部局等の名称 | 阪神高速道路公団 |
買収物件等 | 西宮市甲子園七番町所在の新甲子園マンションの土地3,026m2 、鉄筋コンクリート造り建物3棟102戸の買収及び移転補償等 |
買収等の価額 | 1,982,906,897円 |
契約の相手方 | 阪急不動産株式会社ほか113名 |
契約 | 昭和51年5月〜52年7月 |
支払 | 昭和51年5月〜52年9月284回 (うち52年度34回42,473,897円) |
本件は、高速道路の建設に伴う事業用地の買収に当たって、必要の範囲を著しく超えた土地等を取得したもので、処置当を得ないと認められる。
(説明)
阪神高速道路公団(以下「公団」という。)では、高速大阪西宮線(以下「高速道路」という。)の建設に際し、国道43号の一部約950m区間を拡幅する必要が生じ、これに伴い上記新甲子園マンションの土地3,275m2 のうち3,026m2 及び建物3棟115戸のうち102戸を買収し、居住者に対する移転補償等を合わせ総額19億8290万余円を支払っている。
しかして、公団における上記買収の経緯についてみると、道路拡幅により必要な事業用地の範囲が国道43号の歩道(幅員4m)に充当するための幅約2.5m、延長約60mの土地156m2 (マンション敷地面積の5%程度)であり、その土地の上にあって支障となるのは同マンションの東棟(7階建て42戸)のうち国道沿いの各階1戸計7戸分(建物全戸数の6%程度)であることから、当初、この部分の土地及び建物部分だけを買収することとした。そして、東棟以外の他の2棟は道路境界から約10m以上離れた位置にあって、本件事業用地の範囲外にあること、また、マンションが独立する各戸の集合住宅であることなどから、前記東棟のうち7戸だけを切り取った後に外壁を設置するなどすれば構造上建物に欠陥が生じないと判断し、昭和47年10月以降この方針で相手方と数次にわたり交渉を行った。しかし、同マンションの土地と建物の一部とが区分所有者の共有関係にあり、買収について区分所有者全員の同意が得られなかったため、結局、48年10月、全戸買収の意向を相手方に示し、一部の残留者を除き、買取り及び立退き補償契約を、また、残留者については道路敷となる土地の共有持分相当額の補償等の契約を前記価格で締結している。
しかし、本件マンションは高速道路建設に直接支障となるものではなく、歩道の一部にかかるにすぎないものであり、しかも、全戸買収に応じた48年10月当時の高速道路建設の進ちょく率は、50%にも満たない状況で完成までに相当の期間が予想されていたことからみて、買収処理を急ぐ余り、安易に全戸買収の方針に変更し、結局、必要の範囲を著しく超えた広大な土地、建物を買収することとなったのは、処置当を得ないと認められる。
なお、本件マンションは、所有者が全戸買収を要求していたものの、一部は残留を希望してそのまま居住しており、公団が取得した建物のうち東棟については当初の方針どおり支障部分を切り取り外壁を設置し、東棟の残余及び他の2棟は売り払うこととしている。一方、高速道路の建設は当初の計画を大幅に遅延しその完成は55年以降になることが見込まれている状況である。
(参考図)