日本蚕糸事業団(以下「事業団」という。)は、繭糸価格安定法(昭和26年法律第310号)に基づき、生糸の価格について安定価格帯を超える異常な変動を防止するとともに安定価格帯の相当な水準における価格の安定を図るため、国産又は外国産生糸の買入れ、保管、売渡しなどをすることとしており、昭和51年4月から54年9月までの間に国産生糸延べ563,914俵(1俵60kg。以下同じ。)及び輸入生糸(一般売渡し用)延べ5,325,912俵計延べ5,889,826俵を帝蚕倉庫株式会社ほか3会社に寄託し、その保管料として1,945,969,470円を支払っているが、この保管料について検査したところ、次のとおり、適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、寄託生糸の保管料については、事業団が定めた「生糸価格中間安定事業取扱要領」等によると、買入れの日までは売主が、また、売渡しの日以後は買主が負担することとなっており、買入れ、売渡しの際の契約書においてもこれによることが約定されている。しかるに、事業団と上記倉庫会社との間の実際の保管料の取扱いをみると、寄託生糸の保管期間が長期にわたっており、かつ、取扱数量が多量に上っているところから、1箇月を3期とし、保管期数に1期当たりの保管料(1俵当たり国産生糸355円(52年5月までは345円)、輸入生糸328円)を乗じて算出する方法(以下「期制」という。)によっていて、この保管期数計算上は買入れ日及び売渡し日の属する期もそれぞれ1期として計算する取扱いになっていた。このため、買入れ日又は売渡し日の属する期については、買入れ日までの分又は売渡し日以後の分についても事業団が保管料を負担する結果となっていて、適切でないと認められた。
しかして、生糸の寄託については、期制のみを採用している他の貨物の場合と異なり、1日当たりの保管料(1俵当たり36円)に寄託日数を乗じて支払保管料を計算する特別の方法(以下「日歩制」という。)が採用されていて、製糸業者等が生糸を寄託する場合はすべてこれによっており、また、現に、事業団においても、特定の実需者に供給するため買い入れた輸入生糸については、期制と日歩制とを併用し、買入れ日又は売渡し日の属する期については日歩制によっている状況であるから、本件生糸の寄託に係る保管料についても、期制と日歩制を併用して計算すべきであると認められた。
いま、仮に本件生糸の保管料について日歩制を併用した寄託契約を締結したとすれば、前記の保管料支払額を約2800万円程度低減できたと認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、事業団では、54年11月に、国産生糸及び輸入生糸(一般売渡し用)の保管料についても、期制に加え、買入れ日又は売渡し日の属する期については日歩制を採用するよう寄託方式を改め、同月以降発生する保管料から適用する処置を講じた。