会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)農林水産本省(昭和52年度は農林本省) | |
(項)農業振興費 (項)畜産振興費 (項)土地改良事業費 (項)農用地開発事業費 (項)農業施設災害復旧事業費 (項)沖縄開発事業費 (項)離島振興事業費 | |||
(組織)林野庁 | (項)林業振興費 (項)林道事業費 | ||
(組織)水産庁 | (項)漁港施設災害復旧事業費 | ||
部局等の名称 | 東北、関東、近畿、中国四国、九州各農政局、林野庁、沖縄総合事務局、沖縄県 | ||
補助の根拠 | 土地改良法(昭和24年法律第195号) | ||
農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律(昭和25年法律第169号) | |||
公共土木災害復旧事業費国庫負担法(昭和26年法律第91号)等 | |||
事業主体 | 県5 市町村11 農業協同組合1 その他2 計19事業主体 | ||
補助事業 | 岩手県岩手郡雫石町西安庭地区防災ダム新設等21事業 | ||
上記に対する国庫補助金交付額合計 | 623,508,654円 |
上記の21補助事業において、工事の設計又は工事費の積算が適切でなかったり、工事の施工が設計と相違していたりなどしていて、国庫補助金70,297,973円が不当と認められた。これを県別に掲げると別表 のとおりである。
これは、北海道ほか41府県で全国の事業箇所96,718のうち6.4%に当たる6,182(事業費292,175,808,544円、国庫補助金161,799,440,387円)について検査した結果である。
(説明)
農林水産省所管の公共事業関係補助事業は、地方公共団体等が事業主体となって施行するもので、一般会計では、ほ場、農道及び農業用施設の整備、農用地及び農業用施設の災害の防止、農用地及び草地の開発、林道の開設等の工事並びに農地及び農業用施設等が台風等で被災したものについての災害復旧等の工事に要する費用について、また、国有林野事業特別会計(治山勘定)では、治山ダム等の建設及び災害復旧工事に要する費用について、直接又は間接に事業主体である地方公共団体等に対して、それぞれの法律等で定められた率により補助金を交付している。
しかして、これらの補助事業の実施及び経理について検査したところ、前記の19事業主体が実施した土地改良、農道、林道の整備及び災害復旧等の公共事業21事業は、設計、積算又は施工等が適切でないと認められた。
いま、これらについて不当の態様別に示すと次のとおりである。
工事の設計又は工事費の積算が適切でないもの | |||
12事業 | 不当と認めた国庫補助金 | 56,793,406円 | |
工事の施工が設計と相違しているもの | |||
8事業 | 不当と認めた国庫補助金 | 11,671,060円 | |
事業費の精算が過大となっているもの | |||
1事業 | 不当と認めた国庫補助金 | 1,833,507円 |
県名 | 事業 | 事業主体 | 事業費 | 左に対する国庫補助金 | 不当と認めた事業費 | 不当と認めた国庫補助金 | 摘要 | |
(30) |
岩手県 |
岩手郡雫石町西安庭地区防災ダム新設 |
岩手県 |
千円 51,842 |
千円 33,697 |
千円 5,102 |
千円 3,316 |
工事の設計過大 |
この工事は、矢櫃(やびつ)川流域の耕地、農業施設等を水害から防護するための農地防災事業(事業計画昭和46年度から54年度)の一環として、雫石町西安庭地区内に建設中の矢櫃ダム工事のうち、53年度に堤体天端(ば)に高欄延長280m及び余水吐け水路側壁に高欄延長109m等を施工したものである。 しかして、設計書及び図面によると、うち堤体天端の高欄は、笠木の大きいアルミニウム合金製のボックス型高欄を設置することとし、1m当たり単価を42,388円と算定していた。 しかし、上記高欄の設置箇所は、堤体の左岸側が行き止りとなっていて車両の通行の用に供されることのないところであるから、同じく車両の通行の用に供されることのない本件工事の余水吐け水路の側壁に設置した笠木の小さいアルミニウム合金製の縦格子型高欄と同程度の安価なものを使用しても何ら支障はないと認められるのに、外観を重視して価格を検討することなく高価な上記高欄を設置することとしたのは適切とは認められない。 いま、仮に本件高欄を上記余水吐け水路の側壁に設置した高欄と同様のもので設置することとすれば、高欄1m当たりの単価は25,908円で足り、これにより工事費を修正計算すると46,740,000円となり、本件工事費はこれに比べて約5,102,000円が不経済となっていると認められる。 |
(参考図)
(31) | 岩手県 | 九戸郡九戸村戸田地区山村地域農林漁業特別対策事業育苗施設設置 | 九戸村農業協同組合 | 22,035 | 11,017 | 3,666 | 1,833 | 事業費の精算過大 |
