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  • 昭和53年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第12 建設省|
  • 不当事項|
  • 補助金

公共事業関係補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの


(115)−(128) 公共事業関係補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)建設本省 (項)住宅建設事業費 (項)河川等災害復旧事業費 (項)沖縄開発事業費
道路整備特別会計 (項)道路事業費 (項)北海道道路事業費 (項)街路事業費
治水特別会計(治水勘定) (項)砂防事業費
部局等の名称 北海道、茨城、新潟、長野、愛知、和歌山、徳島、愛媛、高知、福岡、沖縄各県
補助の根拠 公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和26年法律第97号)、道路法(昭和27年法律第180号)、下水道法(昭和33年法律第79号)等
事業主体 道県5 市町村8 計13事業主体
補助事業 北海道山越郡八雲町道道八雲熊石線道路災害防除施設新設等14事業
上記に対する国庫補助金交付額の合計 2,710,803,162円

 上記の14補助事業において、工事の設計又は工事費の積算が適切でなかったり、工事の施工が設計と相違していたり、補助金を不正に受給したりしていて国庫補助金214,385,794円が不当と認められる。このうち、198,864,796円は一般会計の分(8事業)、13,580,332円は道路整備特別会計の分(5事業)、1,940,666円は治水特別会計の分(1事業)である。これを道県別に掲げると、別表 のとおりである。
 これは、北海道ほか34都府県で全国の事業箇所118,813のうち8.8%に当たる10,410(事業費666,413,147,207円、国庫補助金392,434,145,601円)について検査した結果である。

(説明)
 建設省所管の公共事業関係補助事業は、地方公共団体等が事業主体となって施行するもので、一般会計では、公営住宅、下水道施設、都市公園等の建設並びに公共土木施設が台風等で被災したものについての災害復旧の工事等に要する費用について、道路整備特別会計では、国道及び地方道の新設、改良の工事等に要する費用について、また、治水特別会計では、河川の改修及び砂防ダムの新設の工事等に要する費用について、それぞれの法律等で定められた率により補助金を交付している。
 しかして、これら補助事業の実施及び経理について検査したところ、前記の13事業主体が実施した公共土木施設の新設、改良及び災害復旧の公共事業のうち13事業は設計、積算又は施工が適切でないと認められ、また、1事業は国庫補助金を不正に受給していた。
 いま、これらについて不当の態様別に示すと次のとおりである。

工事の設計又は工事費の積算が適切でないもの
9事業 不当と認めた国庫補助金 32,702,618円
工事の施工が設計と相違しているもの
4事業 不当と認めた国庫補助金 11,343,176円
国庫補助金を不正に受給しているもの
1事業 不当と認めた国庫補助金 170,340,000円

(別表)

道県名 事業 事業主体 事業費 左に対する国庫補助金 不当と認めた事業費 不当と認めた国庫補助金 摘要

(115)

北海道

山越郡八雲町道道八雲熊石線道路災害防除施設新設

北海道
千円
23,175
千円
11,587
千円
10,896
千円
5,448

工事の施工不良
 この工事は、道道八雲熊石線の八雲町地内での落石による災害を防止するため、昭和53年度に道路の山側斜面にコンクリート吹き付け992m2 等を施工したもので、設計書、図面及び仕様書によると、コンクリート吹き付けは、地山の軟岩を切り崩(くず)して整正した後、湧(ゆう)水の著しい箇所については防水シート98m2 を張ったうえ、全面にわたり、地山から適当なコンクリート被覆厚を確保するように径9mmの鉄筋を格子状(1m×1m)に配筋し、この上に径3.2mmの金網(網目5cm×5cm)を張り渡し、この鉄筋及び金網をアンカーボルトで地山に固定させ、更に、径6cm、長さ25cmの水抜きパイプを取り付けたうえ、コンクリートを地山から厚さ20cmに吹き付けることになっている。

 しかるに、コンクリート吹き付けは、平均厚13cm程度(最小厚7cm)で施工されていて、設計に比べて著しく不足しているばかりでなく、地山の整正や湧水処理も十分に行わず、コンクリート吹き付けのはね返りの骨材等を除去しないまま施工したため、鉄筋及び金網が吹き付けコンクリートから遊離し、地山と吹き付けコンクリートの間に空げきを生じているほか、鉄筋及び金網の張り付け位置が地山に近過ぎたり、水抜きパイプは15cmから20cm程度の短いものを急角度に取り付けているためパイプの先端が地山に接していないばかりでなく、パイプにコンクリートが詰まっていたりしていて、施工が著しく粗雑となっており、吹き付けコンクリートの随所にき裂が生じている状況であった。

