ページトップ
  • 昭和56年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第4 農林水産省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

輸入麦の売渡しについて処置を要求したもの


(1) 輸入麦の売渡しについて処置を要求したもの

(昭和57年11月15日付け57検第395号 食糧庁長官あて)

 食糧庁では、昭和56年度中に食糧用及び飼料用の輸入麦7,005千余tを製粉業者等に総額4606億0078万余円で売り渡しているが、その売渡予定価格についてみると、食糧用麦は食糧管理法(昭和17年法律第40号)に基づいて農林水産大臣が定めた銘柄ごとの価格を基に、また、飼料用麦は飼料需給安定法(昭和27年法律第356号)に基づいて農林水産省畜産局長が定めた銘柄ごとの価格を基に、それぞれ品質等を参しゃくして算定することとしている。そして、これらのうち配合飼料用麦を除く輸入麦をばらの荷姿(以下「ばら」という。)で売り渡す場合には、売渡予定価格の算定に際し一律に1t当たり600円の値引き(以下「ばら値引き」という。)を行っていて、同年度中にばらで売り渡した数量6,272千余tに係るばら値引額は総額37億6377万余円に上っている状況である。

 このばら値引き措置は34年度から実施(600円の値引きは44年度以降)しているものであるが、当時は港頭におけるばら受施設の不足からその約80%を港頭で袋詰めにして取り扱わざるを得なかったため、著しく多額の取扱経費を要する状況であった。このため、同庁では、ばらのまま売渡しが行われるようになれば、政府経費のうち輸入港における袋詰めなどの経費が節減されることに着目して、その節減相当額の一部を売渡予定価格から差し引く方法によって買受者側のばら受施設が整備されるよう誘導することとしたものである。

 そして、ばら値引額1t当たり600円のうち、300円については、買受者側が自主的に行うばら受施設の整備に使用するよう、また、残る300円については、買受者側が関係業界の中央団体(財団法人製粉振興会、全国精麦工業協同組合連合会、社団法人配合飼料供給安定機構)に拠出し、各中央団体はこの拠出金を積み立て、傘下の買受者及び買受者が出資したサイロ倉庫業者がばら受施設を建設する際、その建設費に対し助成を行うための財源とするよう指導している。

 しかして、本件ばら値引き措置の現状について調査したところ、次のような状況となっていた。

(1) 買受者側においては、ばら流通一貫体制を採ることによってばら受施設の設備費を要するが、出庫料、工場搬入時の荷役経費及び包装代等が軽減されるばかりでなく、輸送形態の合理化による工場への搬送能力の向上等省力化の効果も大である。

(2) ばら受施設の整備状況についてみると、港頭及び内陸とも整備が進み、53年度以降の収容力は必要収容力(国内需要量のおおむね2.3箇月相当量の収容力であって、56年度の場合134万t)を満たしていて、総体的には収容力不足は解消されており、ばら売却率(ばら売渡数量を総売渡数量で除したもの)は56年度においては94%に達している状況である。

(3) 中央団体における最近5箇年間のばら値引きによる積立金についてみると、収入総額102億余円の39%に当たる40億余円はばら受施設整備のために助成されているものの、残額は公害防止施設の助成や需要拡大のための広報宣伝事業等業界内部の施策と認められるものに使用されているほか、毎事業年度多額の繰越金を生じていて、56事業年度末の繰越金保有高は14億余円に上っている状況であった。

 したがって、ばら扱いにより政府経費が節減されることに着目して実施してきたばら値引きは、買受者及びサイロ倉庫業者のばら受施設が未整備の状況であったばら流通の初期段階において、物流の合理化を図るための誘導策として行ったことはやむを得なかったとしても、今日のようにばら受施設が整備された状況においては、もはや継続実施する意義が失われていると認められ、仮に本件ばら値引きを廃止したとすれば、56年度において37億6377万余円の収入が増加したことになる。

 このような事態を生じたのは、本措置発足後既に20年を経過し、上記のようにばら値引きを行うこととした所期の目的が達せられたと認められるにもかかわらず、これに対する配慮に欠けていたことによると認められる。

 ついては、食糧庁が取り扱う輸入麦は今後とも多量に上り、そのばら値引額も多額となるものと認められることにかんがみ、早急にばら値引きを取りやめ、もって食糧管理特別会計の財政負担の軽減を図る要があると認められる。