この事業は、葉たばこ生産農家の育苗の省力化及び健苗の確保を図るため、昭和53年2月育苗施設としてガラス温室2棟延680m2
及びボイラー室を設置したもので、育苗施設については契約額21,705,000円で請負により設置したこととし、これに設計委託料330,000円を加えて事業費を22,035,000円で精算していた。 しかし、実際は、上記育苗施設の請負人から3,666,910円の割りもどしを受けており、本件事業に要した費用は18,368,090円である。 |
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(32) | 山形県 | 東置賜郡川西町東沢地区営農飲雑用水施設整備 | 川西町 | 6,057 | 3,028 | 1,163 | 581 | 工事の設計過大 |
この工事は、農村の生活環境を整備する事業(事業計画昭和51年度から54年度)の一環として、飲用水及び雑用水を送水する管路延長23,418mを布設するもので、このうち、53年度に、川西町東沢地先に延長633mを施工したものである。 しかして、この管路の設計についてみると、管路には、水道用硬質塩化ビニル管(JIS K6742。 以下「VW管」という。)を使用することとしたが、口径125mmの規格のものを使用することとしている563.5mの管路については、同規格のVW管がないので、水道用石綿セメント管を使用することとして工事費を水道用石綿セメント管1本(3mもの)当たり単価7,100円(1m当たり2,366円)、継ぎ手1箇所当たり石綿セメント継ぎ手1,450円、鋳鉄継ぎ手2,830円及び管布設費1本当たり2,154円(1m当たり718円)合計2,055,468円と積算していた。 しかし、硬質塩化ビニル管には、上記のVW管のほか品質、強度が同一である一般用硬質塩化ビニル管(JIS K6741。 以下「VP管」という。)が市販されていて、他のこの種工事の施工例でも、日本水道協会の品質証明を得て水道用として使用されており、これによれば、VP管口径125mm(4mもの)1本当たり4,420円(1m当たり1,105円)、塩化ビニル製継ぎ手1箇所当たり1,230円及び管布設費1m当たり204円で布設できるのであるから、本件工事においても同様に品質証明を得たうえ、これを使用すべきであったと認められる。 いま、仮に上記により施工したとすれば、工事費は911,604円となり、本件工事費はこれに比べて約1,163,000円が不経済となっていると認められる。 |
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(33) | 群馬県 | 安中市西碓氷地区広域農道整備 | 群馬県 | 50,000 | 32,500 | 5,614 | 3,649 | 工事の施工不良 |
この工事は、安中市から松井田町に至る広域営農団地の基幹となる農道総延長9,550mの新設工事(事業計画昭和47年度から53年度)の一環として、安中市上後閑地先に延長242mの農道を新設することとし、52、53両年度に路床工、路盤工及び土留めコンクリートブロック練り積み擁壁等を施工したものである。 しかして、このうち曲線部の谷側に施工したコンクリートブロック練り積み擁壁延長34mは、設計書、図面及び仕様書によると、基礎工として擁壁の下部には高さ2.5m又は3m、法勾(のりこう)配(注) 6分でコンクリート擁壁91m3 を施工し、これを基礎として、上部には高さ最高6.1m、法勾配6分でコンクリートブロック練り積み擁壁211m2 などを施工し、背後には裏込めぐり石を十分つき固め、背後の埋めもどし土及び盛土は、工事に適した掘削土を使用し十分締め固めて施工することになっていた。 しかるに、裏込めぐり石のつき固めが十分でなかったり、埋めもどし土及び盛土は降雨時に水分を多量に含んだ土砂をそのまま使用し、その施工も粗雑であったため、擁壁背後に過大な土圧がかかることとなり、このため下部のコンクリート擁壁が前方に傾斜して法勾配5.7分から5.9分程度となっていたり、目地部が4cm程度分離していたり、き裂が発生していたりしており、また、上部のコンクリートブロック練り積み擁壁は、その下部が前方に押し出されて法勾配が6.1分程度となっていたり、5箇所にき裂が発生したりしているばかりでなく、両擁壁の打ち継ぎ目が分離して擁壁の前面が2.5cm程度開口しているほか、裏込めぐり石が沈下するなどしていて、擁壁全体が不安定なものとなっている。 |
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(注) 法勾(のりこう)配 斜面の傾斜の度合いをいい、土木用語では、通常斜面を斜辺する直角三角形の縦の辺の長さに対する横の辺の長さの比で表わされ、例えば、高さ1mに対して水平方向の長さが0.6 mの場合は6分と呼ばれる。 | ||||||||