(116) 茨城県 那珂郡那珂町町道福田孫目線道路改良 那珂町 24,699 16,466 1,759 1,172 工事の設計過大
 この工事は、那珂町福田から勝田市孫目までの間の町道延長1,859mを改良する工事(事業計画昭和47年度から56年度)の一環として、53年度に道路延長363m、幅員16m(車道部分9m)の路床、路盤の築造及び排水溝(こう)の設置を施行したもので、設計によると、うち路床面積3,484m2 分の路床入替工については、在来の地盤を取り除いて山砂に置き換え、山砂は厚さ50cmに仕上がるように敷きならして締め固めることとし、その設計数量については締め固め後の仕上がり数量1,742m3 を見込んだほか、更に、この数量に締め固めによる減量分として割増率1.35を乗じて2,350m3 と算出していた。そして、これに県の標準歩掛かりによって作成した路床入替工1m3 当たりの単価を乗じて路床入替工費を6,236,900円と算定していた。

 しかし、路床入替工の設計数量は締め固め後の仕上がり数量とするのが通例であり、本件の場合においてもこれを前提として県の標準歩掛かりには締め固めに伴い必要となる材料費、工費の割増しが見込まれているのであるから、設計数量に殊更割増分を見込む要はないものであって、路床入替工の正当な設計数量は1,742m3 であり、608m3 が過大に計上されていると認められる。

(117) 新潟県 中頸城郡清里村村道棚田北野線53年災害復旧 清里村 29,914 20,341 2,089 1,420 工事費の積算過大
 この工事は、昭和53年4月の融雪による地すべりで被害を受けた清里村地内の村道棚田北野線の延長144m区間を復旧するため、53年度において、鋼管抑止ぐい及び地下排水ボーリング工等を施工したもので、工事費の積算についてみると、地山に横方向のボーリングをして、孔あけ加工した内径40mmの集水管(硬質塩化ビニル管)をそう入する地下排水ボーリング工のうち延長540mの集水管の工費(材料費及び孔あけ、継ぎ手間等の労務費)については、1m当たり単価を5,201円として総額2,808,540円と算定していた。

 しかし、この単価の算定において、10m当たりで計算しながらこれをそのまま1m当たりの単価としたものであり、しかも、上記の計算の際、計算の要素となる集水管の継ぎ手間の労務費は466円が正当であるのに、誤って746円としていた。
 したがって、集水管の工費の正しい1mた当り単価は492円、総額は265,734円となる。
 いま、これにより工事費を修正計算すると、総額27,824,077円となり、本件工事費はこれに比べて約2,089,000円割高となっていると認められる。

(118) 長野県 中野市一般国道292号道路改良 長野県 51,102 38,326 2,136 1,602 工事費の積算過大
 この工事は、一般国道292号の改良の一環として、昭和53年度に中野市内の道路延長750mの区間において、土留め擁壁及び側溝(こう)等を施工したもので、工事費の積算についてみると、うち側溝費については、路側盛土の法(のり)じりに施工する側溝延長696m(以下「A側溝」という。)及び路側の土留め擁壁の前面に施工する側溝延長727m(以下「B側溝」という。)計1,423mは、鉄筋コンクリートU型側溝を使用しその下部に基礎砂利を敷きならすこととして、1m当たり単価を鉄筋コンクリートU型側溝の材料費及びすえ付け費は2,409円、基礎砂利の所要量を0.6mとしてその材料費及び敷ならし費は2,531円計4,940円として総額で7,033,572円と算定していた。

 しかし、設計書及び図面によると、基礎砂利の所要量は、A側溝については厚さ15cm、幅40cmであるから1m当たりでは0.06m3 、B側溝については、幅は同じく40cmであるが、この砂利基礎の厚さで側溝の排水勾(こう)配を調整することとしているためその厚さは一律でなく、平均21.4cmとなっているから1m当たりでは平均0.0856m3 となり、また、このB側溝の正しい延長は752mである。

