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  • 昭和53年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第7 農林水産省|
  • 不当事項|
  • 補助金

公共事業関係を除く補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの


(51)-(64) 公共事業関係を除く補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産本省(昭和52年度は農林本省)
          (項)農業振興費 (項)農地利用調整等助成費
          (項)農蚕園芸振興費 (項)水田総合利用対策費
          (項)水田利用再編対策費 (項)畜産振興費
部局等の名称 農林水産省、東北、関東、北陸、東海、近畿、九州各農政局
事業主体 農業協同組合6 その他413 計419事業主体
補助事業 秋田県仙北郡田沢湖町田沢しいたけ栽培組合農業就業改善総合対策事業等14事業
上記に対する国庫補助金交付額の合計 442,474,756円

 上記の14補助事業において、補助の対象とは認められないものを事業費に含めていたり、事業費を過大に精算していたりなどしていて、国庫補助金87,614,395円が不当と認められる。これを事業別、道府県別に掲げると、次表のとおりである。

道府県名 事業内容 事業主体
(所在地)
事業費 左に対する国庫補助金 不当と認めた事業費 不当と認めた国庫補助金 摘要
千円 千円 千円 千円
 (農業就業改善総合対策事業)
(51) 秋田県 しいたけ栽培施設の設置等 田沢しいたけ栽培組合(仙北郡田沢湖町) 12,080 6,035 1,209 604 事業費の精算過大
 この事業は、農業者が地元において安定した就労の場を得るため、しいたけ栽培を行うこととして、昭和53年12月しいたけ栽培施設2棟延べ277m2 を設置するとともにトラック等を導入したもので、しいたけ栽培施設については、請負契約額8,160,000円に工事雑費363,000円を加え計8,523,000円で設置したこととして事業費を精算していた。
 しかし、実際は、請負契約を解約し、基礎工事及び木工事等は組合が自ら資材を購入し労務者を雇い入れるなどして6,714,945円で、また、屋根工事及び電気工事等は他の業者に請け負わせ599,000円でそれぞれ施行したもので、設置に要した費用は7,313,945円である。
 (土地利用型集団営農推進特別事業)
(52) 石川県 育苗施設の設置 志雄町大和農業協同組合(羽咋郡志雄町) 35,706 11,329 1,728 548 事業費の精算過大
(53)  同 七尾市農業協同組合(七尾市) 25,250 7,973 1,507 476
 これらの2事業は、良質米の高能率な生産団地の育成を図るため、それぞれ育苗施設として建物1棟及び出芽装置等の育苗機器などを県経済農業協同組合連合会に契約額35,706,000円及び25,250,000円で委託して、昭和52年12月及び53年3月設置したもので、このうち育苗機器については工事費15,931,000円及び16,094,000円で設置したとして事業費を精算していた。
 しかして、この工事費は、同連合会が業者に支払う機器の代価及び運送すえ付け費に同連合会の所定の手数料を含めたものであるが、上記委託契約においては、委託事業費に増減が生じた場合は契約額を増減することとしている。
 しかし、育苗機器については、同連合会では業者に支払う機器の代価等が減額され工事費は14,202,474円及び14,586,177円となるのに契約額を減額しなかったもので、事業に要した費用は33,977,474円及び23,742,177円となるものである。
(54) 京都府 バックホウ等の購入 瑞穂町農業協同組合(船井郡瑞穂町) 4,491 2,245 2,500 1,250 補助の対象外
 この事業は、昭和52年度補助事業として、瑞穂町鎌谷地区内の水田の総合利用を集団的に推進するなどのため、土層改良を行うのに必要なバックホウ1台及び排水用ドレーンパイプ4,400m等を導入することとしたもので、このうちバックホウについては、53年2月に事業費2,500,000円で導入したとしていた。
 しかし、このバックホウは、実際は、52年2月に組合が1,523,000円で自力により取得し、使用していたものであって、補助の対象とはならないものである。
 (農地保有合理化促進事業)
(55) 愛知県 農用地の買入れに係る借入金の支払利息 財団法人愛知県農業開発公社(名古屋市) 211,632 141,088 67,121 44,747 補助の対象外
 この事業は、経営規模の拡大を図ろうとする農業者に未墾地を農用地として開発後売り渡すことを目的とし、昭和47年12月及び48年2月、西加茂郡藤岡町所在の未墾地739,559m2 を県営農地開発事業矢作北部地区日影山工区用地として1,008,756,037円で買い入れたものに対し、国はその買入れに係る借入金の47年12月から54年3月までの間の支払利息211,632,562円について、その3分の2相当額141,088,371円の助成を行ったものである。