(34) | 群馬県 | 吾妻郡中之条町中之条地区広域農道整備 | 群馬県 | 58,000 | 37,700 | 6,007 | 3,905 | 工事の設計不適切 |
この工事は、中之条町中之条地区内の広域営農団地の基幹となる農道総延長19,933mの新設工事(事業計画昭和49年度から56年度)の一環として、52、53両年度に四万川に架設した橋りょう(橋長70m、幅員7m)の上部工及び高欄工等を施工したもので,このうち高欄工の設計についてみると、高欄延長157m(片側78.5m)は、歩道用の縦格子型アルミニウム合金製の高欄(支柱間隔2.5m、支柱高さ1.1m、笠木高さ8.5cm、幅15cm、格子間隔17.3cm)で設計し施工していた。 しかし、上記橋りょうは,歩道と車道の区別のない歩車道兼用構造の橋りょうであり、このような場合には、車両等運行の安全を確保するため道路橋示方書及び防護柵(さく)設置要綱に定められた所要の強度等の条件を満たしている自動車用防護柵で設計し施工すべきであると認められるのに、誤って歩行者等の転落防止を目的とした歩道用のアルミニウム合金製の高欄で設計し施工したもので、工事の目的を達していない。 |
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(35) | 千葉県 | 長生郡長南町南総地区広域農道整備 | 千葉県 | 105,500 | 68,575 | 3,530 | 2,294 | 工事の設計過大 |
この工事は、長南町南総地区内の広域営農団地の基幹となる農道総延長15,296mの新設工事(事業計画昭和48年度から57年度)の一環として、53年度に714mを新設したもので、地山を切り取り又は盛土するなどのほか、水路工として、地山からの浸透水等を処理するための地下排水工及び路面等の表面水を処理するためのU形側溝(こう)を施工するものである。 しかして、設計書及び図面によると、地下排水工は、道路側溝の下部に径10cmの透水管延長1,128mを布設し、その周囲には洗砂を上幅50cm、下幅20cm、厚さ20cm入れて集水等の機能を持つ構造とし、また、側溝延長1,128mは一般の街路側溝に使用される既製品のふた掛け用鉄筋コンクリートU形側溝(内幅30cm、内高30cm、長さ2m)を使用することとして、これにより工事費を算定していた。 しかし、地下排水工を施工した区間のうち切土箇所は大部分が砂岩等の堆(たい)積岩からなっていて、現地を調査したところ、地山からの浸透水や地下水は認められない状況であり、また、盛土箇所については、現場で掘削した際に発生した岩砕を使用して盛土していることから透水性が高く、更に地下水の影響もない箇所であるから、地下排水工として透水管を布設する要はないものと設められる。また、ふた掛け用鉄筋コンクリートU形側溝については施工箇所が山間部で、現にふた掛けの計画がないのであるから、この種工事に一般に使用される鉄筋コンクリートU形側溝(JIS A5305、内幅30cm、内高30cm、長さ0.6m)を使用することとし、側溝を保護するため車道側側壁をコンクリートで補強する設計とすればふた掛け用のものを使用する要はなかったと認められる。 なお、この工事のうち実地検査当時(54年2月)未施工となっていた地下排水工及びふた掛け用鉄筋コンクリートU形側溝延長377mについては、施工を取り止め、別途54年度において本院指摘に基づく設計により施工することとした。 |
(36) | 石川県 | 鳳至郡門前町林道樽見線開設 | 門前町 | 41,194 | 20,597 | 1,430 | 715 | 工事の施工不良 |
この工事は、民有林における林道網の整備を図るため、林道延長1,900mを開設する事業(事業計画昭和51年度から53年度)の一環として、53年度に門前町樽見地区に延長940mを施工することとし、道路を横断する暗きょ排水路5箇所延長185mには円形コルゲートパイプ(直径1m及び0.8m)を布設したものである。 しかして、円形コルゲートパイプの布設に当たっては、図面及び仕様書によると、布設箇所を底幅2m、上幅3.7m又は3.9m、高さ1.7m又は1.9mの断面に整形した後、基床には山砂を厚さ50cm敷きならし、その上に円形コルゲートパイプを布設して左右には裏込め用として良質の土砂を厚さ68cm又は85cm、その上部に良質の被覆土を厚さ60cmそれぞれ敷きならして円形コルゲートパイプが偏心したり又は偏圧を受けないようにこれらの土砂を左右均等に層状に十分締め固めて施工することになっていた。 しかるに、上記のうち、2箇所延長58mの施工に当たり、降雨直後の含水量の多い土砂を裏込め及び被覆土として使用し、左右均等に層状に十分締め固めを行わないで施工したため、円形コルゲートパイプは不均等な外圧を受けて全延長にわたり著しく変形している状況である。 |