 したがって、これらの正しい数量によって側溝費を計算すると、1m当たりの単価はA側溝は2,662円、B側溝は2,770円、側溝費の総額は3,938,274円となる。
 いま、仮にこれにより工事費を修正計算すると、積算不足となっていた水替費等を考慮しても総額48,965,660円となり、本件工事費はこれに比べて約2,136,000円割高となっていると認められる。

(119) 愛知県 東加茂郡下山村猫田川通常砂防 愛知県 59,481 39,654 2,911 1,940 工事の設計過大
 この工事は、矢作川水系の支川猫田川の荒廃による土砂流出の危険を防止するため、下山村阿蔵地内に砂防えん堤高さ12m、長さ80mを築造することとし、そのうち袖部分等を除く堤体本体を昭和52年度に施工したもので、このえん堤は設計書及び図面によると、堤体を、わん曲する河川の状況に併せて左岸の取付部から47mのところで上流側に55度屈折させ、更に33m延ばして右岸に取り付けることとしている。そして、52年度に施工する堤体本体の基礎掘削土量及びコンクリート所要量については、堤体が屈折しているのに真すぐなものとして展開した正面図等により、基礎掘削3,942m3 、コンクリート2,737m3 と計算して、これにより工事費を算定していた。

 しかし、この堤体は、上記のとおり屈折しているものであるから、これを真すぐなものとして設計数量を算定したのは誤りであって、屈折している堤体として正確に計算すると、基礎掘削3,593m3 、コンクリート2,603m3 となり、それぞれ348m3 、133m3 が過大となっている。

(参考図)

(参考図)

 

(120) 和歌山県 有田市小集落地区改良 有田市 3,603,429 2,402,286 255,510 170,340 補助金の不正受給
 この事業は、有田市が昭和49年度から56年度(予定)までの間に不良住宅地区の環境の整備改善を図る事業の一環として施行したもので、49年度から52年度までの間に改良住宅、道路、緑地等の用地54,220m2 の取得を2,468,607,000円、道路、緑地、下水等の施設の整備を866,703,000円、不良住宅62戸の買収を268,119,000円計3,603,429,000円の事業費で実施したこととして国庫補助金2,402,286,000円の交付を受けていた。

 しかし、実際は、用地の取得は52,479m2 2,241,438,000円、施設の整備は866,220,000円、不良住宅62戸の買収は240,261,000円計3,347,919,000円の事業費で実施しており、これに相当する国庫補助金は2,231,946,000円にすぎないのに、用地の取得において買収面積や価格を水増ししたものを事業に要する経費とした偽りの補助申請をしたり、用地の取得、施設の整備及び不良住宅の買収において補助申請書記載の事業費を下回った額で契約しているのに申請どおりの額で契約したとしたりなどして補助金の交付を受けており、結局、用地の取得で151,446,000円、不良住宅の買収で18,572,000円、施設の整備で322,000円計170,340,000円の国庫補助金を不正に受給していたものである。

(121) 徳島県 三好郡三野町井ノ久保谷川50年災害復旧 三野町 6,900 6,624 570 547 工事費の過大支払
 この工事は、昭和50年8月の台風6号により被害を受けた吉野川水系の支川井ノ久保谷川の右岸延長135mの区間を復旧するため、52年度に練り積みコンクリートブロック護岸延長125m(375m2 )を施工したもので、設計書及び図面によると、この護岸は、土石532m3 の掘削、残土428m3 の処理等を行って、被災前の護岸の位置に法(のり)長3mで施工することとしていた。

 しかるに、施工に当たり、横断測量を行わないで施工したなどのため、護岸が設計に比べて平均100cm(最大220cm)河道内に張り出し、また、天端(ば)の高さも平均53cm(最大130cm)高くなっていて設計と相違して施工した結果、実際には掘削354m3 、残土処理89m3 等を施工したにすぎないのに、これを設計どおり施工したこととして工事費を支払ったため、570,000円が過大に支払われていた。
 なお、この河川は上記工事の施行後、たまたま河床が上がったため、護岸の根入れの深さは現在ほぼ設計に近い状況となっており、また、河川断面からみて現状でも被災時の流量程度は流下させることができる状況である。

