日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)では、貨物輸送の近代化のための諸施策の一環として、貨物列車を減量することとし、昭和51年度から約12万両の貨車のうち約2万両を廃車する方針を樹立し、その解体作業を行っており、53年度中の解体は貨車10,237両等に上っている。
この廃車解体は大宮工場ほか15工場等(注1) で行ったが、これに伴い車軸と車輪が組み合わされていて12tの荷重に耐え、一般の客車や貨車に使用している12t長輪軸(以下「輪軸」という。)が20,403対回収されている。そしてこの回収した輪軸のうち大部分の15,816対は、再使用しないこととして順次スクラップ価格1対当たり約20,000円により売却(売却価額約3億2000万円)している。
しかして、この輪軸は、国鉄が所有している車両の大半に使用されていることから、工場用品等取扱基準規程(昭和40年資達第2号)により管理の基準を定めていて、この基準によると、車軸の超音波探傷検査及び磁気探傷検査により良好軸と判定され、しかも、車軸ジャーナル部(注2) の直径寸法が工場での修繕限度内にあり、製造所名等の刻印の明らかなもので、使用上の欠陥が認められないなど一定の基準を満たすものについては再使用に供することになっており、また、新製車両の製作用として車両メーカーに支給して使用させることができることとなっているのに、上記の回収した輪軸は、その大部分を再使用等の基準に適合するか否かの調査を全く行うことなく売却していた。そこで、54年5月末において売却する予定で貯蔵していた輪軸7,337対と、同年6月及び7月に廃車解体を実施して回収した輪軸460対について、再使用や新製車両への使用が可能かどうかについて調査したところ、上記基準に適合するものが多数あり、新製車両用にも使用できるもののうち、特に良質なものに限ってみても在庫品で約50%、回収品で約46%もあり、この調査結果からみて、売却した15,816対の中には新製車両用に使用することができると認められるものが、相当量含まれていたものと思料される。
しかるに、国鉄においては、毎年車両の更新を行っているが、上記取扱基準規程を定めた40年以降52年度までに回収した輪軸をこの規程に従って新製車両には交付しないで、すべて新しい輪軸を購入して交付しているもので、ようやく54年2月に至り、53年度に発注した15t積有がい車1,000両及び車掌車200両計1,200両のうちわずかに100両分についてのみ試験的に交付している状況である。
しかしながら、上記のとおり廃車解体に伴って新製車両用に使用することができたと認められる良質の輪軸が多量発生しているのであるから、上記の規程の定めに従い、これらの回収した輪軸の新製車両用への使用を推進し経費の節減を図るべきであったと認められ、仮に53年度中に新製車両用として購入し交付した2,200対(購入価額4億9544万円)について、回収したものを充てたとすれば、約4億5000万円が節減できたと認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、国鉄では、54年5月輪軸の準備要求の変更を行い、54年度に製作する新製貨車用の交付材料として新規に購入して交付することとしていたのを、回収したもののうちから交付することとし、また、各工場等に対しては、54年11月に実施した技術次長会議及び車両課長会議において、新製車両用等に使用できる輪軸については選別のうえ、保管場所の許す限り売却することなく、その利活用を推進するよう指導を行うなど改善の処置を講じた。
(注1) 大宮工場ほか15工場等 大宮、苗穂、多度津、小倉、盛岡、土崎、郡山、長野、名古屋、松任、吹田、鷹取、高砂、後藤、広島、幡生各工場及び釧路、新津、鹿児島各車両管理所
(注2) 車軸ジャーナル部 車軸が車体に取り付けられている軸受と接して車体の重量を支える部分
(参考図)