運輸省においては、近年、港湾等の整備を緊急かつ計画的に推進しており、それを実施する地方公共団体に対して毎年多額の国庫補助金を交付しているが、第三、第四両港湾建設局から補助金の交付を受けて島根県ほか4県8市町村が、昭和52、53両年度に施行した江津港港湾改修工事ほか41工事(工事費総額38億4967万円、国庫補助金24億6184万余円)について検査したところ、次のとおり、型わく費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記の42工事はいずれも防波堤、岸壁等を築造する工事であるが、これらの工事においては多量の型わくを使用してセルラーブロック、L型ブロック、逆T型ブロック、方塊(以下「セルラーブロック等」という。)を製作しており、その型わく費(型わく総面積166,372m2 、積算額合計4億2371万余円)の積算についてみると、運輸省港湾局長がこの種工事の積算に当たっての参考資料として各事業主体に通知した「災害査定設計単価表」(以下「単価表」という。)に示されている鉄筋構造物又は無筋構造物の1m2 当たり単価を適用して算定していた。
しかし、上記単価表に示されている型わく費の単価は、鋼製及び合板製の型わくを使用して、その組立て、組外しをすべて人力で施工することとして算定されているものであって、本院が前記各工事の施工の実態を調査したところ、型わくは鋼製のものを使用していて、その作業は製作するブロックの規模に応じてあらかじめ所要の大きさに型わくを連結して大組みにしておき、組立て、組外しともすべてクレーンを使用して、経済的に施工されている状況であり、上記単価表を適用して本件工事費を積算したのは施工の実態に適合していないと認められた。なお、運輸省が直轄で施行している港湾工事におけるセルラーブロック等の型わく費は、クレーンにより組立て、組外しをするものとして設定された「港湾・空港請負工事積算基準」によって適切な積算が行われている。
したがって、前記各工事について施工の実態に即して型わく費を積算したとすれば、積算額を約9400万円(国庫補助金相当額5900万円)程度低減できたと認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、運輸省では、54年11月に各港湾建設局等に対して通達を発し、港湾関係補助事業の審査に当たっては、セルラーブロック等の積算が「港湾・空港請負工事積算基準」によるなど施工の実態に即応した歩掛かりにより算定されているかどうかを特に確認することを指示するとともに、各事業主体に対してこの主旨を周知徹底させる処置を講じた。