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  • 昭和53年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第7 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

飼料用外国産大麦の政府備蓄について


(1) 飼料用外国産大麦の政府備蓄について

 農林水産省では、昭和50年度に飼料穀物の輸入に関して発生するおそれのある内外の不測の事態に備えるため、飼料穀物の備蓄計画を策定し、その一環として政府所有飼料用大麦備蓄実施要領(昭和50年10月50蓄B第2625号 食糧庁長官 農林省畜産局長 通達)に基づき、同年度から飼料用外国産大麦(以下「大麦」という。)45万tを食糧庁に備蓄させることとし、54年3月末では、その備蓄数量は37万2千余t(買入金額160億0960万余円)に達しているが、この大麦の備蓄について検査したところ、次のとおり、備蓄のあり方が適切でないと認められる点が見受けられた。

 すなわち、上記の飼料穀物の備蓄計画によると、55年度の配合飼料用とうもろこし及びこうりゃんの需要量を同年度の配合飼料生産量1949万余tの60%相当の1175万余tと見込み、その1箇月分に当たる95万tを5箇年計画で備蓄することとしているが、民間の飼料用穀物サイロの収容能力に限度があることなどから、そのうち50万tだけを民間で備蓄させることとし、51年度以降、社団法人配合飼料供給安定機構に輸入したとうもろこし及びこうりゃんの備蓄を実施させており、残り45万tについては、とうもろこし及びこうりゃんと飼料成分がほぼ同等の大麦により、国が民間備蓄を補完することとして、食糧庁が飼料需給安定法(昭和27年法律第356号)に基づいて買い入れている大麦(食糧管理特別会計の輸入飼料勘定で扱うもの)のうちから、畜産実需者に経常的に供給する大麦と区別して備蓄していて、前記の備蓄数量37万2千余tに係る保管料等の経費は総額54億3046万円(うち53年度分23億2280万余円)になっている。

 一方、食糧庁における古米持ち越し量の状況についてみると、上記の備蓄計画策定当時においては114万余tにすぎなかったが、その後毎年の需給の不均衡から持ち越し量が累増し、53年10月末では572万余tとなっていた。そして、このような古米持ち越し量の増加に対し、農林水産省では、米穀がその飼料成分からみて、とうもろこし、こうりゃん及び大麦に比べ総合的に良質であるところから、43年度から49年度までの過剰米処理対策において、45年度から48年度までの間に配合飼料用原料として346万tを処分したのと同様に、上記の572万余tの過剰米の処理についても、53年12月、54年度を初年度とする5箇年計画を策定して過剰米穀を配合飼料用原料等として処分することとしている。 この計画によると、配合飼料用原料として処分する米穀は、50年産米から52年産米のうちの総量231万3千tとなっており、これを54年度に10万t、55年度から57年度までにそれぞれ50万t、58年度に71万3千tと、5箇年間にわたって他の配合飼料の原料に見合う価格(1t当たり22,900円)で処分することとしており(当局の試算によるとこの処分に伴う財政負担額は約8946億円となる。)、57年度末において過剰米穀の残数量は、なお71万3千tとなることとなる。

 したがって、備蓄大麦の今後の買入予定数量7万7千余tのほか、既に備蓄した大麦37万2千余tの全部について品質低下による更新補充を考慮したとしても、備蓄大麦に代えて、飼料用として処分する見込みの過剰米穀を充てることが可能であり、このように処置したとすれば、今後予定している備蓄用外国産大麦7万7千余t(買入金額(注) 29億余万円)の買入れが必要でなくなるばかりでなく、相当額の更新分大麦の買入れ費及び保管料等(54年度予算における更新計画数量12万tのうち、更新済み数量3万3千余tを除く8万6千余tが、上記により全量更新されるとした場合、これの補充に要する買入金額は32億余万円、これに伴う年間保管料等は5億余万円となる。)が節減できることとなるので、今後、過剰米穀が備蓄大麦に代替し得る間においては、過剰米穀をこれに活用し、もって備蓄に伴う財政負担の軽減を図る要があると認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省では、54年11月以降備蓄のため買入れを予定していた大麦については当分の間これを中止することとした。また、今後、品質低下のおそれのある大麦を売り渡した後の補充は原則として行わないこととして、54年11月備蓄大麦を保管している各食糧事務所に通達を発し、備蓄に伴う財政負担の軽減を図るよう処置を講じた。

 (注)  買入金額 54年度の予算単価1t当たり37,840円による。