(参考図)
(37) | 長野県 | 下伊那郡豊丘村山田地区土地改良総合整備ほ場整備 | 豊丘村 | 12,480 | 6,240 | 1,216 | 608 | 工事の施工不良 |
この工事は、団体営土地改良総合整備事業(事業計画昭和52年度から54年度)の一環として、52年度に豊丘村山田地区内の農地2.3haを階段状に整地してほ場を整備するために整地工、畦畔(けいはん)工、法(のり)面の仕上げ工及び土留め工等を施工したもので、設計書、図面及び仕様書によると、このうち、土留め工延長417mは法長3.2mから5.7mの盛土斜面(法勾(のりこう)配1割)の土質が崩落し易い砂質土であることから、土砂の崩落を防止するため盛土斜面の中央部に長さ1.2mの松ぐいを60cm間隔で、くい頭部60cmを残して打ち込み、このくいに横板(幅4cm)を3段に打ち付けた後、これらに土留め柵(さく)用ネット(合成樹脂製、幅60cm、網目7mm)を張り、横板で重ね打ちして固定することとしており、その施工に当たっては、盛土や転圧に合わせながらネットをくい頭から下方へ張り付け、ネットの下部20cmは盛土に埋め込むことになっていた。 しかるに、盛土及び転圧をすべて終えた後に土留め用のくいを打設し土留め柵用のネットを張り付けたため、延長387mについては、下段の横板が施工されておらず、盛土中に埋め込むこととなっているネットの下部約20cmは埋め込まないまま上部に折り返して重ねており、このため、盛土が土留め柵の下部から崩落しているなど、その施工が著しく粗雑となっていて、土留め工としての目的を達していない。 |
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(38) | 三重県 | 南牟婁郡紀和町林道熊谷線開設 | 紀和町 | 51,600 | 25,800 | 2,049 | 1,024 | 工事の施工不良 |
この工事は、林業の協業生産基盤の整備事業の一環として、昭和52年度に紀和町赤木地区に林道延長1,029mを施工することとし、土砂の切り取り、盛土のほかコンクリートブロック練り積み擁壁1,362m2
等を施工したものである。 しかして、設計書、図面及び仕様書によると、うち路側コンクリートブロック練り積み擁壁延長43.5m(147m2 )は、基礎地盤を十分つき固めた後基礎コンクリートを打設し、この上に高さ1.71mから3.85m、法勾(のりこう)配3分で施工することになっていた。 しかるに、基礎部及び擁壁の施工に当たって、丁張りを誤ったまま施工したため、法勾配は2.1分程度と設計に比べて急勾配になっていて不安定なものとなっており、既に擁壁の一部にはき裂を生じている。 |
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(39) | 滋賀県 | 甲賀郡甲南町竜法師地区水路51年災害復旧 | 甲南町 | 6,630 | 5,343 | 3,097 | 2,496 | 工事の設計不適切 |
この工事は、昭和51年9月の台風17号により被害を受けた甲南町大字竜法師地先の用水路延長20mを復旧するため、崩落箇所に盛土しその上部に三面張りコンクリート水路を、また、盛土の崩落を防止するためコンクリートブロック練り積み擁壁延長42m(184m2
)を施工したもので、設計書、図面及び仕様書によると、このうち第2工区の水路延長6mの下部に施工したコンクリートブロック練り積み擁壁延長17m(89m2
)は高さ5m、前面の法勾(のりこう)配3分で、また、擁壁背後の盛土は法勾配1割2分、法長6.7 m(下段3.5m、上段3.2m)で施工することになっていた。 しかし、上記のとおり盛土の法長が長いうえに法勾配も急勾配であり、しかも擁壁の基礎部から盛土上部に布設した水路までの直高が約10mあるばかりでなく、擁壁の両端が左右の地山と密着していないため、この箇所から盛土が崩落するなどの事態が予想される状況であって、このような場合にはこれを防止するため擁壁の両端部に留め壁工(注) を施工するのが通例であるのに、これを考慮しなかったため盛土が崩落していて擁壁及び水路が不安定な状況となっており、工事の目的を達していない。 (注) 留め壁工 擁壁の安定や背後の盛土の崩落を防止する目的で、擁壁の端部から盛土方向に取り付けるコンクリート構造物 |
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(40) | 岡山県 | 小田郡矢掛町備中西部地区広域農道整備 | 岡山県 | 91,602 | 59,541 | 9,722 | 6,319 | 工事の設計不適切 |
