会計名及び科目 | 一般会計 (組織)気象庁 (項)気象官署 |
部局等の名称 | 気象庁 |
役務の概要 | 天気図のトレース及び観測データの編集等を行い印刷版下を作成する作業で、天気図等の種類ごとに1枚又は1組ごとの作業単価を約定し、その実績によって代金が支払われる。 |
契約の相手方 | 財団法人日本気象協会東京本部 |
契約 | 昭和53年4月 随意契約 (単価契約) |
支払額 | 23,918,890円 |
支払 | 昭和53年6月〜54年4月 11回 |
この契約の予定価格(単価)の積算に当たり、作業時間のは握が適切でなかったため、契約単価が割高となり、ひいて約740万円が不経済になったと認められる。
(説明)
この作業は、気象庁で月間の天気図を取りまとめて発行するため、同庁予報部が作成している毎日の天気図5種類(注1)
及び定期的に作成している平均天気図7種類(注2)
(以下これらを「天気図」という。)の原図を透写(原図の上にトレーシングペーパーを当てて、原図どおりになぞること)又は転写(原図を所定の大きさに縮尺して写しかえること)して印刷版下を作成する(以下「トレース」という。)作業と、電子計算機からアウトプットされた天気図に関する観測データを修正し、所定の型式に編集して観測表の印刷版下を作成する作業とからなっていて、いずれも同庁の庁舎内において、同庁職員の常時指導監督のもとに実施しているものである。そして、この作業の契約及び代価の支払状況についてみると、作業に必要な物件等はすべて同庁が支給することとして、作業員の人件費のみを契約の対象としており、作業単価を、天気図については1枚当たり3,200円から21,160円、観測表については1組当たり9,900円と定めて請け負わせ、昭和53年度中に作成した天気図2,092枚、観測表365組に対し、総額23,918,890円を支払っている。
しかして、この請負作業の予定価格(単価)の積算についてみると、
(1) 天気図については、トレース作業単価の算定要素である天気図1枚当たりの作業時間は、昭和33年に、それまで同庁の職員が自らトレース作業を実施していたのを外部に発注することとした際、従来の経験値等を参考にして同庁が算定したものを引き続き採用し、天気図の種類ごとに、平均的な観測地点、数字、記号、等値線等、トレース作業の対象となるものの数にそれぞれのトレース所要時間を乗じて、2.26時間から14.94時間と算出している。そして、この作業時間にそれぞれの年間作成枚数12枚ないし365枚を乗じて年間総作業時間を14,347時間とし、この年間総作業時間を作業員1人当たりの平均年間か働時間1,904時間で除した1日当たり作業人員7.5人に作業配分、連絡調整のための管理要員0.2人を加えて必要人員を7.7人と見込み、その人件費相当額と諸経費とを合わせた年間所要経費を20,317,134円と算出し、これを天気図ごとの上記作業時間に応じてあん分することにより、1枚当たり3,200円から21,163円と算定している。
しかしながら、本件作業の実態についてみると、近年、トレース用紙の紙質が著しく向上したこと、筆記用具として従来の墨汁に代えて速乾性の製図用インクを使用するようになったこと、従来手書きによっていた原図が48年から自動作画機により作成されることになったことに伴い気象データの数字、記号等が鮮明になりトレースが容易になったことなどのため、作業の能率が著しく向上し、天気図1枚当たりの作業時間は、本院の指示により同庁が調査した結果によっても1.05時間から13.46時間となっている状況であるから、これに基づき当局の計算過程に従って1枚当たりの作業単価を計算すると、年間総作業時間は9,339時間、必要作業人員は4.9人となるので、これを5人とし、これに管理要員0.2人を加えた5.2人分の人件費相当額と諸経費とを合わせた年間所要経費は13,863,339円となり、天気図1枚当たりの単価は1,652円から20,448円となる。
なお、現にこの作業は常時5人程度で実施されていた。
(2) 観測表(1日につき3種類の観測表(注3)
が1組となっている。)については、その作成作業単価の算定要素である1組当たりの作業時間は、45年7月にそれまでの手作業に代えて電子計算機を導入した際に算定した7.5時間を採用している。そして、この作業時間に年間作成組数365組を乗じて年間総作業時間を2,737時間とし、この年間総作業時間を作業員1人当たりの平均年間か働時間1,904時間で除して1日当たり作業人員を1.4人と見込み、その人件費相当額と諸経費とを合わせた年間所要経費を3,614,124円と算出し、これを年間作成組数で除して、1組当たり9,901円と算定している。
しかしながら、本件作業の実態についてみると、気象データを打ち出す電子計算機の印字機が改良され、従来手作業で行っていた数字等の修正が機械的に行われることになったことなどのため作業の能率が向上し、観測表1組当たりの作業時間は、本院の指示により同庁が調査した結果によっても4.4時間となっている状況であるから、これに基づき当局の計算過程に従って1組当たりの作業単価を計算すると、年間総作業時間は1,606時間、必要作業人員は0.8人となるので、これを1人とし、この人件費相当額と諸経費とを合わせた年間所要経費は2,581,518円となり、観測表1組当たりの単価は7,072円となる。
なお、現にこの作業は常時1人で実施されていた。
いま、仮に上記各項により本件作業の年間所要経費を計算すると総額16,442,837円となり、本件支払額23,918,890円は、これに比べて約740万円が不経済になっていると認められる。
(注1) 毎日の天気図5種類 アジア地上天気図(9時、21時)、850mbアジア天気図(21時)、700mbアジア天気図(同)及び500mb北半球天気図(同)
(注2) 平均天気図7種類 日本の気温・降水量・日照率図、北半球半旬平均地上天気図、同500mb高度と偏差図、同100mb高度と偏差図、北半球月平均地上気圧と偏差図、同500mb高度と偏差図及び同100mb高度と偏差図
(注3) 3種類の観測表 地上及び船舶観測表、高層観測表(本邦)及び同(国外)