(122) 愛媛県 北宇和郡日吉村一般国道197号道路災害防除施設新設 愛媛県 13,640 6,820 8,010 4,005 工事の施工不良
 この工事は、一般国道197号の日吉村地内での落石による災害を防止するため、昭和52年度にポケット式ロックネット2,588m2 を道路の山側斜面に新設したもので、設計書及び図面によると、斜面の上部に岩用のルーフアンカーボルト62本を4m間隔で設置し、その下部約10mの位置にロックネットをポケット状にするためのポケット支柱62本を建て込み、それぞれの頭部に径14mmのワイヤロープを取り付け、ポケット支柱から下部のワイヤロープに亜鉛メッキした径3.2mmの金網を張り渡すこととしている。そして、斜面の上部に設置することとしているルーフアンカーボルトは、岩盤を深さ90cm削孔し、この中にそう入して、その先端に取り付けられているコーンとくさびで岩盤に定着させることとしており、また、ポケット支柱の建込みは、支柱1本当たり2本のルーフアンカーボルトを上記と同様の方法により岩盤に定着させ、これにポケット支柱を取り付けることとしている。

(参考図)

(参考図)

 しかるに、前記ポケット式ロックネット2,588m2 のうち1,454m2 に設置したルーフアンカーボルトについてみると、斜面の上部に設置した40本のうち36本は、岩盤でないれき混じり土に打ち込まれており、しかも、このうち23本はルーフアンカーボルトの先端部に取り付けられているコーン及びくさびを取りはずして打ち込んでいるため、容易に引き抜くことができる状況であり、また、ポケット支柱40本を固定するため設置した80本のうち28本は、先端から10cmないし50cm程度が岩盤にそう入されているにすぎず、残余はれき混じり土にそう入されているため、これらのルーフアンカーボルト及びポケット支柱に支えられているポケット式ロックネット1,454m2 は極めて不安定な状態となっていた。
(123) 高知県 吾川郡伊野町郷谷川50年災害復旧 伊野町 86,780 84,697 1,376 1,342 工事の施工不良
 この工事は、昭和50年8月の台風5号及び6号により被害を受けた仁淀川水系の支川郷谷川の延長391mの区間を復旧するため、52、53両年度に床固め(本堤、垂直壁、側壁及び水たたき)6基(1号から6号)及び練り積みコンクリートブロック護岸延長615m等を施工したもので、設計書及び仕様書によると、床固めのコンクリート1,638m3 は、圧縮強度160kg/cm2 を基準とし、セメントの使用量を1m3 当たり240kgとして、現場練りにより施

(参考図)

(参考図)

工することとしていた。
 しかるに、このうち、3号床固めの垂直壁の水通し天端(ば)から下部0.6mの部分7m3 、4号床固めの垂直壁の水通し天端から下部の2.0m部分24m3 及び5号床固めの水たたきの本堤側4m分31m3 計62m3 のコンクリートは、打設に当たり、締め固め及び硬化するまでの間の手当が十分でなかったり、セメントの使用量が少なかったりしたため、表面が粗悪で多数のき裂が生じており、また、採取した試料の圧縮強度も93kg/cm2 から132kg/cm2 と低いものとなっていて、施工が著しく不良となっている。
(124) 福岡県 久留米市・三井郡北野町県道久留米筑紫野線神代橋橋りよう整備 福岡県 22,800 15,200 2,029 1,352 工事費の積算過大
 この工事は、久留米市及び北野町境の筑後川に架かる県道久留米筑紫野線の神代(くましろ)橋に並列して歩道橋(橋長385m、幅員2.5m)を新設するため、橋脚13基のうち4基を昭和52年度に施工(9基については51年度までに施工済)したものである。

 しかして、設計書及び図面によると、橋脚は、河床に鋼管(径1.5m)を打ち込みその頭部に橋げたをすえ付けるための鉄筋コンクリートの受け台を施工するもので、この橋脚工事に必要な支保工及び足場は、H形鋼ぐいの上にすえ付けたさん橋の上に組み立てることとし、支保工費及び足場費の積算については、1基当たりの支保工数量を497.0空m3 から559.3空m3 、4基分で2,117.0空m3 、足場数量を50.4m2 から62.2m2 、4基分で225.7m2 とし、これに1空m3 当たり又は1m2 当たりの単価1,040円又は790円を乗じて支保工費を2,201,680円、足場費を178,303円と算定していた。

