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  • 昭和51年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 政府関係機関その他の団体別の事項|
  • 第7 日本道路公団|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

土木工事積算システムによる高速道路等建設工事の予定価格の積算について処置を要求したもの


 土木工事積算システムによる高速道路等建設工事の予定価格の積算について処置を要求したもの

(昭和52年11月30日付け52検第442号 日本道路公団総裁あて)

 日本道路公団では、高速道路等の建設事業の増大に伴い、業務の合理化の一環として、工事費積算に従来の手計算による方法に代え、電子計算機を活用した土木工事積算システム(以下「システム」という。)を用いることとし、昭和46年度にその開発に着手し、49年度後半から大部分の工事の工事費の積算をこのシステムによって行っており、このシステムのソフトウェアの開発等に要した経費は51年度までに総額9382万余円、また、このシステムによって積算業務を行うのに要した外注費用は、50年度で5777万余円、51年度で9018万余円に上っている。

 上記のシステムは、工事費算定に使用する材料単価、労務単価、機械損料及び貨物自動車運賃が収録されている単価ファイル、この単価を必要の都度引き出して道路掘削等の工種別単価を計算する469工種のプログラム及びこれらを使用して工事の設計内容に合わせて工事費総額を算出し積算書にまとめるプログラムから構成されている。そして、これらのプログラムは、工事費の構成から各種計算式及び歩掛かり等の数値に至るまで従来の手計算による積算に使用していた同公団制定の土木工事積算要領(以下「積算要領」という。)を基にして作成されている。

 しかして、51年度に施行している工事のうち、道央自動車道泉沢工事ほか99工事(工事費総額1770億4930万余円)について、これらの工事に含まれる工種のうちから88工種を選定し、予定価格積算の内容を検討したところ、プログラムが適切を欠いていたため、工事費の積算が過大になっていると認められる事例が見受けられた。これらについて、態様別に工事数及び過大と認められる積算額を示すと次のとおりである。

(1) プログラムの作成に当たり検討が十分でなかったもの

ア 用排水管の塗装費等を二重に計算しているもの
18件 90,284,441円
イ 労務単価及び貨物自動車運賃を誤って計算しているもの
3件 22,075,262円
ウ 現場打ち鉄筋コンクリートぐい工に使用する掘削機械の損料を大型の機械の損料と取り違えているもの
8件 20,524,391円
エ 土砂をパワーショベルで掘削して積み込む場合の積込み待ち時間を他の機械のものと取り違えているもの
2件 14,735,870円

(2) 積算要領の改定に当たり、プログラム関係担当者との連絡が十分でなかったもの

ア 現場打ち鉄筋コンクリートぐい工の鉄筋加工組立てに使用する発動発電機のガソリン使用量が過大になっているもの
70件 65,702,897円
イ U型排水溝(こう)の布設歩掛かりが積算要領と異なる過大な歩掛かりとなっているもの
50件 13,372,049円

151件 226,694,910円
(注) 工事数欄の数字は、1工事が2以上の態様に該当している場合は、それぞれの態様ごとに1工事として掲記してある。

 しかして、前記の事態について本院が注意したところ、同公団では、52年9月までに前記の適正を欠くプログラムについて修正の処置を執っている。

 このような事態が生じたのは、本件プログラムについて、体系的な審査体制が整備されていないことなどによるものと認められる。

 ついては、同公団においては今後とも予定価格の積算を前記のシステムによって実施することとしているのであるから、プログラム作成時以来現在までに審査が行われていないものがなお相当数ある現況を認識し、重要度の高いものから早急にその審査を開始するとともに、プログラム改定等があっても直ちに対応できるよう体系的な審査体制を確立することによって、前記と同様の事態の発生を未然に防止できるよう適切な処置を講じ、もって予定価格積算の適正を期する要があると認められる。