食糧庁では、昭和42年10月から消費者に主食用米穀を低価で供給する徳用上米制度を実施しており、この徳用上米の原料米穀として北海道食糧事務所ほか45食糧事務所で、53年度中に、51、52両年産水稲うるち玄米5等及び53年産の同3等(従来の5等の改定新等級)を米穀卸売販売業者等に300,462t総額547億0111万余円で売り渡している。
しかして、この徳用上米を消費者に供給する場合の価格(以下「消費者価格」という。)については、毎年開かれる米価審議会に農林水産大臣が諮問し、その答申に基づいて決定されているが、徳用上米用原料米穀を米穀卸売販売業者等に売り渡す場合の政府売渡価格については、食糧庁が消費者価格を基に米穀卸売販売業者等が玄米を搗(とう)精(注1) する際の歩留り、米穀卸売販売業者等の搗精加工費、取扱手数料等を考慮して算定した額により決定しているものである。この売渡価格について検査したところ、次のとおり、売渡価格を算定する際に適用した搗精歩留りが適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記徳用上米用5等玄米(53年産の3等玄米を含む。以下同じ。)の売渡価格についてみると、食糧庁では、47年10月の価格改定に際し、41年から44年までの間に、41年産から43年産までの5等玄米を農産物規格規程(昭和26年農林省告示第133号)で定める完全精米(2等)(注2) に相当する品位に搗精する試験を、財団法人日本穀物検定協会に委託するなどして得た搗精歩留りの平均値から算定した86.3%で徳用上米が生産されるものとして、これに米穀卸売販売業者等の搗精加工費、取扱手数料等の経費を織り込んだ価格(全国平均売渡価格60kg当たり5,899円)としており、その後、これを基に各年度における水稲うるち玄米(1〜4等又は53年産の1〜2等)の売渡価格の 引上幅を参考にするなどして改定を行い、52年9月及び54年2月の価格改定では、徳用上米用5等玄米の全国平均売渡価格をそれぞれ60kg当たり10,872円及び11,329円としていた。
しかしながら、上記搗精試験の成果は、この試験に使用する小型搗精機の種類、性能及 精米技術に差異があることなどにより、米穀の売渡価格の算定の基礎資料として利用するのに十分でないなどのことから、食糧庁では、この種試験を中央で一元化して実施することとし、45年に食糧庁米穀加工技術センター(以下「センター」という。)を設置して毎年各道府県(大阪府及び沖縄県を除く。)産米を近年一般的に使用されている標準的な搗精機により産地別・品種別搗精試験、種類別・等級別搗精試験等を実施している。これについて本院で調査したところ、センターで実施した49年産から52年産までの5等玄米の搗精試験では、徳用上米の品位基準に比べて上位である農産物規格規程に定める完全精米(2等)の品位に搗精する試験をしており、この試験結果をみても、米穀の品質や搗精機の性能が向上したことなどによりその搗精歩留りは売渡価格の算定の基礎としている搗精歩留り86.3%を相当上回っていると認められた。
したがって、上記のようにセンターで多様な搗精試験を実施しているので、その試験結果を考慮して本件徳用上米用5等玄米の搗精歩留りを88.5%とし、かつ、消費者価格をそのままとして売渡価格を修正計算したとすれば、前記全国平均売渡価格は60kg当 たり11,143円及び11,549円となり、売渡額は総額で約560億2600万円となって、これに比べて前記売渡額は約13億2500万円程度低額となっていたと認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、食糧庁では、54年10月に搗精歩留りを88.5%に改めて徳用上米用5等玄米の政府売渡価格を改定し、同年11月から適用する処置を講じた。
(注1) 搗(とう)精 玄米のぬか層を除去して精米を生産する加工処理をいう。
(注2) 完全精米(2等) 完全精米とは、玄米のぬか層を100%除去した精米で、品位によって1等、2等、等外及び規格外がある。