会計名及び科目 | 一般会計 (組織)環境庁 (項)自然公園等施設整備費 |
部局等の名称 | 山梨県 |
補助の根拠 | 自然公園法(昭和32年法律第161号) |
事業主体 | 山梨県 |
補助事業 | 山梨県南都留郡河口湖町富士箱根伊豆国立公園船津(埋立)園地(第2工区)施設整備事業 |
工事費 | 51,166,000円 |
上記に対する国庫補助金交付額 | 25,583,000円 |
この補助事業において、園地内の護岸工事等の施工が設計と相違していて、国庫補助金4,149,836円が不当と認められる。
(説明)
この工事は、河口湖町船津地区の河口湖畔の埋立地に設けられた2箇所の既設駐車場の中間にある水面1,171m2
について、昭和51、52年度事業として、これを埋め立て、客土6,842m3
、橋梁1箇所、護岸工延長84m等を施工し園地を造成するものである。このうち、工区の中央部に施工する取水路の護岸工(左岸41m、右岸43m)については、当初設計によれば、厚さ13mmの鋼矢板8mもの、10mもの及び12mものを使用して鉛直に建て込み(左岸側104枚、右岸側108枚)、上部を嵩(かさ)上げコンクリートで被覆するほか、河口部(取水路入口)一帯の軟弱地盤の区間(左岸側26m、右岸側24m)は鋼矢板の背面から8mの位置に控壁コンクリート(上幅0.3m、下幅0.7m、高さ1.5mの重力式擁壁構造)を鋼矢板に平行して設置し、控壁コンクリートと鋼矢板(上端部)とを連結するためタイロッド(注1)
を1.2m又は1.6m間隔で施工することになっていた。その後、鋼矢板の建込み途中において、取水路入口付近の支持地盤が想定した位置より深いことが判明し、当初設計の鋼矢板の長さでは不足することとなるので、取水路入口から左右岸2mの区間は鋼矢板4mもの(10枚)を、また、2mから6mまでの区間は鋼矢板3mもの(20枚)をそれぞれ上部に継ぎ足すこととして設計変更したが、更に、施行期間中の長雨により湖面の水位が例年に比べて約1m上昇する異常な事態が生じたため、鋼矢板の全数について2mもの(212枚)を継ぎ足すこととして再度設計変更を行い、これにより施工することになったものである。
しかして、上記のように鋼矢板を継ぎ足す場合には、接合部の強度を保持するためその接合部に開先(かいさき)加工(注2) して慎重かつ適切に溶接を施すことが必須の要件となっているのに、本件工事の接合部の溶接についてみると、開先加工を全く行っていないため溶接材の溶け込み量が著しく不足していた。
このような施工によったため、鋼矢板の強度が著しく低下し、この結果、護岸工は取水路の入口から左岸側10mの間、右岸側12mの間の鋼矢板が前面に傾き、上部の接合部の位置では最高55cmから110cm程度もはらみを生じているばかりでなく、タイロッドで連結している控壁コンクリートが前面に滑動して傾斜し、その一部にはき裂を生じているものもあるなど本件護岸工は著しく不安定なものとなっており、工事費8,075,380円(国庫補助金4,037,690円)が不当と認められる。
また、埋立工事のうち、盛土291m3
を施工すべき箇所については下部115m3
を転石だけで施工したため空げきを生じ、かん没箇所が見受けられる状況となっていて、施工が著しく粗雑となっており、工事費224,292円(国庫補助金112,146円)が不当と認められる。
(注1) | タイロッド | 護岸の鋼矢板と控壁コンクリートとをつなぎ、背面土圧による鋼矢板の転倒を防止するための連結鋼棒 |
(注2) | 開先(かいさき)加工 | 溶接を行うために母材の溶接すべき面を一定の角度に削り取ること |