この工事は、矢掛町から美星町に至る広域営農団地の基幹となる農道総延長12,810mを新設する工事(事業計画昭和49年度から58年度)の一環として、うち52年度に422mを施工したもので、この工事のうち谷あいの部分に盛土して築造される道路の路体下部には道路を横断するボックスカルバート延長70m(内幅1.75m、内高2m)を施工することとし、その設計に当たっては、「建設省土木構造物標準設計」(以下「標準設計」という。)により、ボックスカルバートの上部の土被りが2mから5mまでの場合に適用される構造のものを採用して施工していた。 しかし、ボックスカルバート設置箇所の路面までの土被りは最大12.4mとなっているのであるから、これに適した構造のもので設計し施工すべきであるのに、上記のように低い盛土を条件としている標準設計によって設計したため本件ボックスカルバートは盛土の荷重に耐えられない不安定なものとなっており、既にボックスカルバート頂版部には延長方向にき裂が数条生じていて、なかには不規則に集中している箇所もあるほか側壁部にも上下方向にき裂が多数生じており、工事の目的を達していない。 |
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(41) | 広島県 | 豊田郡東野町大田地区農道整備 | 東野町 | 34,206 | 18,813 | 1,247 | 685 | 工事の施工不良 |
この工事は、昭和51、52両年度に農村の基盤整備を図るため東野町大田地区内に農道延長924mを新設したもので、うち52年度に施工した624mは、切り取り又は盛土のほか盛土箇所の路側にはコンクリート擁壁延長310m等を施工したものである。 しかして、設計書、図面及び仕様書によると、うち擁壁延長45mは高さ1.3mから2.4m、天端(ば)幅20cm、法勾(のりこう)配4分で施工し、天端から下部約1mのところの水平打ち継ぎ目は継ぎ目に差し筋を入れるなどして、擁壁の上層と下層のコンクリートが一体となるように施工することになっていた。 しかるに、うち29mは丁張りの確認が十分でなかったため擁壁の法勾配が3.1分から3.5分程度と設計に比べ急勾配になっているほか擁壁の一部にはき裂を生じており、また、残りの16mは擁壁上層部のコンクリートの打ち足しに当たり、水平打ち継ぎ目の処置が十分でなかったため、上層と下層のコンクリートが一体となっておらず、擁壁背面の盛土によって上層部(高さ約1m)が所定の位置より最大2.5cm程度前面に押し出されているばかりでなく、き裂も生じていて不安定なものとなっている。 |
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(42) | 徳島県 | 勝浦郡上勝町日の浦地区農地保全51年災害復旧 | 上勝町 | 18,210 | 17,900 | 2,579 | 2,535 | 工事の施工不良 |
この工事は、昭和51年9月の水害により被害を受けた上勝町日の浦地区内の農地2haを復旧するため、土留めコンクリート擁壁延長86m(1号擁壁52m、2号擁壁34m)等を施工したもので、設計書、図面及び仕様書によると、うち1号擁壁延長52m(139m3
)は高さ3mから4m、天端(ば)幅30cm、法勾(のりこう)配3分で施工し、また、擁壁背後の埋めもどし土は工事に適した掘削土を使用し十分に締め固めて施工することになっていた。 しかるに、うち延長27m(83m3 )は、背後の土砂の埋めもどしに当たり、降雨直後の水分を多量に含んだ土砂をそのまま使用し、その施工も粗雑であったため、擁壁背後の土圧が増大して擁壁の上端が所定の位置より8cmないし11cm前方に傾斜していたり、打ち継ぎ目(2箇所)が2cm程度分離するなどしていて不安定なものとなっている。 |
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(43) | 福岡県 | 大川市池田地区水路53年災害復旧 | 大川市 | 10,020 | 9,939 | 1,261 | 1,251 | 工事の施工不良 |
この工事は、昭和53年6月の水害により被害を受けた大川市池田地区内の水路延長90mを復旧するため、土留めコンクリートブロック練り積み擁壁両岸の延長145m(362m2
)を施工したもので、設計書、図面及び仕様書によると、施工箇所の地盤が軟弱であるため、基礎ぐいとして松丸太(長さ4m、末口12cm)を打ち込み、これにはし子土台を設置し、この上に高さ2.4m、法勾(のりこう)配3分で擁壁を築造し、その背後の盛土などの施工に当たっては擁壁に過大な土圧を与えないように施工することになっていた。 しかるに、うち左岸側擁壁の曲線部延長20m(50m2 )については地形上からも特に人力により慎重に施工すべきであるのに、バックホウ及びブルドーザなどの機械を使用して粗雑に施工したため、この間の擁壁が前方に押し出され中央部付近は上端が所定の位置より最大8.6cm前方に傾いていたり、き裂を生じたりしていて、不安定なものとなっている。 |
