法(昭和39年法律第167号)等の適用されないいわゆる法定外公共物は、古来より農耕用の道路、水路等として一般に広く利用されていたもので、明治7年の太政官布告第120号「改正地所名称区別」により官有地と定められたものである。そしてこの法定外公共物は地番もなく、土地登記簿にも登載されていないので、その所在は登記所に備えられている地図を調査しなければ判明しないものである。
しかして、その管理については、建設省所管国有財産取扱規則の規定により都道府県知事が処理することとされているが、管理費用について格別の措置も講ぜられていないこともあって責任の所在が明確でなく、市町村がその行政区域内のものを事実上管理している。そして、これら法定外公共物は、小規模なものであること、全国に散在していること、永い歴史的経緯があることなどからその所在確認及び境界確定等が著しく困難であって、その現状の正確なは握と処理には多大の人手とぼう大な経費を必要とすると認められる。
このような現状から、実際に管理に当たっている地方公共団体においても管理を徹底しようという意欲が乏しく、そのため形状が変更されたり、無断で使用されたりしているなどの事態があってもそのまま見過されることとなるおそれがあり、また、公共の用に供していない現状をは握したものについても、用途廃止のうえ普通財産として大蔵省に引き継ぐ事務処理が円滑を欠いているなど管理体制が整備されているとは認められない状況である。
しかして、本件法定外公共物は、前記のように小規模のしかも多くは里道、水路という不整形の土地であるので、一般には、財産価値の比較的高くないものが大部分であり、また、住民の通行等公共の用に供されている限りは受益者によって維持されている場合が多いのであるが、本院において都市化の進展が著しい東京都ほか1府3県(注) 下の3区59市11町を選んでその一部(1,313件、約665千m2 )について現況を調査したところ、里道で292件約139千m2 、水路で448件約237千m2 その他8件約8千m2 計748件約385千m2 が無断で原状を変更されて使用されていた。
このような状況からみて、全国的に同種の事態が多数存在していることが推定されるが、更に、近年では都市化の進展に伴う住宅、工場の進出やゴルフ場等の造成によって、これら法定外公共物の原状が変更されることが見込まれ、相当の財産価値のあるものが特定の者に無断で使用されることになると認められる。
(注) 東京都ほか1府3県 東京、大阪、千葉、神奈川、愛知各都府県