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  • 昭和53年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第20 日本中央競馬会|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

建築工事等における配管、配線工事費の積算について


 建築工事等における配管、配線工事費の積算について

 日本中央競馬会では、健全で公正な競馬の実施を確保するため、競馬場等の施設の改善、新設等の工事を毎年多数施行しているが、昭和52年度以降54年5月までに契約している阪神競馬場スタンド増築その他工事ほか11工事(工事費合計254億2057万余円)について検査したところ、次のとおり、配管工事及び配線工事の労務費等の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

 すなわち、上記各工事は、競馬場のスタンドを増築するなどの工事であるが、このうち、スプリンクラー配水管等の配管費及び電線等の配線費の労務費(積算額計11億2674万余円)及び総合試運転調整費(積算額計5633万余円)の積算についてみると、同競馬会が52年1月に制定した「設備積算基準」により、労務費については、その計算基礎となる材料数量を設計図面から算出した設計数量にロス率10%分を加算した材料の所要数量とし、これに労務歩掛かりと労務単価を乗じた額としており、また、総合試運転調整費は、この労務費に5%を乗じた額としている。

 しかし、一般に利用されている積算関係の資料に示されているこの種労務歩掛かりは、作業に従事した労務者数を設計数量で除して得た数値を基に算定しているのが通常で、現に、上記の積算基準を作成した際に参考としたとしている積算の資料も、同様の方法により労務歩掛かりを算定しているのであるから、前記の積算基準において労務費の積算に当たり設計数量に10%のロス分を加えることとしているのは誤りである。また、総合試運転調整費は、施工した機器、配管系統について行う総合的機能試験のための費用で、給配水通気管又は電線管の配管工事及び電線等配線工事については、特にこのような試験を行う必要がなく、空気調和設備、スプリンクラー設備及び消火栓(せん)設備の配管工事についても、配管、弁類等の調整及び流量調整を行うだけであるから、このような作業の実態に見合った労務歩掛かりにより積算すべきであるのに、このようなものについてまで前記の積算基準において、労務費の5%を計上することとしているのは適切でないと認められた。

 したがって、本件各工事について、仮に、労務費については設計数量のみを基礎として、また、総合試運転調整費については妥当と認められる歩掛かりを使用して工事費を積算したとすれば、積算額をそれぞれ約9880万円、約5380万円、計約1億5200万円程度低減できたと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、日本中央競馬会では、54年6月に設備積算基準を改め、同月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。