(昭和52年12月2日付け52検第445号 住宅金融公庫総裁あて)
住宅金融公庫の貸付けのうち、賃貸住宅等の用として相当規模以上の耐火建築物を建設する個人又は法人に対して貸し付けられる賃貸住宅貸付及び中高層耐火建築物貸付の昭和50、51両年度の貸付実績は合計1,811件2046億3028万余円となっており、その51年度における1契約当たりの平均貸付金額はそれぞれ1億8881万余円及び6996万余円で、個人住宅貸付の394万余円に比べて高額な貸付けとなっている。
本件賃貸住宅貸付等の貸付金額は、借受け者から所定の様式に従って提出された工事費の内訳金額を基礎として、貸付けの種別に応じた工事費の費目区分ごとにそれぞれ貸付限度額を算定し、その合計額をもって決定することとしている。
しかして、52年中、上記貸付けのうち222件貸付金額322億9680万円(51年度から52年度にかかるもの3件4億3070万円を含む。)について貸付けの適否を調査したところ、借受け者から提出された工事費の費目区分ごとの内訳金額が事実と相違していたり、工事請負業者の値引きなどにより実際に要した工事費が、借受け者から提出された工事費よりも少額となっていたなどのため、貸付金額が住宅金融公庫法(昭和25年法律第156号)第20条に定める貸付金額の限度を超えていて適切とは認められないものが25件1億7363万円あった。
このような事態を生じたのは、主として、同公庫の貸付けの審査において、借受け者が提出する工事費の内訳金額について、その裏付けとなる工事請負業者作成の工事費内訳明細書との照合を行うことにしていないなどのため、提出された資料の正確性が確保されていないこと、貸付基本約定書上において工事費及び工事費目区分ごとの内訳金額を変更した場合における変更後の同資料の提出義務を明確にしていないなどのため、これらが提出されていないこと、並びに工事費の支払額について、これを確認することにしていないため実際の工事費がは握されていないことによるものと認められる。
ついては、貸付金額が高額であり、今後貸付けの増加が予想されるこれらの貸付けについて、貸付けに関する規程を整備して、借受け者が提出する工事費に関する資料の正確性を確保し、工事費等に変更がある場合における変更後の資料の提出義務を貸付基本約定書上において明確にし、また、工事費の支払額を確認できるようにするなどの処置を講じ、もって貸付けの審査及び支払額の確認を的確に行い、貸付けの適正を期する要があると認められる。