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(44) | 大分県 | 大分市上戸次峯地区農地開発 | 大分県 | 25,197 | 16,378 | 15,619 | 10,152 | 工事の設計不適切 |
この工事は、農地開発事業(事業計画昭和49年度から56年度)の一環として、53年度に大分市上戸次峯地区に畑地かんがい用水の貯水、配水を目的とするファームポンド(注)
及び農道等を新設したものである。 しかして、このうちファームポンドについては、その構造設計を設計業者に委託し、長辺35m、短辺10m、深さ2.9m、有効貯水量718m3 とし、その設置箇所については、地山の状態から地盤の支持が確保できると判断して、側壁の構造は、天端(ば)厚20cm、下部厚35cm、底幅255cmの鉄筋コンクリート逆T型擁壁構造で、また、底版は厚さ20cmの鉄筋コンクリートで設計し施工したものである。 しかし、現地を調査したところ、ファームポンドの側壁(短辺側)の伸縮目地が天端で12.3cm、下部で3.9cmの幅で、また、その反対側の側壁の伸縮目地も、天端で6.8cm、下部で1.4cmの幅でそれぞれ開口していて、底版部にもこの両側壁の開口部分を結ぶき裂が生じており、貯水が不可能な状況となっている。 このような事態を生じたのは、ファームポンドの設置箇所は急傾斜地で、地質は風化が進んでいる変成岩類からなり、しかも、破砕帯を伴う断層もあって地すべりの生じ易い地区であり、一方、この箇所に満水時にはファームポンドの自重等を合わせると総載荷重が約2,850tにもなる構造物を建設するのであるから、ボーリングなどにより入念な調査を行って、地盤の実態を十分は握して設計し施工すべきであったと認められるのに、これらに対する配慮を欠いたことによるもので、ファームポンドはその機能を発揮できず、工事の目的を達していない。 (注) ファームポンド かんがい用の水路の通水量と実際の使用水量を調節し、自然流下又は加圧により配水するための農業用貯水施設 |
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(45) | 大分県 | 豊後高田市並石地区かんがい排水 | 大分県 | 208,052 | 104,026 | 5,233 | 2,616 | 工事の設計過大 |
この工事は、豊後高田市並石地区のかんがい排水事業の一環として、管水路延長2,158mを新設するため、昭和53年度に同地区内の農地、林地及び道路下に鋼管を埋設したもので、設計書及び図面によると、鋼管は管径800mmのものを使用することとし、鋼管の受ける内圧等の設計条件が全て同一であるとみなし、また、外圧については道路下に埋設する場合の自動車荷重を20t/台、管の土被り厚さを1.2mとして計算した管厚8.5mmのものを全延長にわたり使用することとして設計し、その場合の1m当たり単価を直管28,083円、短管36,313円及び曲管を1本当たり単価163,880円から190,060円と算定している。 しかし、上記鋼管の埋設箇所についてみると、自動車荷重のかかる道路区間に埋設される管路延長は上記のうち117m(第2工区)にすぎず、他の大部分の2,041m区間は農地又は林地内であり、このような場合は農林水産省構造改善局が定めた「土地改良事業計画設計基準」によれば管径800mmのものを使用する場合の管厚は7.1mmが標準とされているのであるから、これにより設計しても管体の安全計算上支障はないものと認められる。 いま、仮に上記により設計したとすれば1m当たり単価は直管24,956円、短管32,443円、曲管は1本当たり単価145,270円から166,920円となり、これにより工事費を修正計算すると202,819,000円となり、本件工事費はこれに比べて約5,233,000円が不経済となっていると認められる。 |
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(46) | 大分県 | 直入郡荻町本村地区農道整備 | 荻町 | 23,400 | 10,530 | 2,670 | 1,201 | 工事の施工不良 |
この工事は、農村の基盤整備を図るため、荻町本村地区に農道総延長2,225mを新設する工事(事業計画昭和50年度から54年度)の一環として、52年度に410m(幅員4.5m)を施行したもので、土砂の切り取り及び盛土のほか谷側には土留めコンクリートブロック練り積み擁壁4箇所(第10号から第13号まで計557m2
