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  • 昭和53年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第12 建設省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

特定多目的ダム等建設工事の予定価格の積算について


(1) 特定多目的ダム等建設工事の予定価格の積算について

 建設省では、河川の流水を水系ごとに総合的に管理することによって洪水を調節し、上水、発電等の利水を図ることを目的とする特定多目的ダム等の建設事業を多数施行している。
 しかして、建設省所管の直轄事業及び補助事業で施行している特定多目的コンクリートダム及び多目的コンクリートダムについては、建設省が昭和49年5月にダム建設工事の積算に適用するために制定した「コンクリートダム積算資料」(以下「積算資料」という。)を基として工事費を積算しているが、53年度にダム本体工事を施行している建設省直轄の特定多目的コンクリートダムのうち川治ダムほか1ダム(注1) (工事費総額242億2250万円)及び補助事業で施行している多目的コンクリートダムのうち綱取ダムほか4ダム(注2) (工事費総額310億2510万余円、うち建設省所管分国庫補助金相当額194億7086万余円)について検査したところ、次のとおり、コンクリートプラント(注3) (以下「プラント」という。)の運転労務費、コンクリート骨材用岩石の掘削の爆薬費及びその小割費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

(1) 上記7ダムにおいては、10万m3 以上の堤体積を要する大規模建設工事のため、施工現場にプラントを設置して、ダム本体等に必要なコンクリートを製造することとしているが、このプラントの運転には骨材の受入れ等に当たる作業員と機械の操作に当たる運転員とが従事しており、これらの運転労務費の積算(コンクリート総量約200万m3 、積算額3億3500万円)についてみると、積算資料の歩掛かりを適用してプラントの運転に必要な編成人員を7人とし、これにより運転労務費を算定していた。
 しかしながら、各プラントの運転の実態について調査したところ、近年、電子制御方式などの導入により性能が向上し、操作室において集中制御ができるプラントを使用していて、その編成人員は積算人員を相当程度下回っており、この施工の実態に適合した編成人員によって積算したとすれば、積算額を約1億1200万円(直轄事業分2700万円及び補助事業分8500万円(うち建設省所管分国庫補助金相当額5300万円)) 程度低減できたと認められた。

(2) 上記7ダムのうち2ダムにおいては、ダムコンクリート用の骨材を原石山から採取することとしているが、原石山でベンチカット工法(注4) により岩石を掘削する際に使用するダイナマイト等の爆薬費の積算(岩石総量約61万m3 、積算額8800万円)についてみると、積算資料に定めている岩石掘削歩掛かりを適用してダイナマイト6に対しアンホ(硝安油剤爆薬)4の割合で使用することとして算定していた。
 しかしながら、爆破掘削の実態について調査したところ、近年、アンホの取扱いが容易になったこと及び火薬取扱技術者がその取扱いに習熟してきたことなどにより、 アンホの使用割合が大幅に増加しており、この施工の実態に適合した割合により積算したとすれば、積算額を約3200万円(直轄事業分2400万円及び補助事業分800万円(うち建設省所管分国庫補助金相当額400万円))程度低減できたと認められた。

(3) 上記7ダムのうち5ダムにおいては、ダムコンクリート用の骨材を原石山から採取の際、岩石の爆破掘削によって発生する径1m以上の岩石を小割りしているが、その小割費の積算(岩石総量約18万m3 、積算額4億1200万円)についてみると、積算資料に定めているダイナマイトを使用して小割りする人力施工の歩掛かりを適用して算定していた。
 しかしながら、小割り作業の実態について調査したところ、近年、騒音が低く、しかも能率的かつ経済的な油圧式ブレーカが普及しているため、その作業はダイナマイトを使用するのは一部分にすぎず、大部分をブレーカによる機械施工で実施しており、この施工の実態に適合した方法によって積算したとすれば、積算額を約4200万円(直轄事業分2500万円及び補助事業分1700万円(うち建設省所管分国庫補助金相当額1000万円))程度低減できたと認められた。

 上記各項についての本院の指摘に基づき、建設省では、54年10月に積算資料を改正して、プラントの運転の編成人員及びダイナマイトとアンホの使用割合については施工の実態に合ったものとし、また、岩石の小割りについては機械による歩掛かり及び機械施工と人力施工の割合を定めて施工の実態に合ったものとし、各地方建設局等に対して通知し、同年11月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講ずるとともに、各道府県に対しても積算資料の改正内容について通知することにより、積算の適正化が期せられることになった。

(注1)  川治ダムほか1ダム 川治ダム(関東地方建設局)、大渡ダム(四国地方建設局)

(注2)  綱取ダムほか4ダム 綱取ダム(岩手県)、東山ダム(福島県)、桐生川ダム(群馬県)、刈谷田川ダム(新潟県)及び山佐ダム(島根県)

(注3)  コンクリートプラント コンクリートの材料(通常の場合、セメント、砂、砂利及び水)の貯蔵設備、計量装置、混和装置を組み合せ設置した生コンクリートを製造する設備

(注4)  ベンチカット工法 岩盤の斜面を階段状に掘削する工法