科目 | (款)建設費 (項)新幹線建設費 | |
部局等の名称 | 東京新幹線建設局 | |
工事名 | (1) | 上幹、下佐野(北)高架橋その他工事その1 |
(2) | 上幹、下佐野(南)高架橋その他工事 | |
工事の概要 | 上越新幹線建設の一環として築造する高架橋(1)381m、(2)796mの基礎工として現場打ち鉄筋コンクリートぐいを(1)92本、(2)166本施工するなどの工事 | |
工事費 | (1) | 899,558,980円(当初契約額603,000,000円) |
(2) | 1,930,000,000円 | |
請負人 | (1) | 株式会社竹中土木 |
(2) | 東洋建設株式会社 | |
契約 | (1) | 昭和53年2月 指名競争契約 |
昭和54年2月 (第4回契約変更) | ||
(2) | 昭和54年3月 指名競争契約 | |
支払 | (1) | 昭和53年3月、54年3月(2回) |
(53年度までの支払額381,240,000円) | ||
(2) | 昭和54年6月(前払金350,000,000円) |
これらの工事は、上越新幹線の建設に伴い高架橋を築造するに当たってその基礎ぐいの工事費の積算が適切でなかったため、契約額が(1)の工事において約6190万円、(2)の工事において約7760万円それぞれ割高になっていると認められる。
これを(1)、(2)の別に説明すると以下のとおりである。
(説明)
1 (1)の工事は、大宮起点73.8kmから74.2kmまでの間の延長381mで(高崎市内)の高架橋新設に伴いその基礎工として現場打ち鉄筋コンクリートぐい(以下単に「くい」という。)92本をリバースサーキュレーションドリル工法(注) により施工するものである。
しかして、当初の設計においては最大掘削径300cmのリバース掘削機により径1.27mのくい92本分4,950m(1本当たりの長さ平均53.8m)を施工することとし、このくいの工事費の積算については、日本国有鉄道制定の「リバース工積算要領」(以下「積算要領」という。)により1m当たり46,900円と算定し、計232,155,000円と積算していた。
その後、昭和53年7月、上記掘削機でくいの掘削に着手し1本目を施工したところ、地表面下約10mからの地質は径20cmから40cm程度の玉石等が多量に混入した シルト混りの砂れき等からなっていて掘削機の土砂排出管に目づまりが生じるなど作業が著しく難航することが判明したため、同年8月、土砂排出管が太く、かつ、吸引力等の性能がよい最大掘削径600cmの大型リバース掘削機を使用することとし、これにより設計変更をすることとした。この設計変更に係る工事費の積算に際して、上記積算要領においてこの径600cmのリバース掘削機の掘削歩掛かりが定められていないことから、この掘削機を使用して得られる掘削歩掛かりの施工実績を調査したうえこれを解析、分類した結果によって算定することとしている。
そして、この調査は、本件工事の当初において施工した7本のくいの施工実績を対象にして行うこととし、その結果得られた数値によりくい1本当たりの施工に要する作業時間を54.2時間と計算し、これらの作業に要する労務費、機械器具損料、材料費等を合わせくいの工事費を1m当たり136,000円、91本分3,870mで526,320,000円と積算し、その他の工事費を合わせ、54年2月、契約額を899,558,980円とする契約変更を行っている。
しかしながら、施工実績の少ない建設機械の歩掛かりを調査する場合には、施工の初期段階では作業の不慣れ、機械に対する熟練度が不十分であることなどにより作業能率を十分発揮できない傾向があるので、初期段階の少数の施工実績によることなくできるだけ多くの施工実績を反映させるべきであると認められる。しかして、当局においては、上記7本に引き続き54年1月までに施工した20本についても施工実績を調査しており、この作業記録によれば、くい1本当たり施工に要する作業時間は前記7本の実績に比べて約80%程度となっていて、上記の54.2時間を大幅に下回っていたものであるから、初期の段階に比べ作業の能率が相当程度安定してきているこの20本の実績値をも併せて検討し、これにより契約変更すべきであったと認められる。
いま、仮に初期段階の7本及びその後の20本計27本の施工実績に基づいて計算すると、当初の54.2時間としていたくい1本当たりの施工に要する作業時間は46.1時間となり、このほか積算過大となっていたドリルパイプの所要本数等及び積算過小となっていた循環パイプの使用月数等を考慮して修正計算すると、くいの工事費は1m当たり120,000円、3,870mで464,400,000円、工事費総額は837,638,980円となり、本件契約額はこれに比べて約6190万円割高であったと認められる。
2 (2)の工事は、大宮起点72.9kmから73.7kmまでの間の延長796m(高崎市内)の高架橋新設に伴いその基礎工として径1.27mのくい130本分6,330m(1本当たりの長さ平均48.7m)径1.5mのくい36本分1,690m(1本当たりの長さ平均46.9m)を(1)と同様にリバースサーキュレーションドリル工法により施工するものである。
しかして、このくいの掘削については、地表面から平均51.3mの支持地盤までを最大掘削径600cmのリバース掘削機を使用して施工することとし、くいの工事費の積算については労務費、機械器具損料及び材料費等を合わせ径1.27mのくいは1m当たり143,000円、6,330mで905,190,000円、径1.5mのくいは、同様1m当たり180,000円、1,690mで304,200,000円計1,209,390,000円と算定し、その他の工事費を合わせて工事費総額を1,950,662,000円としている。
しかしながら、この工事の設計によれば、リバース掘削機による掘削に当たっては、掘削作業中に地表面の開口部及び掘削深部の孔壁の崩壊を防ぐため、あらかじめ径1.27mのくいの場合は径1.45m長さ8m、径1.5mのくいの場合は径1.7m長さ8mの鋼製のスタンドパイプを地表面から7.5mまで打ち込み、その内部をクレーンに装着したハンマーグラブで6.5mの深さまで掘削し、6.5mからくいの支持地盤までをリバース掘削機により掘削することとしている。したがって、積算に当たってリバース掘削機による掘削に係る経費については、その対象とする長さを深さ6.5mからのくい支持地盤までの間の長さによって算定すべきであるのに、誤って、地表面から深さ6.5mまでの間も含めているため、径1.27mのくい130本分845m及び径1.5mのくい36本分234mの掘削に係る経費相当分が過大に積算されていると認められる。
いま、上記により掘削に係る経費を算定することとし、当局の積算において積算過大となっていたクレーンの運転時間等及び積算漏れとなっていたリバース掘削機の使用電力量料金等を考慮して修正計算すると、くいの工事費は径1.27mのもの1m当たり131,000円、6,330mで829,230,000円、径1.5mのもの1m当たり166,000円、1,690mで280,540,000円計1,109,770,000円、工事費総額は1,852,343,400円となり、本件契約額は約7760万円割高であったと認められる。
(参考図)
〔1〕 | スタンドパイプを打ち込む。 | 〔6〕 | 鉄筋かごを建て込む。 |
〔2〕 | ハンマーグラブによりスタンドパイプ内を掘削する。 | 〔7〕 | トレミー管を建て込み、コンクリートを打設する。 |
〔3〕 | リバース掘削機をすえ付ける。 | 〔8〕 | スタンドパイプを引き抜く。 |
〔4〕 | リバース掘削機により掘削する。 | 〔9〕 | くいの出来上がり。 |
〔5〕 | 検尺を行う。 |