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  • 昭和53年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
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  • 租税

租税の徴収に当たり徴収額に過不足があったもの


(11) 租税の徴収に当たり徴収額に過不足があったもの

会計名及び科目 一般会計 国税収納金整理資金 (款)歳入組入資金受入 (項)各税受入金
部局等の名称 麹町税務署ほか190税務署
納税義務者又は源泉徴収義務者 580人

 上記の191税務署において納税義務者等580人から租税を徴収するに当たって、調査が十分でなかったため、徴収額が不足していたものが526事項1,065,792,742円、徴収額が過大になっていたものが54事項102,752,351円あった。これらについては、本院の注意により、すべて徴収決定又は支払決定の処置が執られた。これを国税局ごとに集計して税目別に掲げると、別表 のとおりである。

(説明)

 これらの徴収過不足の事態は、当局が課税資料の収集、活用を適確にしていなかったり、法令適用の検討が十分でなかったり、納税者が申告書等において所得金額、税額の計算等を誤っていたのをそのまま見過したりするなど調査が十分でなかったことによって生じたもので、その主な態様を示すと次のとおりである。

1 源泉所得税に関するもの

(1) 配当(36事項)、給与等(25事項)

 配当、給与等については、その支払の際に支払者が源泉徴収義務者となって、所定の方法により各受給者に対する税額を計算してこれを徴収し、原則として徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければならないことになっている。また、未払となっている配当及び役員賞与については、支払が確定した日から1年を経過した日において支払があったものとみなされ、源泉徴収義務者はその翌月10日までに徴収税額を国に納付しなければならないことになっている。そして、源泉徴収義務者が納期までに納付しなかったり、税額の計算を誤ったりしたときは、納税の告知をしなければならないことになっている。
 しかし、納期までに納付しなかったり、税額の計算を誤ったりしているのに納税の告知をしていなかったものである。

2 申告所得税に関するもの

(1) 譲渡所得(99事項)

 資産の譲渡益については譲渡所得として課税することになっている。譲渡所得のうち、土地建物等の譲渡に係る所得は他の所得と区分して課税することになっており、譲渡した土地建物等の取得の日が、昭和44年1月1日前のものは長期譲渡所得、同日以後のものは短期譲渡所得として、それぞれ特別な税額計算の方法が執られている。また、自己が居住の用に供していた土地建物等を譲渡した場合、収用交換等により土地建物等を譲渡した場合等には特別控除額が認められるなどの特例措置が執られている。
 しかし、譲渡所得が発生しているのに課税していなかったり、長期譲渡所得、短期譲渡所得についての税額計算を誤ったり、居住用財産の譲渡、収用交換等による資産の譲渡に該当しないのに特例を適用したりしていたものなどである。

(2) 資産所得の合算(32事項)

 生計を一にする一定範囲の親族の資産所得(利子所得、配当所得及び不動産所得)は、これを主たる所得者(注) の所得に合算した場合の合計額が所定の金額を超えるときには、この合計額に対する税額を計算した後、その税額を各人の所得に応じてあん分して、それぞれの税額を計算することになっている。
 しかし、これら親族の資産所得があるのに合算して税額を計算していなかったものである。

 (注)  主たる所得者 総所得金額のうち資産所得以外の所得金額が最も大きい者。資産所得だけの場合は資産所得の金額が最も大きい者

(3) 配当所得(31事項)、雑所得(32事項)

 法人からの利益の配当等については、源泉分離選択課税(注) の場合を除いて、その支払を受ける者に配当所得として課税することになっており、また、貸付金の利子等で他の所得に該当しないものについては、雑所得として課税することになっている。
 しかし、これら配当等及び貸付金の利子等による所得があるのに課税していなかったものである。

 (注)  源泉分離選択課税 株式等に係る配当所得については、配当等の支払を受ける者が法人の発行済株式の総数又は出資金額の一定割合以上を有する場合、又は法人から支払を受ける配当等の金額が所定額以上の場合を除いて、他の所得と分離し一定の税率による課税を選択することができる。

3 法人税に関するもの

(1) 同族会社の留保金額(52事項)

 同族会社(注) に対する法人税の課税は、通常の法人税のほか、利益を社内に留保した金額が所定の金額を超える場合、その超える部分の金額に対し特別税率による法人税が課税されることになっている。
 しかし、同族会社であるのに非同族会社と判定して課税していなかったり、留保金額が所定の金額を超えていて課税の要があるのに課税していなかったり、留保金額に含めることになっている欠損繰戻しによる還付法人税額等を含めていないなど留保金額の計算を誤ったりしていたものである。

 (注)  同族会社 この場合の同族会社とは、株主等(株主等に同族会社でない法人がある場合はその法人を除く。)の3人以下並びにこれらと特殊の関係にある個人及び法人が有する株式の総数又は出資金額の合計額が、その会社の発行済株式の総数又は出資金額の100分の50以上となる会社をいう。

(2) 退職給与引当金(44事項)

 退職給与規程を定めている法人は、その使用人の退職により支給する退職給与に充てるための退職給与引当金への繰入額について、期末退職給与の要支給額から前期末退職給与の要支給額を控除した金額(又は給与総額の100分の6相当額)と、期末退職給与の要支給額の100分の50相当額から期末退職給与引当金を控除した金額とのうち、いずれか少ない金額の範囲内で、これを損金に算入することが認められている。また、使用人が退職した場合には、退職給与引当金のうち退職者の前期末退職給与の要支給額に相当する金額は、これを取りくずして益金に算入することになっている。
 しかし、繰入額の計算に当たって、前期末退職給与の要支給額があるのにこれを控除していなかったり、期末退職給与引当金が当期末退職給与の要支給額の100分の50相当額を超えることとなるのにその額を損金に算入するなどしたり、また、取りくずしに当たって、退職者の前期末要支給額を下回る額を取りくずしたりしていたものである。

(3) 土地の譲渡等に係る譲渡利益(42事項)

 昭和44年1月1日以後に取得した土地を譲渡したなどの場合には、その譲渡利益金額については、通常の法人税のほか、特別税率による法人税が課税されることになっている。そして、この特別税率による法人税は、土地の譲渡が優良宅地の供給に寄与する場合等に該当するときは課税されないことになっている。
 しかし、譲渡利益金額があるのに課税していなかったり、譲渡経費の額の計算を誤ったため譲渡利益金額を過少に計算したり、優良宅地の供給に寄与する場合等に該当しないのに該当するものとして課税していなかったものなどである。

(別表)

(別表)