日本住宅公団が昭和51年度に委託した未入居住宅の保守管理業務(保守管理委託費総額5億5406万余円)について検査したところ、次のとおり、保守管理委託業務の内容及び委託費の算定が適切でないと認められる点が見受けられた。
(1) 住宅建設部門(注1) における保守管理委託業務のうち、換気、巡回作業(この作業に対応する契約額3億3366万余円)については、46年1月に公団本社が制定した保守管理委託要領により3日に1回の割合で建物の窓を開放して室内の換気を行うとともに1日3回の巡回、街路灯等の点滅等を行うこととしていた。しかし、その業務の実態を調査したところ、換気作業は降雨日等もあって1箇月7回から8回程度で支障なく実施しているのであるから4日に1回の割合で行えば足り、巡回は換気作業のための作業員が昼間住宅地内で作業しているのであるから朝及び夕の1日2回で足り、街路灯等は自動点滅式になっているから点滅作業は要しないと認められた。また、畳、ふすま工事を未施工のまま保守管理している住宅についても換気作業は雨天の日を除き3日に1回実施することとしていたが、換気作業は主に畳、ふすまの乾湿度の調整のために行うものであるから、これらが未施工のものについては施工済みの住宅と全く同様に行う要はなく、一部の実例からみても10日に1回の割合で行えば足りるものと認められた。したがって、保守管理委託業務の内容をこのような施行の実態に適合したものにしたとすれば保守管理委託費を約9750万円程度節減できたと認められた。
(2) 住宅管理部門(注2) における保守管理委託業務(契約額1億4033万余円)については、50年10月の保守管理委託に関する通達により、換気作業は住宅建設部門と同様3日に1回住宅の窓を開放して室内の換気を行い、このほか毎月1回及び保守管理業務終了直前に、住宅内の清掃を行うこととして、これに要する経費については本社の指示により、1戸当たり1箇月1,310円(51年8月までは同1,200円)と算定していた。しかして、この単価は公共工事設計労務単価表に定める東京都と大阪府の軽作業員の平均労務単価4,130円(51年8月までは3,730円)を基として算定していたが、これら保守管理委託の対象となった住宅は東京都及び大阪府以外の地域に多数あり、それら地域の労務費は、大部分が上記の単価より低額となっている状況であるから、労務費については各都道府県別の単価により算定すべきであると認められた。したがって、換気作業については、前項と同様4日に1回の割合で行うこととし、労務費については各都道府県別の単価によったとすれば保守管理委託費を約3890万円程度節減できたと認められた。
上記について当局の見解をただしたところ、日本住宅公団では、52年11月に保守管理委託要領等を適正なものに改める処置を講じた。
(注1) | 住宅建設部門 住宅等の建設を行う部門であるが、新築住宅について、しゅん功後住宅管理部門に引き継ぐまでの保守管理もしている。 |
(注2) | 住宅管理部門 住宅等の賃貸その他の管理及び譲渡を行う部門であり、住宅建設部門から引継ぎを受けた後入居するまでの住宅の管理もしている。 |