 しかし、上記の支保工及び足場の数量を算出するに当たり、支保工及び足場の高さを誤って高くしていたり、足場の長さを誤って長くしていたりしたまま計算しているばかりでなく、これらの数量を設計書に転記する際支保工と足場の数量を取り違えて計上し、これにより工事費を積算していた。これらの支保工及び足場の数量を設計書及び図面により計算すると、1基当たり支保工数量は44.8空m3 から55.3空m3 、4基分で200.7空m3 、足場数量は123.1m2 から133.4m2 、4基分で514.2m2 となり、その支保工費及び足場費はそれぞれ4基分で208,728円、349,656円となる。

 いま、仮にこれらにより工事費を修正計算すると、積算不足となっていた重量物運搬費等を考慮しても総額20,770,496円となり、本件工事費はこれに比べて約2,029,000円割高となっていると認められる。

(125) 沖縄県 那覇市末吉公園南側広場造成 那覇市 84,000 42,000 20,093 10,046 工事の設計不適切
 この工事は、那覇市末吉地内の丘陵地に総面積18.7haの総合公園を整備する事業(事業計画昭和52年度から56年度)の一環として、52年度において同地域内の南側の傾斜地約1.5haに展望台等の敷地造成のための盛土42,682m3 緑化ウォール(注1) の築造111m、樹木の植栽12,719本等を施行したものである。そして、設計に当たっては、景観上、人工的なコンクリート構造物を築造することは好ましくないとして、一部を除きほとんど盛土だけで施工することとしており、その盛土については、設計書、図面及び仕様書により、盛土材料は粘性土を使用して最大盛土高さを10m、斜面の法勾(のりこう)配(注2) を2割として施工している。また、盛土造成後、排水路としてコンクリート排水溝(こう)延長446m及び素掘りの排水溝延長530mを布設していた。

 しかし、この公園用地は傾斜が比較的急で、地下水位が高く一部に湧(ゆう)水が見受けられ、粘土質の土壌が全体をおおっているもので、このような傾斜地に粘性土による大規模な盛土を施工する場合は、水を含むことにより盛土斜面の安定性が低くなる場合が多いので、背後地からの地下水及び雨水が浸透することを考慮し、暗きょを布設して含水比を低め植物により法面を保護するとともにコンクリート排水溝を整備して盛土の安定性を確保する設計とすべきであったと認められる。

 しかるに、このような配慮が十分でなかったなどのため、盛土に地下水等が浸透して粘着力の著しい低下をひき起こすに至り、工事しゅん功後10箇月を経た54年2月には地すべりを生じ斜面約0.5haの盛土14,042m3 が崩落し、これに伴い緑化ウォール30m及び樹木781本が倒壊しており、崩落部分の各所に湧水が見受けられる状況で、造成工事としての目的を達していない。

(注1)  緑化ウォール 法面緑化と土留め工を兼ねた中空のコンクリートブロックの空積み擁壁
(注2)
 法勾(のりこう)配 斜面の傾斜の度合いをいい、土木用語では、通常斜面を斜辺とする直角三角形の縦の辺の長さに対する横の辺の長さの比で表わされ、例えば、高さ1mに対して水平方向の長さが2mの場合は2割と呼ばれる。

(126) 沖縄県 石垣市12号幹線都市下水路新設 石垣市 32,000 12,800 32,000 12,800 工事の設計不適切
 この工事は、石垣市の都市計画決定区域のうち16.1haの地域の雨水を排水するため、昭和52年度から54年度までの間に施行する石垣市新川地内の12号幹線都市下水路工事(総延長500m)の一環として、52年度に築造したボックスカルバート(注1) の下水路延長114mに接続してその上流部に同様の構造の下水路延長206mを53年度において築造するものである。そして、本件下水路はその大部分が将来計画されている都市計画街路の直下に位置するものである。

 しかして、本件下水路の設計についてみると、52年度に策定した全体設計においては途中1箇所に集水ますを設置し、全延長について縦断勾(こう)配1/1000で施工することになっていて、52年度分は1/1000で施工していたが、53年度分の施工に当たって、同年度施工起点から上流部の184.5mまでの区間についてはボックスカルバート(内空断面幅3m、高さ1.2m)を3.2/1000の勾配で施工することとし、集水ますの箇所(延長3m)をはさんでその上流部の18.5mまでの区間についてはボックスカルバート(内空断面幅2m、高さ1.2m)を1/1000の勾配で施工することとしていた。
 このように、下水路の縦断を一定勾配とせず、全延長のうちの中間部分の勾配が急になるような設計としたのは、次の理由によるものである。

