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  • 昭和53年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第9 日本鉄道建設公団|
  • 不当事項|
  • 予算経理

架空の名目によって旅費を支出し、これを職員に支給し又は別途に経理していたもの


(142) 架空の名目によって旅費を支出し、これを職員に支給し又は別途に経理していたもの

科目 53事業年度 (款)建設費 (項)新線建設費 (項)海峡線建設費 
(項)新幹線建設費 (項)新幹線調査費
(款)管理費 (項)管理諸費
54事業年度 (款)建設費 (項)新線建設費 (項)海峡線建設費 
(項)新幹線建設費 (項)整備新幹線建設調査費 (項)新線調査費
(款)管理費 (項)管理諸費
部局等の名称 日本鉄道建設公団本社、盛岡支社、名古屋支社、青函建設局、東京新幹線建設局、新潟新幹線建設局
旅費の概要 鉄道建設に必要な業務又は管理的業務のための出張
上記部局で職員に支給した旅費の総額 昭和53事業年度 157,442件 1,015,863,305円
昭和54事業年度 55,143件 320,487,872円
昭和54事業年度は、旅行日程が、本社及び青函建設局については8月分まで、盛岡支社及び東京、新潟両新幹線建設局については7月分まで、名古屋支社については6月分までの期間に入っているものの件数及び金額

212,585件 1,336,351,177円

 上記の各部局においては、架空の又は日数等を付増しした旅行命令に基づいて旅費を支出し、これを職員に支給したり、別途に経理して会食等の経費に使用したりしていた。これら不正に経理した旅費の総額は、昭和53事業年度において216,965,460円、54事業年度において56,750,900円、計273,716,360円となっており、経理が著しくびん乱している。

(説明)
 日本鉄道建設公団(以下「公団」という。)では、日本国有鉄道の新線42線の建設等を実施しているが、これらの業務に必要な職員の出張については、公団が定めている職員旅費規程(昭和39年12月10日 総裁達第26号)従って旅費を支給することとしており、旅費は用務の性質に応じて、(ア)用地関係事務、しゅん功検査、開業監査等の業務に必要な旅費については現場調査旅費、(イ)建設所の職員が支社及び局の管内において作業の打合わせ、工事監督又は検査等の業務を行うのに必要な旅費については工事監督旅費、(ウ)設計調査及び測量を行うために必要な旅費については測量及び調査試験費、(エ)管理的業務及び本社等主催の各種講習会、行事のために必要な旅費については普通旅費等に区分し、それぞれ旅行する職員に対して支給することになっている。
 しかして、54年6月から9月までの間に本院が会計実地検査を行った本社、盛岡、名古屋両支社、青函建設局及び東京、新潟両新幹線建設局において、53、54両事業年度に上記の現場調査旅費、工事監督旅費、測量及び調査試験費から支給する旅費、普通旅費をもって職員に支払った旅費の額は(表1) のとおり212,585件1,336,351,177円となっている。
 この支払額について出張の事実の有無を調査したところ、次のような事態となっていることが明らかになった。
 すなわち、旅行命令書、旅費請求及び領収書等の関係書類を作為するとともに、これに合わせて出勤簿等の関係書類を整理するなどの方法により、出張の事実がないのに出張したこととしていたり、出張の事実はあるが、日数及び宿泊数を付増ししたり、出張先を実際の出張先より遠方にしたりするなどして、不正に旅費を支出していた。
 その内訳は(表2) のとおり、53事業年度においで22,669件216,965,460円、54事業年

(表1)

(表1)

度において5,465件56,750,900円、計28,134件273,716,360円の多額に上っている。そして、この不正に経理した旅費の使途についてみると187,695,072円は職員個人に支給し、残余の86,021,288円は会食等の経費に充当したとしていた。

 上記の不正旅費支出額のうち、職員に支給したもの187,695,072円については、一部を支給する根拠のない手当に充当したほか、ほとんどは超過勤務手当の代替と称して職員に支給しているが、会計実地検査の際調査したところ、その超過勤務の事跡を証する記録、資料類はなく、超過勤務を行った事実を確認することはできなかった。
 また、会食等の経費に充当したとしているもの86,021,288円は52事業年度からの繰越額1,463,415円と合わせて別途に経理されており、(表3) のとおり、部内での又は部外との会食の経費、贈答用物品代等の交際費的な経費及び印刷物購入費等の雑費等として

(表2)

(表2)

84,354,547円を使用したとしているが、これらの使途について裏帳簿、領収証書によりその内容を確認できたのは、27,691,116円だけであって、その内容は会食の経費に使用したもの16,513,541円、贈答用物品代等の経費に使用したもの6,900,330円及び物件費等雑費に使用したもの4,277,245円となっている。そして、残余の56,663,431円のうち、公団において会食の経費に使用したしているもの40,897,610円、贈答用物品代等の経費に使用したとしているもの、10,103,391円及び物件費等雑費に使用したとしているもの
5,392,057円、計56,393,058円については、その事実を裏付けるに足る資料がなく、また、270,373円については使途が全く不明である。なお、会計実地検査当時3,130,156円を保有していた。
 本件経理は、いずれも日本鉄道建設公団会計規程(昭和39年11月10日 総裁達第16号)及び職員旅費規程を無視して不正に資金をねん出し使用したものであって、その経理が著しくびん乱していると認められる。

(表3)

(表3)

(注) 1 「別途経理金」欄の( )書きは、52事業年度からの繰越額を内書きしたものである。
2 「使途の内訳」欄の( )書きは、裏帳簿、領収証書により使途の内容を確認できたものを内書きしたものである。

なお、公団からの報告によれば、54年9月、公団内に特別調査委員会を設置し、前記6部局以外の札幌、東京、大阪、下関各支社及び富山新幹線建設準備事務所について調査したところ、本件同様、架空の名目によって旅費を支出し、これを職員に支給し又は別途に経理していたものがあり、その総額は53事業年度において92,708,010円、54事業年度において28,958,130円、計121,666,140円となっており、このうち71,492,320円は職員個人に支給し、残余の50,173,820円は、52事業年度からの繰越額584,245円と合わせて別途に経理し、会食の経費に35,142,190円、贈答用物品代等の交際費的な経費に7,538,658円及び物件費等雑費に7,234,751円を使用し、調査当時842,466円を保有していたとしている。