)等を施工したものである。 しかるに、うち第12号擁壁延長30mは設計書、図面及び仕様書によると、中央部付近の延長13.5mの箇所にはその下部に法勾(のりこう)配4分のコンクリート擁壁(高さ0.4mから2.25m、22m3 )を基礎地盤の安定を図ったうえ施工し、この上部に同一勾配でコンクリートブロック練り積み擁壁150m2 (高さ2.5mから5.6m)を積み上げ施工することになっていた。 しかるに、擁壁は完成直後(52年11月ごろ)の不等沈下により、擁壁の中央部付近にコンクリートブロック練り積み擁壁の天端(ば)からコンクリート擁壁の下部に達するき裂が生じたためき裂箇所にはモルタルを充てんしたり、コンクリート擁壁の前面の一部をコンクリートで補修するなどして検収を了していたが、現地を調査したところ、コンクリート擁壁基礎部の床堀りの際に、地盤に軟弱な箇所があったにもかかわらず、これに対する処置を執らないまま施工したため、その後更に擁壁が不等沈下し、コンクリートブロック練り積み擁壁の天端から下部まで幅1.5cmから0.5cmのき裂を生じていたばかりでなく、上端が2.5cm前方に押し出されていて、擁壁が不安定なものとなっている。 |
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(47) | 沖縄県 | 石垣市登野城漁港船揚場52年災害復旧 | 石垣市 | 11,000 | 8,800 | 2,000 | 1,600 | 工事費の積算過大 |
この工事は、昭和52年7月の暴風雨による波浪の衝撃により決壊した石垣市登野城漁港の船揚場延長71.5mを復旧するため、52年度に斜路工(注1)
及び先端止壁(とめへき)工(注2)
を施工したもので、うち斜路工のコンクリート舗装379.7m2
の打設経費についてみると、1m2
当たりのコンクリート打設経費を水産庁が定めた「災害査定設計標準歩掛表」により4,460円、また、先端止壁工の躯(く)体90.9m3
については、コンクリートに使用するセメント33.6tの価格を沖縄県が定めた「52年度実施設計単価表」により1t当たり26,600円とし、工事費を計11,175,000円と算定していた。 しかし、斜路工のコンクリート舗装の打設経費は上記歩掛表の10m2 当たりの歩掛かりを誤って1m2 当たりの歩掛かりとして使用するなどしたもので正当な価格は1m2 当たり583円であり、また、先端止壁工のセメント価格は上記単価表の価格の適用を誤ったものであり、正当な価格は1t当たり23,300円とすべきものである。 いま、仮にこれらの適正な単価によって工事費を修正計算すると総額9,000,000円となり、本件工事費はこれに比べて約2,000,000円割高となっていると認められる。 (注1) 斜路工 漁船の引き揚げや下ろしを容易にするため海岸に傾斜させて施工したコンクリート舗装の構造物 (注2) 先端止壁工 波による洗掘を防止するため斜路工先端に設けたコンクリート擁壁 |
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(48) | 沖縄県 | 中頭郡与那城村与那城地区団体営畜産経営環境整備 | 与那城村 | 77,146 | 41,387 | 24,609 | 14,764 | 工事の設計不適切、施工不良 |
この工事は、与那城村与那城地区の畜産生産基盤の整備及び開発等を行う事業(事業計画昭和51、52両年度)の一環として、畜舎敷地の造成等を施行するもので、敷地の低位部に設置する水路用ボックスカルバート(以下「ボックスカルバート」という。)及びボックスカルバート呑(の)み口部の土留めとして鉄筋コンクリート逆T型擁壁(以下「擁壁」という。)を施工しているが、その設計、施工についてみると、 (1) ボックスカルバート延長130m(内幅2m、内高1.5m)は、「建設省土木構造物標準設計」(以下「標準設計」いう。)により、ボックスカルバート上の土被りの厚さが最高6.7mで、基礎にくいを用いない場合に適用する構造のものを採用することとし、一方、本件ボックスカルバートの設置箇所の地盤が軟弱であるとして基礎にくいを打ち込み上記ボックスカルバートをこの上に築造する設計で施工している。 しかし、このような場合には、ボックスカルバートがくい基礎で支持され、盛土の沈下に抵抗することとなるので、実際の土被り6.7mを基として、標準設計により計算される土被り9mに対応した構造とすべきであるのに、この点が考慮されていないため盛土の荷重に耐えられない不安定なものとなっており、既にボックスカルバートの底版及び頂版に延長方向にき裂が生じていて、工事の目的を達していない。 (2) 擁壁延長38m(高さ4m、底版幅2.35m)は、上記の標準設計に基づき、擁壁背面を砂などの良質材料によって擁壁の天端(ば)まで水平に盛土する場合に適用する構造のものを採用して設計し施工していた。 しかし、本件擁壁背後の盛土に使用する土質は粘性土であって擁壁天端から1割5分の勾(こう)配で高さ4.5mまで盛土することになっているのであるから、これに適した構造のもので設計し施工すべきであるのに、上記のように砂などを使用して低い盛土を施工することを条件としている標準設計を採用したため盛土の荷重に耐えられない不安定なものとなっており、また、盛土の施工に当たり、降雨時に施工したなどのため盛土は含水比が高くなって擁壁の背後は設計に比べて過大な土圧を受けることとなり、これらのため擁壁が前方に傾斜して壁面に不規則なき裂が生じていたり擁壁と接続している前項ボックスカルバートの呑み口部も破損していたりしていて、工事の目的を達していない。 |
