(昭和54年12月3日付け54検第377号 日本専売公社総裁あて)
日本専売公社が、昭和53年度末に保有している葉たばこは、国内産葉たばこが標準在庫量24箇月分を大幅に上回る34箇月分と過剰在庫になっているなどのため571,780tに上っており、このうち260,879tは同公社の産地倉庫、原料工場倉庫、中継倉庫及びたばこ工場倉庫(以下これらを「社有倉庫」という。)に保管しているが、残余の310,901tは倉庫業者の倉庫(以下「営業倉庫」という。)に保管寄託せざるを得ない状況となっており、その保管料は逐年増こうし、53年度中に支払った保管料は70億8749万余円に上っている。
しかして、盛岡工場ほか12箇所(注1) の葉たばこ倉庫の葉たばこの保管状況について検査したところ、次のとおり、倉庫内におけるたる詰め葉たばこ及び袋詰め葉たばこの積付け方法等が適切でなく、社有倉庫の利用効率が低くなっていると認められる事態が見受けられた。
1 社有倉庫の通路等の設定方法について
盛岡工場ほか12箇所の原料工場倉庫及び中継倉庫におけるたる詰め葉たばこの積付け状況についてみると、積付けの効率は各倉庫の規模、出入口などの構造上の条件や、保管している葉たばこの種類や等級の多寡により影響を受けるにしても、いずれも倉庫面積に占めるたるの積付けに使用している面積の比率(以下「積付け比率」という。)が53%から73%程度(平均62%)となっていて、本院で調査した営業倉庫の積付け比率が62%から83%程度(平均75%)となっているのに比べて相当低くなっており、これは、主として倉庫内の通路、通風路等の面積の比率が高くなっているためであると認められた。
しかして、倉庫内の通路等の設定に当たっては、葉たばこの庫入れ、庫出し、積付けなどの作業上の利便を考慮する要はあるとしても、本件原料工場倉庫及び中継倉庫の場合は、たばこ工場倉庫のように保管期間が1.5箇月程度と短く、庫入れ、庫出しのひん度が高いため日常業務の遂行に当たって作業性を特に配慮する必要がある場合と異なり、荷動きが少なく、保管期間もおおむね6箇月から2年6箇月と長いのであるから、保管、貯蔵の機能を重視し、倉庫の利用効率を優先的に配慮すべきであり、通路等を合理的に整理統合して積付け比率を高め、貯蔵量の増加を図る要があったと認められる。
いま、仮に前記の13倉庫について、既存の通路等を整理統合することとすれば、通路幅は現行どおりとしても、たる詰め葉たばこの貯蔵量を合計約20,000たる分増加させることができたと認められ、ひいて、この増加貯蔵量に相当する営業倉庫の保管寄託量を減少させることができたと認められた。そして、これに伴い節減できることとなる保管料を計算すると、本院で指摘した上記の約20,000たる分のうち同公社が直ちに改善できるとしている約5,000たる分についてだけでも53年度で3800万円程度となり、更に、今後引き続き改善方を検討することとしている約15,000たる分について改善が図られた場合には、53年度の保管料単価で計算しても9600万円程度となる。
2 袋詰め葉たばこの積付け方法について
盛岡工場D1倉庫ほか2箇所(注2) の葉たばこ倉庫における袋詰め葉たばこの保管状況についてみると、各倉庫とも保管棚(だな)を設けて上段、下段に分けて積み付けているが、その積付け包数は上、下段合わせて10包又は11包ずつとなっていて、他の原料工場等で上、下段合わせて12包ずつ積み付けることとしているのに比べて、いずれも単位面積当たりの貯蔵量が少なく倉庫の利用効率が低くなっており、これは上記3倉庫の保管棚が旧式で、構造上、上、下段とも6包積みとするためには高さが不足し、また、倉庫のはり下につり下げられている照明器具が上段の積付けを阻害しているなど、設備上の制約によるものと認められた。
しかも、本件保管棚はいずれも設置後相当の期間(10年以上)を経過し、損傷箇所もあって作業能率も悪くなっているのであるから、これを更新するなどして、他の倉庫と同様、上、下段合わせて12包ずつ積み付けることとすれば、貯蔵量を相当程度増加させることができ、更新等のための経費を考慮しても経済的であると認められた。
いま、仮に前記3倉庫の保管棚を更新するなどして効率的な積付けを行うこととすれば、貯蔵量を合計約15,000包増加させることができたと認められ、ひいて、この増加貯蔵量に相当する営業倉庫の保管寄託量を減少させることができたと認められた。そして、これに伴い節減できることとなる保管料を計算すると年間1000万円程度となる。
このような事態を生じたのは、倉庫内の通路等の整理統合、積付け方法の改善など社有倉庫の利活用についての検討が十分でなかったことによると認められる。
ついては、同公社においては、葉たばこの生産調整に着手しているものの早急な生産量の減少は期待できず、一方製造たばこの売行きも停滞しているため、今後も当分の間過剰在庫は解消されず、したがって多量の葉たばこを引き続き保管せざるを得ない状況となっているのであるから、社有倉庫について通路の整理統合等を行って、積付け面積の拡大利用を図るとともに、積付け方法を改善することによって貯蔵量を増加し、営業倉庫の保管料の支払を減少させ、もって経費の節減を図る要があると認められる。
(注1) 盛岡工場ほか12箇所 盛岡、防府各工場、須賀川、小山、平塚、明石、高松、三重各原料工場、横川、宇都宮物流センター、矢田町、片上、鹿児島各社有倉庫
(注2) 盛岡工場D1倉庫ほか2箇所 盛岡工場D1倉庫、防府工場D4倉庫、平塚原料工場C1倉庫