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  • 昭和53年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第2 日本国有鉄道|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

東北新幹線における通信・信号用ケーブルの敷設工法について


(1) 東北新幹線における通信・信号用ケーブルの敷設工法について

 日本国有鉄道では、東北新幹線延長約496kmの建設に伴う電気設備工事の一環として、この全延長にわたり情報通信のための通信用ケーブル及び列車制御のための信号用ケーブルの敷設工事を施行することとしており、敷設総延長2,984kmのうち昭和53年度までに延長670kmを完了している。

 しかして、仙台電気工事局が、53年度中に施行している新幹線郡山福島間通信信号ケーブル新設その他工事ほか11工事(工事費合計14億8705万円)について検査したところ、次のとおり、通信・信号用のケーブルの敷設工法が適切でないと認められる点が見受けられた。

 すなわち、上記各工事は主として通信用の漏えい同軸ケーブル、細心同軸ケーブル及び信号用の信号ケーブルを高架橋上の側部にあるダクト内及びトンネル側壁等に敷設するものである。そして、これらのケーブルの敷設工法及び敷設工事費(積算額合計4億2068万余円)の積算についてみると、日本国有鉄道本社制定の電気関係工事予定価格積算標準(53年12月一部改正)等により、軌道完成後に敷設する場合にはケーブルドラムをとう載した鉄製トロをモータカーによりけん引しながらケーブルを引き伸ばして敷設する工法(以下「トロリー引き工法」という。)を、また、軌道完成前に敷設する場合にはウインチを使用してケーブルを引き伸ばして敷設する工法(以下「ウインチ引き工法」という。)を採用しており、同積算標準等によって両者の敷設能率を比較すると、ウインチ引き工法はトロリー引き工法よりも著しく下回っていて、敷設工事費はウインチ引き工法の方が割高となるが、前記の12工事は、いずれもその一部又は全部が軌道完成前の工事であることから、ケーブルの敷設総延長1,038kmのうち軌道が完成していない延長816kmの区間についてはウインチ引き工法で施工することとして積算していた。

 しかし、軌道完成前のケーブルの敷設工法としては割高なウインチ引きのほかに、ケーブルドラムをとう載したタイヤ式の台車を小型トラクタ等によりけん引し路盤上を走行しながらケーブルを引き伸ばして敷設することが可能であり、現に、高圧配電線路用トリプレックス形電力ケーブルの敷設工事においてはこの方法によりケーブルを敷設している状況であって、この電力ケーブルと本件工事で敷設するケーブルとを比較すると、ドラムの形状、総重量等に大差がなく、また、敷設する現場条件も異ならないところからみて、本件ケーブルについてもこの方法により敷設することが十分可能であると認められ、54年4月の会計実地検査の際この方法を試行した結果でもこの方法(以下「台車引き工法」という。)による施工はトロリー引き工法による場合の作業能率と同程度であると認められた。

 したがって、上記のウインチ引き工法による施工区間のうち、台車引き工法により施工することが可能と認められる区間については、経済的な台車引き工法を採用すべきであったと認められ、この方法により施工することとして敷設工事費を積算したとすれば積算額を約4800万円程度低減できたと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、日本国有鉄道では、54年6月に台車引き工法

(参考図)

(参考図)

を採用して、本社制定の「電気関係工事予定価格積算標準」にこの方法による敷設歩掛かりを取り入れ、同年7月以降積算する工事から適用することとする処置を講じた。