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(49) | 沖縄県 | 国頭郡本部町具志堅地区土地改良総合整備畑地かんがい | 具志堅土地改良区(本部町) | 46,175 | 36,940 | 2,594 | 2,075 | 工事費の積算過大、工事の設計過大 |
この工事は、畑地かんがい施設の整備を図るため、昭和52年度に本部町具志堅地区の7haのほ場内及び公道の路面下にかんがい用水を送水するための管路として、一般用硬質塩化ビニル管(ほ場内の場合管径75mm、公道の路面下の場合管径75mmから200mmの4種類、以下「VP管」という。)延長4,854m等を布設するもので、設計書、図面及び仕様書によると、VP管の布設に当たっては、ほ場が整備工事前であることから、管の埋設深を1.2m、その掘削断面を深さ1.5m、底幅0.5m、掘削面の勾(こう)配4分、上幅1.7mとし、管体の折損等を防止するため保護砂厚さ0.2mを敷きならして管を布設し、その上に更に保護砂を厚さ0.2m敷きならした後掘削土を人力で埋めもどすこととして、埋設費をほ場内VP管延長3,439mについては1m当たり2,130円、公道の路面下のVP管延長1,415mについては、1,883円から2,272円とそれぞれ算定していた。 しかし、農林水産省構造改善局が定めた「土地改良事業計画設計基準」によれば、ほ場内での管の埋設深は、0.6m以上となっているのであるから、本件工事においてもこの0.6mにほ場整備の際の機械作業による荷重などを考慮した0.2mの余裕を見込んだ0.8mとし、これを基として掘削断面を計算し、深さについては1.07m、上幅については1.3mとすべきであったと認められる。また、上記設計基準によれば埋めもどしは、管の上部0.6mの間は人力により、更にその上部については機械を使用して埋めもどすこととなっているのであるから、本件工事においても、これにより人力と機械とを併用して施工することとすべきであったと認められる。 いま、仮に上記により施工することとすれば、埋設費1m当たり単価はほ場内の場合1,332円、公道の路面下の場合1,566円から1,936円となり、この単価により工事費を修正計算すると、積算不足となっていた埋設費における残土処理費等919,922円を考慮しても43,581,000円となり、本件工事費はこれに比べて約2,594,000円が過大となっている。 |
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(50) | 沖縄県 | 島尻郡大里村養豚団地育成事業共同畜舎及び尿溜槽の設置 | 農事組合法人大里村養豚生産組合 | 109,686 | 54,754 | 13,363 | 6,670 | 工事の設計不適切 |
この工事は、養豚の繁殖肥育を行う集団の経営技術及び施設の改善を図り、生産性を高めることを目的として、昭和53年3月畜舎4棟及び尿溜槽(だめそう)1基を設置したもので、設計書、図面及び仕様書によると、尿溜槽(鉄筋コンクリート上下2層造り)については、下層にふん尿450t、上層にたい肥250t(上層については、53年度事業で実施中に下層の尿溜槽が盛土の滑動によりずり出したため、工事を中止して54年度へ事故繰越)計700tを蓄えるものとし、これを支える基礎ぐいとして長さ5mから13mのPCぐい(径30cm)を14箇所に56本(1箇所当たり4本)を打ち込むこととして設計のうえ施工していた。 しかして、尿溜槽付近の敷地は、泥(でい)岩層の上を粘土層が覆った地層から成る傾斜面の原野に盛土した所であって、尿溜槽は、各畜舎から発生するふん尿を自然流下により集めるため、敷地内で最も低い箇所に設置したものであるが、降雨時には設置箇所付近は敷地内の雨水等が集中し、含水比が高くなるため、盛土斜面の安定性が低くなって滑動を生じやすくなるのであるから、設計に当たっては、原地盤及び盛土の状況等を十分に調査し、尿溜槽の背後(斜面側)の盛土を切り取り、土留め擁壁を設置するなど盛土の安定性を確保する設計とすべきであったと認められる。 しかるに、設計時にこれらに対する配慮が欠けていたなどのため、54年2月の降雨時に滑動が生じ、尿溜槽の一方が計画高より1.15m沈下して傾斜し、横方向へ0.90m、新方向に2.30m動いているなど極めて不安定な状態となっていて工事の目的を達していない。 |
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計 | 1,060,032 | 623,508 | 113,776 | 70,297 |