ページトップ
  • 昭和53年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第10 郵政省|
  • 特に掲記を要すると認めた事項

逓信病院の運営について


逓信病院の運営について

 郵政省では、職員及びその家族(以下「職員等」という。)の健康を保持するための職域病院として東京逓信病院ほか15逓信病院を設置し、職員等の疾病の診療とともに職員の健康診断、職業病予防対策等健康管理を行っている。
 しかして、これら逓信病院における経常収支の状況についてみると、毎年度いずれも経常支出額は経常収入額を大幅に上回っていて、次表のとおり、昭和53年度の経常収支差額(赤字)は98億8257万余円及び経常収支率は30.3%となっている。

経常収入額 経常支出額 経常収支差額 経常収支率
逓信病院の運営についての図1
千円
4,296,251
(7,390,472)
千円
14,178,823
千円
△9,882,572
(△6,788,351)

30.3
(52.1)

 (注) ( )書きは、決算上収入に計上されていない健康診断料金相当額等を仮定収入として加えた場合の経常収入額、経常収支差額及び経常収支率である。

 上記の経常収支率は、国家公務員及びその家族の医療を行うことを主な目的としている国家公務員共済組合連合会直営病院が102.5%(注1) となっているのに比べて著しく低率となっている。また、逓信病院ごとの経常収支率は、次表のとおりとなっていて、30%未満のものが11病院(68.8%)もある状況である。

14.8%以上
20%未満
20%以上
25%未満
25%以上
30%未満
30%以上
35%未満
35%以上
39.3%未満
平均経常
病院数 病院数 病院数 病院数 病院数 病院数 収支率
3 4 4 3 2 16


30.3

 次に、逓信病院における利用の状況についてみると、職員等以外の者をも含めた利用人員は、ここ数年来延べ170万人前後でおおむね横ばいの傾向にあり、そして、職員等の利用人員は、逐年減少の傾向にあって53年度において延べ112万余人となっている。このことは郵政省共済組合の医療費の支払にも現れており、53年度の逓信病院への支払は、同組合の総支払件数の15.1%、総支払金額の7.7%にすぎない。また、53年度における逓信病院ごとの病床利用率(実か働病床数に対する1日平均入院患者数の割合)は、次表のとおり、職員等以外の者をも含め平均59.4%となっており、国家公務員共済組合連合会直営病院の病床利用率平均86.1%に比べて低率となっている。

32.3%以上
40%未満
40%以上
50%未満
50%以上
60%未満
60%以上
70%未満
70%以上
88.5%未満
平均病床
病院数 病院数 病院数 病院数 病院数 病院数 利用率
2 6 3 3 2 16
59.4

 このような逓信病院の運営の実情は、職域病院としての特殊性を考慮に入れても、なお適切な事態とは認められない。

 逓信病院の運営がこのような事態となっているのは、次のような事情によると認められる。

1 経常収支率が低い要因としては、収入の基本となる診療料金を保険医療機関の診療料金に比べ低廉に設定していること、例えば、健康保険法(大正11年法律第70号)の規定に基づく診療報酬点数表(乙)の診療単価が1点10円であるのに逓信病院では1点8円としていることや入院時医学管理料(注2) 等の診療料金を免除していることが挙げられる。

2 利用状況が低い要因としては、逓信病院は限られた地域にしか設置されておらず、しかも、なかには、診療科目を限っていたり、診療科目に対応するだけの医師等を配置していなかったりして、医療の需要に対応した診療が困難なものもある状況であり、一方、外部の医療機関の新設、充実が近年著しいなどのため、職員等が外部の医療機関を利用する傾向が強くなってきたこと、また、職員等以外の一般患者の診療は原則として行わないことが挙げられる。

 しかして、診療料金の改定については、郵政省共済組合の短期経理(注3) の収支に直接影響するのでその調整を要し、また、職員等の利用を促進することについても医療の需要に応じた医師等の確保や医療体制の整備等に検討を要し、更に利用者の範囲を職員等以外の一般患者にも拡大するために、保険医療機関の指定を受けたり、他省庁の共済組合等と診療契約を結んだりすることについては、法令の改正や地域医療関係団体との調整を要するなどの問題がある。

 一方、病床利用率や経常収支率が極端に低い逓信病院について、その統合を図ることも考えられるが、これも、これらの逓信病院が設置された経緯や職員等に対する福利厚生施策上の配慮との関連など種々困難な問題がある。
 しかしながら、逓信病院の運営に当たり、上記のような諸問題の打開に努めないまま推移すると、国の多額の財政負担が依然として継続することとなる。

(注1)  国家公務員共済組合連合会直営病院の経常収支率102.5%この経常収支率は53年度における国家公務員共済組合連合会直営病院の27病院の経常収支率である。
 なお、これらの病院は、国家公務員だけでなく、部外の一般患者をも診療対象としている。

(注2)  入院時医学管理料 入院期間中の料金の一つであって、病院に収容されている入院患者の病状等を管理するため、入院期間に応じて徴収するものである。

(注3)  共済組合の短期経理 共済組合では、組合員から徴収する組合費等を財源として組合員及びその家族が負傷、疾病により療養を行った場合、健康保険と同様療養費、出産費等を給付(これを「短期給付」という。)しており、この収支に関する経理を短期経理という。