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  • 昭和53年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第1 日本専売公社|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

建物等の取壊し工事費の積算について処置を要求したもの


(1) 建物等の取壊し工事費の積算について処置を要求したもの

(昭和54年12月3日付け54検第376号 日本専売公社総裁あて)

 日本専売公社では、工場施設の近代化、合理化を図ることなどを目的として、従来から老朽化した工場等の施設を更新してきており、これに伴い旧施設の工場棟、事務所棟及び倉庫棟等の取壊し工事を施行しているが、これらの工事費の積算に当たっては、コンクリートの取壊し作業量が40m3 以上のものについては原則としてスチールボール工法によることとして積算している。この場合の労務費、機械経費及び搬出処分費等については、同公社が昭和44年3月に制定した「日本専売公社建築工事積算基準」(以下「積算基準」という。)を適用して工事費を算定している。

 しかして、53年度施行の九州支社の旧鹿児島原料工場棟等の取壊し工事(直接工事費積算額26,808,600円)及び東北支社の仙台工場A1事務所棟等の取壊し工事(直接工事費積算額17,633,755円)について検査したところ、両工事とも予定価格はスチールボール工法で積算していたが、実際には請負人はスチールボール工法に比べ施工に人力を多く要することなどから工事費が著しく割高となるコンクリートブレーカ工法等により施工していたことからみて、スチールボール工法の積算基準が工事の実態に適合していないと認められた。上記の事情等にかんがみ、工事費の積算も工事の施行もともにスチールボール工法によって行った51年度施行の関東支社の旧製造部A4事務所等の取壊し工事(直接工事費積算額58,646,434円)について作業の実態を調査し、積算基準の適合性について検討したところ、次のとおり、適当でない点が見受けられた。

1 コンクリート建物等の取壊し手間については、積算基準によりスチールボール工法により取り壊したコンクリート塊を小割りする作業を要するとしてコンクリートブレーカだけで取壊し作業を行う場合のはつり工の2分の1の労務歩掛かりを見込み、これに、コンクリートブレーカ操作の補助及び取壊し材の片付け、小運搬、散水、鉄筋の切断・引出し等の作業に必要であるとして普通作業員の労務歩掛かりをコンクリートブレーカ工法による場合の3分の1を見込み積算していた。

 しかしながら、上記工事における取壊しについてみると、取壊し作業は広大な工場の敷地内で施工されるもので、周辺の建物との距離も相当離れている作業し易い現場条件となっていて、能率よく施工できたものと認められた。したがって、はつり工の労務費については、柱、はり等のコンクリートはスチールボールによる機械作業で小割りを要しない15cm程度以下に破砕することが可能であることなどから計上する要はなく、これに伴い普通作業員の労務費についてもコンクリートブレーカ操作の補助は不必要となり、取壊し材の片付け、小運搬については、別途にトラクタショベル等による集積、積込み、運搬の経費を見込んでいるのであるから、これを計上する要はなかったものである。

2 スチールボールを装備したクローラクレーンの機械経費については、積算基準により作業能力を1日当たり鉄筋コンクリート30m3 とし、無筋コンクリートはこれを2倍とするなどして、クローラクレーンの機械損料、運転労務費等を算定していた。

 しかしながら、この工事の実績についてみると、1日当たり鉄筋コンクリート約50m3 程度を取り壊していたのであるから、この程度の作業能力とすべきであったと認められる。

3 コンクリートの破砕くずを処分する搬出処分費のうち、トラクタショベル及びダンプトラックの機械損料、運転労務費等については、積算基準によりバケット容量1.1m3 のトラクタショベルにより集積と積込みを行い、8tダンプトラックにより運搬することとし、1時間当たりの作業能力を、集積については29m3 、積込みについては15m3 、運搬については0.93m3 として算定していた。

 しかしながら、近年、大型の機械が普及してきており、この工事においても前記1のとおりの作業条件から1.5m3 のトラクタショベルを使用しており、このため集積は1時間当たり48m3 、積込みは27m3 施工することができたものであり、また、運搬は11tダンプトラックを使用したもので、1時間当たり1.67m3 を施工することができたものである。

 いま、仮に前記工事について施工の実態に即した積算をしたとすれば、積算額を約2840万円低減できたと認められる。

 しかして、同公社のスチールボール工法の積算基準はこのように施工の実態に沿わないものであって、このため53年度施行の前記両工事の場合もスチールボール工法に比べて著しく割高なコンクリートブレーカ工法等により施工していながら、請負人は支障なく契約を履行している状況であり、この積算基準は適切でないと認められる。

 このような事態となっているのは、既往年度から取壊し工事の実績があるにもかかわらず、この実態を十分に調査検討しないで積算基準に反映させなかったことなどによるものと認められる。

 ついては、同公社においては、今後も引き続き取壊し工事を実施することが見込まれ、前記関東支社の取壊し工事のように工場棟等の建物が広大な場所にあり容易に取壊しが施工できるような条件の良い現場においてスチールボール工法により施工することが多いと思料されるから、速やかに工事の実情を調査検討し、実態に即した積算ができるよう積算基準の整備を図り、もって予定価格の適正を期する要があると認められる。