ページトップ
  • 昭和53年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第8 本州四国連絡橋公団|
  • 不当事項|
  • 工事

高架橋の橋脚基礎工事の施行に当り、潜函(かん)工の掘削費の積算を誤ったため、契約額が割高になったもの


(140) 高架橋の橋脚基礎工事の施行に当り、潜函(かん)工の掘削費の積算を誤ったため、契約額が割高になったもの

科目 (款)建設費 (項)一般国道28号及本四淡路線共用部建設費
部局等の名称 第一建設局
工事名 門崎高架橋第1工区下部工及び道路付替工事
工事の概要 大鳴門橋に接続する門崎高架橋の下部工のうち、第2号及び第3号橋脚の基礎を潜函工法により施工するなどの工事
工事費 2,760,000,000円
請負人 門崎高架橋第1工区下部工及び道路付替工事日本国土開発・大豊建設・森長組共同企業体
契約 昭和54年3月 指名競争契約
支払 昭和54年3月(前払金397,000,000円)

 この工事は、工事費の積算に当たり、潜函(かん)工の掘削費の積算を誤ったため、契約額が約3億2100万円割高になったと認められる。

(説明)
 この工事は、本州四国連絡橋のうち、神戸・鳴門ルートに当たる一般国道28号及び本四淡路線共用部の新設工事の一環として、大鳴門橋に接続する門崎高架橋の橋脚2基(第2号及び第3号橋脚)の基礎等を昭和54年3月から56年6月(予定)までに施工するため、54年3月、工事請負契約を締結したものである。

 そして、この工事における第2号橋脚の基礎(縦21m、横30m、深さ8m、掘削量5,121m3 )及び第3号橋脚の基礎(縦12m、横30m、深さ12m、掘削量4,421m3 )の掘削については、いずれも潜函工法(注1) により施工することとし、基礎の位置が海中であるため、水面上2mの高さに築島(捨石、コンクリート等で施工範囲内を締め切り、その内部を土砂で埋め立てて築いた作業用広場)した上に潜函刃口をすえ付けて施工することとして設計している。

 しかして、この工事の予定価格の内訳についてみると、潜函工の掘削費は公団が作成した潜函掘削歩掛かりを適用するなどして、掘削総量9,543m3 分の直接工事費を643,464,980円と算定していたが、次のように誤って1方(ひとかた)(注2) 当たりの掘削量を過小に計算し、1m3 当たり掘削単価を9,067円から119,376円と算出したため、掘削費の積算が著しく過大となっていると認められる。

 すなわち、この種の潜函工事の掘削費の算定については、1方当たりの所要経費を掘削箇所の土質及び掘削深さごとの1方当たりの掘削量で除して1m3 当たりの掘削単価を算出し、これにそれぞれの掘削量を乗じた額を合算することとなっているが、本件工事においては、所要経費算定の基礎となる作業人員等について、潜函作業室の面積が第2号橋脚基礎で630m2 、第3号橋脚基礎で360m2 と大きいことから、掘削作業の編成を通常の場合(潜函内は潜函工等14人、ブルドーザ1台で構成される1編成)の2倍相当の2編成に増加して、1方当たりの掘削量を倍増することによって工期の短縮を図ることとし、これに応じて1方当たりの所要経費として2編成相当分を計上しているものである。

 しかるに、1方当たりの掘削量についてはこれに応じて2倍とすることなく、誤って、通常の1編成で施工する場合の掘削量をそのまま適用して、1方当たりの掘削量としたため、掘削単価が約2倍に計算される結果となっている。

 このほか、掘削量の算出の基礎となる掘削歩掛かりについては、掘削の作業能率が砂及び硬岩等の土質によって異なるほか、潜函内作業気圧が水深1mに対して0.1kg/cm2 の割合で高くなり、作業気圧が高くなるに従って作業能率が低下するので、水面下の掘削深さに応じて設定されており、この歩掛かりにより掘削量をそれぞれ算定することとなっているが、本件工事の場合前記のとおり潜函刃口を水面上2mの高さにすえ付けることとしているのに、誤って、この刃口のすえ付け位置から水深を計算して歩掛かりを適用したため、水深3mから5mまでの掘削2,017m3 については圧気が0.5kg/cm2 以内の場合の歩掛かりを適用すべきであるのに0.5kg/cm2 から1.0kg/cm2 以内の場合の歩掛かりを適用し、また、水深8mから10mまでの掘削736m3 については、圧気が0.5kg/cm2 から1.0kg/cm2 以内の場合の歩掛かりを適用すべきであるのに1.0kg/cm2 から1.4kg/cm2 以内の場合の歩掛かりを適用して、それぞれ1方当たりの掘削量を算定したため、この分についての掘削単価が過大に計算されている。

 以上のように、本件掘削単価は1方当たりの掘削量を誤って計算したことに基づくものであって、このため、本件掘削費の積算は著しく過大となっていると認められる。
 いま、仮に適正な1方当たりの掘削量により掘削単価を修正計算すると、1m3 当たりは4,534円から61,215円、掘削総量9,543m3 分の直接工事費は323,848,622円となり、工事費総額は2,396,162,162円となるが、当局の積算において過小となっていた陸上部土工の捨土費等42,591,313円を考慮しても総額2,438,753,475円で足り、本件契約額はこれに比べて約3億2100万円割高であったと認められる。

 (注1)  潜函工法 鉄筋コンクリート製で底部に作業室がある箱状のもの(潜函)をあらかじめ地上に構築し、その下部の土砂を掘削して地中の所定の地盤まで沈下(沈下に伴ってコンクリートを打ち継ぎする。)させて基礎とする工法のうち、湧(ゆう)水の浸入を防ぐため作業室を密閉し、圧縮空気を用いて常時与圧(これを圧気という。)して施工する工法のこと

 (注2)  1方(ひとかた) 潜函工事のように掘削作業を1日当たり2交替又は3交替で作業を連続して施工するときの1勤務単位のこと

(参考図) 

(参考図)