(昭和54年11月30日付け54検第372号 日本住宅公団総裁あて)
日本住宅公団では、昭和53事業年度中に、各支社及び首都圏宅地開発本部の工事事務所等、南多摩ほか2開発局並びに総合試験場において、現場従務旅費として255,825,040円を支出している。この旅費は、日本住宅公団現場従務旅費規程(昭和39年住宅公団規程第41号。以下「現場従務旅費規程」という。)により、従務地(注) (従務地に準ずるものを含む。以下同じ。)に勤務する職員が公団の用務のため行程200km未満において日帰りの旅行をする場合等に支給するもので、交通費、日当及び宿泊料のほか日当の加算額及び日当の特別加算額からなっている。このうち、日当及び日当の加算額については、現場従務旅費規程では「日当の額は1日につき620円とする。ただし、別に定める基準に従い620円を加えることができる。」と定められていて、この規定を受けて制定された日本住宅公団現場従務旅費規程の運用方針(以下「運用方針」という。)によれば、この加算は、当分の間、現場従務旅費規程の適用を受けるすべての旅行について行うことができるが、職員1人当たりに支給される日当の加算額を含めた日当の1月分の合計額は、14,260円を最高限度額として、出勤日数に応じて定められている。
しかして、現場従務旅費の支給の実態について検査したところ、次のとおり、現場従務旅費規程及び運用方針並びにこれらに基づく旅費の支給が適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、前記の現場従務旅費支出額のうち203,125,870円は、加算額を含めた日当として前記従務地の全職員1,226人(54年3月1日現在)に対して支給したものであるが、各職員別の支給状況をみると、旅行の事実の有無にかかわらず、1箇月のうち23日以上出勤した者に対しては日当の620円に23日を乗じて得た額14,260円を支給し、また、出勤日数が23日に満たない者に対しては、その満たない日数に1日につき日当の加算額620円を乗じて得た額を日当の額に加算することにより、1箇月に12日以上出勤した場合は一律に1職員当たりの日当が14,260円になるように支給していた。
しかし、旅費は旅行の事実に基づいて支給するのが基本原則であって、現場従務旅費規程等において、その支給額を旅行の事実と関係のない出勤日数にかかわらしめたり、一般に例をみない日当の加算を理由もなく行わせたりするなどの規定を設けて、上記のような支給をしているのは適切でないと認められる。
また、現場従務旅費規程の適用を受けない同公団の職員が、公団の用務のため日帰りの旅行を行う場合には、日本住宅公団日額旅費規程(昭和34年住宅公団規程第9号)により日額旅費を支給されるが、その旅行が短距離及び短時間の旅行の場合には日当を減額し又は支給しないこととなっており、これは国及び他団体においても同様の取扱いとなっているのに、現場従務旅費規程にはこのような規定がないため短距離及び短時間の旅行に対しても日当は全額支給されることとなっていて適切でないと認められる。
このような事態を生じたのは、現場従務旅費規程及び運用方針を作成した際に、旅費の本質及びその支給の基本原則からみて不適切な規定を設けたことなどによると認められる。
ついては、上記の事態にかんがみ、従務地に出勤した者に対し、旅行の事実を確認しないまま日当を一律に支給する取扱いを速やかに改め、旅行命令簿に用務先、用務内容を記入させ、旅行の事実を報告書等に明記させるなどして旅行の実態を明らかにさせたうえで旅費を支給することとするとともに、日当については短距離及び短時間の旅行の場合には減額し又は支給しないこととし、日当の加算額についてはこれを廃止するなど、旅費に関する規定を整備し、現場従務旅費支給の適正を期する要があると認められる。
(注) 従務地 開発本部又は支社の管轄区域内において、宅地造成事業、住宅建設事業又は市街地開発事業を施行するため、当該開発本部又は当該支社の所在地以外の地に設置された事務所又は工事現場。なお南多摩、研究・学園都市、港北各開発局及び総合試験場は現場従務旅費規程により従務地に準ずるものとされている。