(昭和54年11月30日付け54検第373号 農林水産大臣あて)
農林水産省では、農業機械化促進法(昭和28年法律第252号)に基づき高性能の機械の導入を中心に農業機械化を促進しており、農業構造改善事業等の各事業において、共同利用施設であるトラクタ、コンバイン等の農業機械を導入するとともにこれを格納する農機具格納庫(1施設につきおおむね30m2 以上、以下「格納庫」といぅ。)を設置する市町村、農業協同組合等の事業主体に対して都道府県が補助金を交付する場合、都道府県に対し補助に要する費用について補助金を交付している。
しかして、昭和52、53両年度に北海道ほか29府県管内の事業主体が農業構造改善事業ほか11事業(注1) で設置した格納庫のうち、1棟当たり床面積100m2 以上の規模のもの281棟、事業費16億8275万余円(国庫補助金相当額8億5407万余円)について調査したところ、格納庫の床面積が導入する機械の長さ及び幅からみて過大な規模となっていると認められるものが多数見受けられた。
すなわち、同省では、補助事業の対象となる格納庫の所要床面積の規模については、わずかに前記農業機械化促進法第5条の2第1項の規定に基づき49年4月30日に公表した「高性能農業機械導入基本方針」の参考資料の中に一部の農業機械について格納所要面積を例示しているにとどまり、具体的に格納庫床面積の算定基準を示していないため、事業主体のなかには、漫然と将来の機械の増加等を見込んだものや、事業計画外の機械の格納を見込んだものなどがあって上記事業で設置した格納庫の床面積は区々となっていて、なかには格納する機械の長さ及び幅に見合う面積の4倍又は5倍程度のものも見受けられる状況である。しかし、国の補助事業として設置する格納庫は、それぞれの補助目的で導入する機械に合致した規模を基準とすべきであって、事業計画外の機械等まで見込んだ規模のものを補助の対象事業として実施するのは適切とは認められない。
一方、同省農事試験場が発表した水田作における農業機械に関する研究によると、農業機械の格納所要面積については、農業機械の長さ及び幅に一定の余裕(トラクタ、コンバインは2m及び0.5m、附属作業機は0.4m及び0.3m)を見込んで算出することにしていることからみて、機械ごとにこの程度の余裕を見込めば保守管理上も支障がないと認められる。
いま、仮に前記281棟の格納庫について農業機械を格納するに当たって必要とする余裕をトラクタ、コンバイン等の大型機械は、長さに2m及び幅に0.5m、また、附属作業機等は同様に0.4m及び0.3mを見込むなどして所要床面積を計算すると、両年度で北海道ほか20県(注2) において108棟約5,700m2 、事業費約2億0700万円(国庫補助金相当額約1億1000万円)が節減できたと認められる。
このような事態を生じているのは、同省において補助事業の対象となる格納庫の規模等について経済的な面からの調査検討が十分でなかったこと及び格納する機械に相応する所要床面積の算定について統一した基準を定めることなく道府県の判断にゆだねていたこと、また、道府県においても補助事業の内容審査に当たって格納庫の規模についての配慮が十分でなく、事業主体が申請した設計図書の面積をそのまま安易に容認していたことなどによると認められる。
ついては、同省においては、今後も農業構造改善事業等各種補助事業による格納庫の設置が多数見込まれるのであるから、その所要床面積について、統一した基準を整備するとともに、都道府県及び事業主体に対しても指導、監督を行い、もって国庫補助金の節減を図る要があると認められる。
(注1) 農業構造改善事業ほか11事業 農業構造改善、同和対策、飼料生産及流通対策、土地利用型集団営農推進特別、麦作集団育成対策、農用地利用増進事業促進対策、高能率生産団地育成、農業就業改善総合対策、山村等振興対策、農村地域整備開発促進、転作促進対策特別、大豆生産振興対策各事業
(注2) 北海道ほか20県 北海道及び青森、岩手、山形、福島、茨城、栃木、埼玉、長野、岐阜、愛知、滋賀、兵庫、岡山、山口、愛媛、福岡、佐賀、熊本、鹿児島、沖縄各県