 しかし、上記買入面積のうち、日影山工区に組み入れられた面積は505,000m2 (買入価額688,817,580円)であり、残りの234,559m2 (買入価額319,938,457円)は、44年3月、森林法(昭和26年法律第249号)第25条に基づく土砂流出防備のための保安林として農林大臣の指定を受け、開墾その他土地の形質変更は禁止されていたものであり、更に、47年9月、47年度から51年度までの治山事業5箇年計画の対象区域に定められ、48年6月、復旧治山事業として治山えん堤を築造した区域であるので保安林の指定解除の見込みがたたなくなり、49年10月、農林大臣の承認を受けた県営農地開発事業基本計画において計画地区から除外されたものである。

 この事態は、用地の買入れの際、これらについて十分調査を行わないまま買い入れたことにより生じたものであり、このような事業に対し買入れ時の47年12月から現在(54年3月)までの支払利息について44,747,780円の補助金を交付したのは適切とは認められない。

 (甘味資源生産対策事業)
(56) 鹿児島県 土壌改良剤及び農薬の購入等 西之表市農業協同組合(西之表市) 27,817 27,562 1,860 1,606 事業費の精算過大
(57)  同 土壌改良剤及び農薬の購入等 中種子町農業協同組合(熊毛郡中種子町) 42,631 42,273 3,103 2,744 事業費の精算過大
(58)  同 和泊町農業協同組合(大島郡和泊町) 24,110 24,034 1,220 1,144
 これらの3事業は、さとうきびの生産性の向上、生産費の軽減を図るなどのため、昭和52年5月から53年1月までの間に西之表市農業協同組合及び中種子町農業協同組合が、53年5月から同年11月までの間に和泊町農業協同組合が、それぞれ県経済農業協同組合連合会等から土壌改良剤及び農薬を購入して、さとうきび生産農家に配付したもので、このうち土壌改良剤(珪(けい)カル20kg入り)161,270袋の購入、配付については、購入代金45,041,840円に最寄荷揚港から集落までの配達賃等11,376,220円を加え56,418,060円を要したこととして事業費を精算していた。

 しかし、実際は、同連合会から土壌改良剤について西之表市農業協同組合は1袋当たり35円(53,171袋分1,860,985円)、中種子町農業協同組合は1袋当たり40円(77,579袋分3,103,160円)、和泊町農業協同組合は1袋当たり40円(30,520袋分1,220,800円)計6,184,945円の運賃助成を受けており、土壌改良剤の購入、配付に要した費用は50,233,115円である。

 (水田利用再編対策事業)
(59) 北海道 水稲の作付転換 滝川市農業者1名 17,527 17,527 617 617 補助の対象外
 この事業は、米の生産調整を図るため、水田において転作を実施した農業者に対して奨励補助金を交付するもので、当該転作実施水田について、権原に基づいで使用及び収益をしている者を交付対象者としている。
 しかして、同人は、昭和52、53両年度に水稲以外の小豆、小麦を作付けした水田延べ259,338m2 (52年度162,042m2 及び53年度97,296m2 )について使用収益権があるものとして総額17,527,750円の水田利用再編奨励補助金(52年度は水田総合利用奨励補助金)の交付を受けていた。
 しかし、実際は、上記の259,338m2 のうち河川敷延べ8,702m2 (52年度4,570m2 及び53年度4,132m2 )と滝川市の市有地151m2 (52年度)計8,853m2 は、河川管理者等の占用許可等を受けずに無断で水田として使用していたものであって、補助の対象とは認められない。
(60) 岩手県 水稲の作付転換 和賀郡江釣子村農業者406名 74,335 74,335 13,754 13,754 補助金の過大交付
 この事業は、米の生産調整を図るため、水田において転作を実施した農業者に対して奨励補助金を交付するもので、江釣子村の農業者406名は、昭和53年度に水田1,083,962m2 に水稲以外の飼料作物及び麦等を作付けして、水田利用再編奨励補助金として基本額60,581,379円のほか計画加算額13,754,256円計74,335,635円の交付を受けていた。

 しかして、計画加算額は、地域内の水田利用再編計画に参加した農業者に係る転作実施水田面積及びこれに加えることができる水田面積の合計(以下「実施水田面積等」という。)が、市町村長において農業者別に配分した転作目標面積の合計を下回っていない場合に市町村長の確認を経て交付されるものであるが、同村では、確認に当たり実施水田面積等は転作を実施した同村所在の水田1,083,962m2 に、麦の作付けを予定していた北上市所在の水田260,000m2 を加えて1,343,962m2 とし、転作目標面積の合計1,340,000m2 を下回っていないとしていたものである。

