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  • 昭和53年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第7 農林水産省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

農用地の地目別集団化を伴う土地改良事業の実施地区における水田利用再編奨励補助金の交付について処置を要求したもの


(2) 農用地の地目別集団化を伴う土地改良事業の実施地区における水田利用再編奨励補助金の交付について処置を要求したもの

(昭和54年12月4日付け54検第380号 農林水産大臣あて)

 農林水産省が昭和46年度以降実施している米の生産調整のための対策は、過剰基調にある米の需給を均衡させるとともに、農産物の需要の動向に即した総合的な自給力の向上を図ることなどを目的とするもので、このため、52年度までの稲作転換対策及び水田総合利用対策に引き続き、53年度以降は水田利用再編対策が実施されており、米の生産調整に協力して転作等を実施した農業者に対し水田利用再編奨励補助金(52年度は水田総合利用奨励補助金。以下「奨励補助金」という。)を交付することとしている。そして、その交付に当たっては、水田利用再編対策実施要綱(昭和53年4月6日53農蚕第2379号、農林事務次官依命通達。以下「要綱」という。)等に基づき、当該年度の前年度において水稲の作付けが行われた水田など一定の要件を満たす水田等(以下「交付対象水田」という。)において転作等が実施されていることを市町村が確認したうえで、実施面積、転作作物の種類等に応じた額を支払うことになっており、その交付額は52年度924億5576万余円、53年度2600億2206万余円に上っている。

 一方、同省において従来から実施している土地基盤の整備を図るほ場整備、農地開発事業等の土地改良事業においても、米の生産調整対策の推進のため「昭和46年度農業基盤整備事業における稲作転換の推進について」(昭和46年5月20日46農地A第633号)に始まる毎年度の通達(以下「基盤整備通達」という。)によって、土地改良事業実施地区内の水稲作付面積の減少を図る施策を進めており、水田の一部を畑等に転換させたり、水稲から他作物へ転作させたりするなどしている。この通達においては米の生産調整の実効を確保するため、事業主体に対して、事業実施地区全体に係る転換計画の作成を義務づけているところである。

 そして、土地改良事業の実施に当たっては、従来から、農作業における機械化等の促進を図るなどのため各所に散在する水田、畑等の農用地を、従前に水田又は畑等が比較的多くあった位置にまとめてそれぞれ水田地区、畑作地区としている(以下「農用地の地目別集団化」という。)ところであり、この場合には畑作地区において水田が畑等に地目変換される一方、水田地区においてその見合いの水田が造成されるが、この農用地の地目別集団化のための工事は、上記の水田面積の減少を目的とした転換計画に基づく工事と一体として実施されるのが通例であるため、事業実施の結果、当該転換計画に基づき減少する水田面積及び農道、水路等土地改良施設用地に供せられる水田面積を除き、原則として水田面積の減少は生じないものである。

 しかして、今回、北海道において、土地改良事業により農用地の地目別集団化を行っている道営ほ場整備事業山部第2地区ほか8地区(富良野市ほか2市5町)内の転作等実施面積52年度22,667千余m2 、53年度25,866千余m2 、計48,534千余m2 、奨励補助金額52年度10億9415万余円、53年度16億7700万余円、計27億7115万余円について、その交付状況を調査したところ、富良野市ほか4町(注) の道営ほ場整備事業山部第2地区ほか5地区において次のような事態が見受けられた。

 すなわち、水田から畑等に地目変換されたものについて、その前歴が水田であったことを理由とし、農用地の地目別集団化により水田面積の減少を伴わないで水田から畑等に地目変換されたものも含めて前記の要綱等に定める交付対象水田に該当するとして、農業者からの申請に基づき奨励補助金を交付していた。このため水田から畑等に地目変換されたものに対し奨励補助金を交付したもののうち、水田面積の減少を伴わないもの52年度1,336千余m2 、53年度2,011千余m2 、計3,348千余m2 については、事実上、米の生産調整に寄与しないにもかかわらず奨励補助金が交付されており、これに相当する奨励補助金52年度6707万余円、53年度1億3892万余円、計2億0599万余円が過大に交付される結果となっていた。

 このように、農用地の地目別集団化により水田面積の減少を伴わないで水田から畑等に地目変換されたものについてまで奨励補助金を交付する事態を招いたのは、水稲から他作物への転作を促進して米の生産調整を図ることとした本対策の趣旨に沿わない不合理な結果となっていると認められる。

 このような事態を生じたのは、

(1) 前記の要綱等において、交付対象水田の要件の判定に当たり、当該水田の前歴を基礎として確認することを規定するにとどまり、農用地の地目別集団化により水田面積の減少を伴わずに水田から畑等に地目変換されたものを除外する取扱いを明確にしていないこと

(2) 土地改良事業の実施においても、前記の基盤整備通達に基づき事業主体が作成する転換計画で、水田面積の減少を伴って畑等に地目変換されるものの事業実施地区全体の面積を示すようにしているだけで、その位置及び農業者別内訳等を明らかにするように定めていないこと

(3) 奨励補助金の交付関係事務を行う部局と土地改良事業を実施する部局との連絡調整が十分でないこと
などによるものと認められる。

 ついては、同省において、米の過剰基調の解消及び他作物への転換が緊急な課題であるとして、水田利用再編対策を53年度以降おおむね10年間の長期間にわたって実施することとしているのであるから、上記のような事態をかえりみて、土地改良事業による農用地の地目別集団化により水田面積の減少を伴わずに水田から畑等に地目変換されたものについては奨励補助金の交付対象から除外するよう要綱等関係通達を整備するとともに、当該事業の実施地区に係る都道府県及び市町村に対する指導を十分行い、もって、奨励補助金の適正な交付を図る要があると認められる。

 (注)  富良野市ほか4町 富良野市、沼田町、北竜町、和寒町及び美瑛町