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  • 昭和51年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
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補償金の支払が適正でなかったと認められるもの


(65) 補償金の支払が適正でなかったと認められるもの

科目 (工事勘定) (項)山陽幹線増設費
部局等の名称 下関工事局
補償件名 山陽新幹線工事の施行に伴う井戸渇水対策
補償の概要 トンネル工事の施行に伴い沿線住民の使用していた井戸が渇水したため、設置した上水道設備の工事代金相当額を補償するもの
補償金額 431,024,142円(昭和47年度〜51年度)
補償件数 1,087件
被補償代理者 株式会社小倉水道工業

 この補償金の支払に当たり、被補償代理者から提出された請求書等が事実と相違する内容となっているのに損害補償額の査定及び現場の確認が十分でなかったなどのため、20,173,380円の補償金の支払が適正でなかったと認められる。

(説明)

 この補償は、下関工事局制定の工事事務取扱基準規程に基づき山陽新幹線北九州地区のトンネル工事の施行に伴う沿線地区の井戸渇水に対する損害の補償として支払ったものである。そして、その実施に当たっては、同工事局において、被補償者から申出のあったものについて、北九州市水道局が指定した工事店である株式会社小倉水道工業に給水装置の設置の依頼をし、同会社から工事終了後、被補償者各人ごとに工事に要した材料費、労務費、諸経費とこれに同市水道局に立替払いした水道局予納金(注) (以下「予納金」という。)、口径別納付金を加算した請求書及び図面を提出させ、損害補償額の査定を行った後被補償者から補償金の請求及び受領の権限の委任を受けた同会社に補償金を支払っているが、その支払内容について検査したところ、本院及び当局の調査結果で判明したものだけについてみても、次のとおり、適正でないと認められるものが652件20,173,380円あった。

(1) 架空の給水装置工事に対し、補償金を支払っているもの

 昭和50年6月、北九州市内に所在する秋本某所有の貸家1棟(10戸分)に対する給水装置工事の代金相当額2,624,900円を同会社に支払っているが、該当する場所に本件貸家は存在しておらず、架空の給水装置工事に対し、補償金を支払っている。これは、担当課職員某と同会社の役員某が共謀して、他の一連の被害補償に便乗して架空の関係書類を作成したうえ請求したものに対して支払ったものと認められる。

(2) 予納金が水増し又は付け増しされているもの

 本件補償金1,087件のうち、同会社が同市水道局に立替払いした予納金に対する支払額は、前項の架空分10件及び予納金の必要がなかった分24件を除くと1,053件で計42,830,068円となっているが、このうち関係書類がないなどのため確認できない384件を除いた669件28,398,575円について関係書類と照合したところ、642件については次のような事態となっていた。

ア 594件の予納金26,405,525円については、同会社が実際に同市水道局に納入した金額は計10,499,265円と認められ、その差額15,906,260円は、同会社が同市水道局に立替払いした予納金に水増しして請求したものに対して支払ったものと認められる。

イ 48件の予納金1,642,220円は49年度及び50年度に北九州市内で施工された給水装置工事に関連して支払ったものであるが、関係書類について調査したところ、給水装置の設置の申込みがなされていないもので、したがって予納金も払い込まれていないものである。これは当該地域が受水槽を設置する必要がある箇所であり、このような場合は同市水道局の取扱いによれば水道局の配水管分岐点から受水槽前のメーターまでの給水装置が予納金の対象とされていて、本件の場合も受水槽から各戸までの設備については、予納金を必要としないのに前記会社が付け増しして請求したものに対して支払ったものと認められる。

 上記のとおり、本件補償の支払に当たり、架空の関係書類を作成して請求されていたり予納金を水増しして請求されていたり、納入する必要のない予納金を付け増しして請求されていたりしているのに損害補償額の査定及び現場の確認が十分でなかったなどのため、補償金の支払が適正を欠く結果を生じたものと認められる。

水道局予納金  給水装置工事の申込みに伴い水道局からの納入通知書によって払い込まれる路面復旧費、設計審査手数料、工事監督費及び間接経費等