 しかし、実際は、北上市所在の水田260,000m2 は、岩手県農地管理開発公社が北上流通基地建設用地に充てるため所有していたものを、51年6月以降旧地権者である農業者が耕作していたものであるが、同公社が53年7月に農地転用の手続きを執ったため、農業者は予定していた麦の作付けを取りやめていた。したがって、実施水田面積等は転作を実施した水田1,083,962m2 だけであって、この面積は上記転作目標面積の合計を下回っており、計画加算額は交付できないものである。

 (飼料生産及流通対策事業)
(61) 栃木県 トラクタの購入等 烏山町谷浅見畜産組合(那須郡烏山町) 11,181 5,590 1,234 616 事業費の精算過大
 この事業は、ほ場から稲わらを集積し粗飼料として有効利用を図るため、農家3戸の共同利用施設として、昭和52年10月から53年3月までの間にトラクタ、運搬車各1台及びトラクタの附属作業機を導入するとともに農機具格納庫1棟を設置したもので、このうちトラクタ、運搬車及びトラクタの附属作業機については9,160,000円で購入したこととして事業費を精算していた。
 しかし、実際は、1,234,000円の割りもどしを受けており、購入に要した費用は7,926,000円である。
 (家畜畜産物流通改善対策事業)
(62) 福島県 バルククーラー等の購入 福島県酪農販売農業協同組合連合会(福島市) 32,298 10,703 2,377 785 事業費の精算過大
 この事業は、酪農家の生産する生乳の品質保持、集荷及び輸送の合理化を推進するため、昭和51年11月及び52年11月にバルククーラー(牛乳冷却機)25台、ミルクタンク3基及びミルクタンクをとう載するローリー3台を導入したもので、このうちバルククーラー及びミルクタンクについては26,968,000円で購入したこととして事業費を精算していた。
 しかし、実際は、2,377,000円の割りもどしを受けており、購入に要した費用は24,591,000円である。
(63) 京都府 共同保管配送施設の設置 京都府牛乳協業株式会社(京都市) 21,758 7,210 21,758 7,210 補助目的の不達成、事業費の精算過大
 この事業は、京都市ほか2市内の牛乳小売業者36名が共同で牛乳等の保管を行うとともに、洛西ニュータウンに入居する住民に牛乳等を配送することにより、牛乳小売業者の経営合理化を図り、牛乳供給価格の安定に資することを目的として、昭和51年11月に共同保管配送施設として建物1棟(152.16m2 )を15,000,000円で設置し、配送用保冷車1台を2,938,000円、冷蔵庫1基を3,820,000円でそれぞれ導入したこととしていた。

 しかして、この事業計画によると、この施設で共同で保管する牛乳等を1日当たり、51年度は22,646本(1本当たり200cc。以下同じ。)、52年度は45,313本、53年度は73,635本としているが、この事業の実施に伴い、小売業者は、従来牛乳工場等から自己の店舗まで配送されていた牛乳等を、自己の経費負担でこの施設まで引き取りに行くこととなり、従前の流通形態に相当の変更をきたすのに、この点について事前に事業参加小売業者の意向等を十分は握しないまま事業を実施したことや、洛西ニュータウンの団地建設の遅延等に伴い入居が進まなかったことなどのため、その利用実績は1日当たり、51年度は298本、52年度は419本にすぎず、53年4月以降はこの施設を牛乳小売業者の1名に賃貸し、同人はこの施設を食料品マーケット及びクリーニング取次所等として使用している状況で、会計実地検査後改善に努めてはいるものの、牛乳等の流通形態の変更を伴うため、今後も早急にはその利用の向上は見込めないものであって、牛乳等の共同保管配送施設として設置した目的を達していない。
 また、実際は、配送用保冷車は購入しておらず、冷蔵庫は3,500,000円と低価で購入していた。

(64) 福岡県 鶏卵加工処理機器の設置等 福岡県鶏卵加工協同組合(粕屋郡粕屋町) 134,945 44,568 34,844 11,508 事業費の精算過大
 この事業は、鶏卵の新規需要の拡大に資することを目的として、昭和52年11月から53年3月までの間に良質の液卵等を製造するための加工処理機器、汚水処理施設等を設置したもので、加工処理機器については、契約額96,844,000円で請負により設置したこととして事業費を精算していた。
 しかし、実際は、上記の契約は架空のものであって、このうち86,800,000円で設置したこととしている割卵機等は、他の業者と別途に契約し62,000,000円で設置したものであり、また、残余の10,044,000円で設置したこととしているオムレツ焼機等は、従来から設置されていたものである。
675,764 422,474 154,836 87,614