 すなわち、52年度分の施工時に設計図面の表示を誤って、最下流部付近に設けた標高基準点(注2) の地盤高を+3.185mとすべきところを、54年度施工予定の最上流部付近に設けた標高基準点の地盤高である+2.765mとしたため、52年度分については設計に比べて42cm浅い位置で下水路を築造していたが、53年度分の施工に当たってこの誤りに気付いた際、反対に、52年度分の施工が設計より40cm深い位置にあると誤認した。そこで、53年度施工延長の集水ますの地点までの184.5m区間については当初設計より急勾配の3.2/1000に変更しなければ、全体設計において計画した施工位置に修正できないと考えたことによるものである。そして、実際の施工は設計より42cm浅い位置のまま3.2/1000の勾配により工事を進めていた。

 しかしながら、前記のように施工位置を誤認し、実際の施工を設計より浅い位置のまま3.2/1000の勾配により工事を進めることは、将来下水路の上部に施行することが予定されている都市計画街路の路面より高くなる部分が生じることになるものである。このことについては、市当局においても集水ます付近における工事を施行する時点において、計画高に比べて相当高くなることに気付いていながら、その後、集水ますの上流部18.5m区間について下水路の断面を設計変更(内空断面幅2.5m、高さ0.8m)して集水ますの天端(ば)から0.4mの段差を設けて1/1000勾配により施工することにとどめていた。この結果、既に施工した下水路については集水ますを含め下流側86.5mの間で都市計画街路の路面に下水路の上部が最高18cm露出することとなるばかりか、54年度施工予定の上流部延長180mのうち120mの間についても最高10cm露出することになっている。
 したがって、このままでは、今後の下水路新設工事及び将来の都市計画街路築造工事の施行に重大な支障を来すこととなり、幹線都市下水工事路としての目的を達していないと認められる。

(注1)  ボックスカルバート 鉄筋コンクリートで築造した断面が函(はこ)形の構造物。道路の路面下部に布設する水路や道路として設置されることが多い。

(注2)  標高基準点 地盤及び構造物等の標高を測量する場合の基準となる標高点で、測量に先立って標高が明確な構造物等を基準として現場付近に設置しておく。

公共事業関係補助事業の実施及び経理が不当と認められるものの図1

(127) 沖縄県 島尻郡南風原村兼城1号都市下水路新設(52年度) 南風原村 20,000 8,000 3,505 1,402 工事の設計過大
(128)  同 同(53年度) 15,000 6,000 2,414 965
 この両工事は、南風原(はえばる)村都市下水路事業の一環として、南風原村兼城地区内に兼城1号都市下水路延長621mを新設するため、昭和52、53両年度に三面張りコンクリート水路延長597m及びボックスカルバート水路延長24mを施工したものである。
 しかして、このうち、三面張りコンクリート水路については、設計書及び図面によると、通水断面積を1.3m2 とし、側壁は天端(ば)及び下部の幅0.31m、直高1.3m、法勾(のりこう)配3分とし、側壁下部に施工する基礎コンクリートは幅0.48m、高さ0.28mとし、また、底張りはこの基礎コンクリートの上部一帯に敷き並べたぐり石の上にコンクリート厚さ0.15m、幅1.0mとし、これらに使用するコンクリート総所要量を757m3 、施工に伴う掘削土量を1,807m3 と設計のうえ、施工している。

 しかし、本件水路のように断面の小さな三面張りコンクリート水路を施工する場合には、掘削地盤面にぐり石を敷き並べ、その上部に底張りコンクリートと擁壁構造による側壁コンクリートとを設置するのが通例と認められる。
 いま、このタイプにより前記水路の通水断面と同一の断面を確保するように設計したとすれば、安全性を考慮し側壁を重力式の擁壁構造としてその規模を若干大きくしたとしても、基礎コンクリートは不要となってコンクリート所要量が615m3 で足りるばかりでなく、掘削土量も1,473m3 で足りることとなって、経済的に施工することができたと認められる。

公共事業関係補助事業の実施及び経理が不当と認められるものの図2

4,072,920 2,710,803 345,298 214,385