(昭和54年11月30日付け54検第374号 日本住宅公団総裁あて)
日本住宅公団では、賃貸住宅団地内に駐車場を設置するため株式会社団地サービス(以下「団地サービス」という。)に対して、同団地内の敷地を貸し付けて団地サービスに駐車場を建設させるか、又は同公団が駐車場を建設してこれを団地サービスに貸し付けるかの方法により、団地サービスに有料駐車場の経営を行わせている。このうち敷地を貸し付ける場合は、賃貸住宅団地建設時には設置の計画がなくその後の需要により設置されたもの(以下「住宅用地駐車場」という。)と、賃貸住宅団地建設の段階から設置が予定されていたもの(以下「施設用地駐車場」という。)とがあり、住宅用地駐車場の敷地の地代相当額については、賃貸住宅の家賃原価に算入されているので、駐車場敷地の賃貸料収入は団地に還元する趣旨から団地環境整備費用の財源の一部に充てられているものであり、施設用地駐車場及びこれと同様に団地建設の段階から設置を予定して同公団が施設を建設してこれを団地サービスに貸し付けているもの(以下「賃貸施設駐車場」という。)の敷地の地代相当額については、賃貸住宅の家賃原価に算入されていないので、駐車場敷地の賃貸料をもって回収することになっている。
そして、同公団東京支社ほか4支社(注) が昭和53事業年度末までに貸し付けた駐車場敷地又は施設は、住宅用地駐車場の敷地534,330m2 、施設用地駐車場の敷地372,703m2 、賃貸施設駐車場の施設210,869m2 計1,117,904m2 で、その賃貸料の年額は13億5738万余円となっている。
しかして、これら有料駐車場の管理運営の実態を検査したところ、同公団では賃貸料を決定するに当たり、団地サービスが利用者から徴する利用料金の構成要素である減価償却費及び修繕費の算定が実情に沿わないのにこれを考慮していないため、賃貸料が低額のまますえ置かれていて適切でないと認められる事態が次のとおり見受けられた。
すなわち、上記駐車場の賃貸料については、住宅用地駐車場敷地の賃貸料は駐車場に収容する自動車1台分月額を300円(45年7月までに敷地を貸し付けたもの)又は600円(45年8月以降敷地を貸し付けたもの)として、これに収容台数を乗ずるなどして534,330m2 の賃貸料を年額1億7309万余円と決定し、施設用地駐車場敷地372,703m2 及び賃貸施設駐車場施設210,869m2 の賃貸料は団地建設時の土地価格等を基にして賃貸料基準額を計12億8274万余円と算定したうえ、団地サービスの駐車場利用料金や営業開始している近傍類似の駐車場の利用料金との均衡等を考慮して、賃貸料基準額を9846万余円調整減(調整増5040万余円、調整減1億4886万余円)して賃貸料年額11億8428万余円と決定している。一方、団地サービスが駐車場利用者から徴収する駐車場利用料金は、同公団が定めた利用料金の算定基準を適用して算定した基準額を近傍類似の駐車場の駐車料金や団地の立地条件等を考慮した調整増減を行ったうえ決定できることになっており、団地サービスでは住宅用地駐車場及び施設用地駐車場の利用料金を1台分月額1,800円から9,600円、賃貸施設駐車場の利用料金を1台分3,000円から17,000円と決定している。
しかしながら、
1 減価償却費相当額の計算について
同公団が45年7月までに団地サービスに貸し付けた住宅用地駐車場及び47年3月までに貸し付けた施設用地駐車場についての利用料金の算定をみると、減価償却費相当額は駐車場(アスファルト敷)建設費を償却期間5年で償却することとして年額約1億3700万円としている。しかし、団地サービスでは駐車場建設費の償却期間を10年(「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(昭和40年大蔵省令第15号)の規定する「舗装道路及び舗装路面」のアスファルト敷の耐用年数を適用)として償却することとしており、また、現に上記駐車場は建設後10年を経過しているものでも使用に耐えている状況である。そして、上記の期日以降同公団が団地サービスに貸し付けたものの利用料金算定基準では、償却期間を10年としているのに、上記の期日以前に貸し付けたものについては依然として改めておらず、これら駐車場については、団地サービスでは建設費相当額を回収した後も引き続き償却期間を5年として算定した前記の減価償却費相当額を回収していることとなるものである。
したがって、仮に、償却期間を10年として減価償却費を算定したとすれば、減価 償却費相当額は年額約8100万円となり、前記減価償却費相当額との間に約5500万円の開差を生じることになる。
2 修繕費相当額の計算について
同公団が45年8月以降、団地サービスに貸し付けた住宅用地駐車場、47年4月以降貸し付けた施設用地駐車場及び賃貸施設駐車場の利用料金算定についてみると、修繕費相当額は建設費に を乗じて年額約4億5300万円と算定している。
しかし、この修繕費率は、従前の実績によって算出したものではなく、建設費の償却期間を10年としたことに伴い予想される維持修繕を見込んで算出したものである(従前の修繕費率 )が、上記修繕費率は本院が試算した47事業年度から53事業年度まで7箇年間の平均実績修繕費率との間に著しい開差を生じていることからみて、修繕の実態に適合していないものと認められる。
したがって、仮に、上記の平均実績修繕費率によって修繕費を算定したとすれば、修繕費相当額は年額約1億5500万円となり、前記の修繕費相当額との間に約2億9800万円の開差を生じることになる。
上記1、2による利用料金算定上の減価償却費相当額及び修繕費相当額の計算額と本院が償却期間、修繕の実態に基づいて試算した額との開差額は年額約3億5300万円であり、一方、団地サービスが利用料金の決定に当たって近傍類似の駐車場の駐車料金等を考慮して基準額から調整減した額が約2億0800万円あるので、これを上記の開差額から控除した額約1億4500万円は、同公団において賃貸料の決定に当たり基準額から調整減した分約9800万円の解消に充当するなどして賃貸料算定の適正化を図り、もって団地の環境整備費の確保及び地代相当額等の回収に努めるべきであると認められる。しかるに、同公団ではこれらについて何ら考慮することなく、賃貸料を当初決定のまますえ置いているのは適切とは認められない。
このような事態を生じたのは、賃貸料及び利用料金が数種の異なった算定基準によって算定されていて、このなかには団地サービスにおける駐車場経営の実態と遊離しているものがあるのに、同公団では団地サービスに対する指導監督が適切でなく駐車場経営の実態を十分は握していないことなどからそのまま放置していることによるものと認められる。
ついては、同公団が駐車場用地等を貸し付けている団地サービスでは駐車場利用料金により多額の収益を得ている一方、同公団では団地環境整備費が年々増加してきていること、また、新設の施設用地駐車場及び賃貸施設駐車場において地価の上昇等により利用料金が近傍類似の駐車場の料金に比べ高額となるため賃貸料の調整減を行わざるを得ないものが増加するなど地代相当額等の回収がますます困難になってきていることなどを考慮すると、賃貸料に係る関係通達及び利用料金算定基準を実態に適合するよぅ整備し、賃貸料の適正を図る要があると認められる。
(注) 東京支社ほか4支社 東京、関東、関西、中部、九州各支社